ここで,
u (
X ( t), t)= (
U, V) :時刻 tにおける粒子の速度成分, u' ( X ( t ,)t )= (
U',ν, ) :拡散に対応する流体粒子のランダム変動速度成分である.なお,流体粒子の位置 X ( t )は,本来は初期時刻 t=
t。における粒子の位置 Xo=
X ( xo' to )にも依存するが,ここ では表記を簡略化するために省略している.また,粒子の流速U( X ( t ,)t )とランダム 変動速度成分 u'( X ( t ,)t )は,本来 Lagrange流速であるため U ( xo' t ) ,並びに u'( xo' t )と表記されるべきであるが, Euler 流速と Lagrange流速が一致することと表記の簡略 化のために上式のように表記する.3.2.2ランダム変動速度の評価
従来より,様々な分野において stochasticな現象のシミュレーション法として, Monte Carloシミュレーションが頻繁に行われてきた.水理学・流体力学分野における代表的 なstochastic現 象 で あ る 乱 流 拡 散 現 象 に お い て は , 乱 流 拡 散 fluxを勾配拡散近似した Euler的な移流拡散方程式を解く方法が最も一般的であるが, Monte Carlo法を併用した 解析方法も幾っか提案されている.
Monte Carlo法を併用した解析方法では,いずれも Lagrange的な粒子追跡法において ランダム変動速度成分を乱流の統計的性質を加味した疑似乱数により表現し,統計的平 均を求めることにより解析されている.代表的な方法としては, Hino (1965),林・岩崎 (1975)による乱子 (turbulon)理論を応用した方法と, Hall (1975),和田・角湯(1976), Aw句i(1982)による Markov連鎖モデルを用いた方法がある.
乱子理論を用いた方法では,乱流場を個別の速度スケール(乱れ強度)を持つ幾つか の渦(乱子)の集合体と見なし,各ランクの渦に起因する速度成分を合成することによ り各瞬間のランダム速度成分を決定する.この際 各 ラ ン ク の 乱 子 の 持 つ 流 速 は ラ ン ダ ムかつ独立に決められ,乱れエネルギーのカスケード過程より各乱子の乱れエネルギ一 散逸率は一定と仮定されることから 各ランクの乱子の寿命時間は設定される.
本研究では乱流拡散だけではなく水深平均操作により生じる移流分散も考慮した計算 を行う.そのため,乱子モデルでは乱流拡散とは現象が異なる移流分散をモデル化する のは困難と考えられる.そこで,拡散に対応するランダム変動速度 u'( X ( t ,)t )は,次 式で示される 1次の Markov連鎖モデルで記述できるものと仮定した.
u~ ( t + ~ t ) = P i u~ ( t ) +
i'i (t )
(3.2)ここで ,Pi=
仰(‑
L¥t / T L i) :相関係数 ,TLi .ランダム変動速度の積分時間スケール,y
;
(
t) : N (0,げ)に従う正規乱数,~
= ( 1 ‑P ? ) ~i'
(Jui :ランダム変動速度 U'iの標準偏差(乱れ強度)である.
但し, Markov連鎖モデルでは (3.2)式より明らかな様に,拡散係数テンソルの非対角 成分についてはそのまま評価することは出来ない.よって 各時刻の各粒子位置におい て拡散能が等方的でない一般的な場合には 拡 散 係 数 テ ン ソ ル を 主 軸 変 換 し て 主 軸 方 向 に関してのランダム変動成分を算出した後 それらを計算座標軸方向に座標変換する必
要がある.本研究では各粒子の流れ方向 (i = L )とその直角方向 (i = T ,以下横方向) が 拡 散 係 数 テ ン ソ ル の 主 軸 と 一 致 し て い る も の と 仮 定 し た . ま た , 正 規 乱 数 yi(t )は Box‑Muller法 [ 例 え ば , 中 山 ・ 西 尾 (1990)参 照 ] に よ り 発 生 さ せ た . な お , 本 章 中 で は 添字 iには総和規約は適用されない.
拡散係数は次式
Di =ui2TL i (3.3)
で表されるので,流れ方向と横方向の拡散係数DL,DTが 与 え ら れ た 時 , 乱 れ 強 度 か 積 分 時 間 ス ケ ー ル の ど ち ら か が 与 え ら れ れ ば , 式 (3.2)か ら ラ ン ダ ム 変 動 速 度 が 形 式 的 に 算 出できることになる.
a).拡散係数について
流 れ 方 向 と 横 方 向 の 拡 散 係 数 は 次 式 で 表 さ れ る も の と 仮 定 し た .
DL
=kL U
本H DT
=kT U*H
(3.4a) (3.4b)
こ こ で , 仏 : 底 面 摩 擦 速 度,H=h+(:全水深 ,ku kT :流 れ 方 向 と 横 方 向 の 無 次 元 拡散係数である.
本 研 究 で は , 平 面
2
次 元 モ デ ル を 用 い て い る た め 拡 散 係 数 は 流 れ 方 向 に は 移 流 分 散 が , 横 方 向 は 乱 流 拡 散 が 支 配 的 に な る も の と 考 え ら れ る . 内 湾 等 の 沿 岸 域 に お け る 拡 散 係数を評価するために, Holly and Usseglio‑Polatera (1984)はElder(1959)の結果より kL= 5.93, kT = 0.23を, Lin and Falconer (1997)は Fischeret al. (1979)に よ り ま と め ら れ た 実 験と 観 測 の デ ー タ (kL = 8.6 ‑‑7500, kT = 0.42 ‑‑1.61が 得 ら れ て い る ) を 参 照 し,kL = 13, k
r =
1.2を適用している.今回は, 3.3.2 c)に お い て 述 べ る よ う に 非 等 方 的 な 拡 散 能 を 持つ場合の流れ方向の無次元拡散係数の基準値として, Elderによる kL= 5.93を採用す ることにした.b).乱 流 拡 散 係 数 の 積 分 時 間 ス ケ ー ル に つ い て
和田・角湯(1976)が 実 施 し た 瀬 戸 内 海 に お け る 潮 流 場 の 乱 流 計 測 結 果 に よ る と , 積 分 時間スケールは TLT=l 2時 間 程 度 で あ っ た. ま た , 乱 れ 速 度 成 分 の 自 己 相 関 曲 線 は 遅 れ時間 τに対して指数関数的に減少する形状をとっており, Markov連 鎖 モ デ ル (3.2)式 より得られる自己相関曲線と同形式になることも確認されている.
一方,辻(1992)に よ る 鹿 島 灘 に お け る 測 定 に よ る と , 乱 れ の 自 己 相 関 曲 線 は 同 様 に 指 数関数形をとるが,積分時間スケールは T,y
=
約 2分 程 度 と 和 田 ・ 角 湯 の 値 と 較 べ て か なり異なり小さくなっている. こ れ は , 和 田 ・ 角湯 の サ ン プ リ ン グ が 1‑‑20分 間 隔 で 行 われていたのに対し,辻は 20秒 間 隔 で 行 っ て い る た め , 平 均 化 す る 時 間 間 隔 の 違 い に よりランダム速度成分のもつ物理的意味が異なってしまったためと考えられる.本研究で、行う様な内湾における粒子追跡計算では,時間格子間隔 L1tを 数 分 程 度 に 設
定するのが普通であることから,和田・角湯による測定結果を採用するのが適当と考え られる.そこで,本研究では乱流拡散に対する積分時間スケールとして TLT
=
1時間を 採用することにする.なお,乱流拡散を考慮した同様な粒子追跡計算では,和田・角湯 (1976)が TLT=
1時間(瀬戸内海 .L1t=
2分), Nakatsuji and Fujiwara (1997)が TLT=
30 分(大阪湾 .L1t=
5分) , Aw勾i(1982)が TLT=
1太 陰 時 間 = 約 1時間 2分 ( モ デ ル 湾 ‑ .1t < 3分)を採用している.
c).移流分散係数の積分時間スケールについて
移流分散の積分時間スケールに関しては, Fischer (1967)により検討がなされている.
それによると,流速の鉛直分布に対数則を仮定すると,その水深平均流速からの偏差速 度
JL=u ‑ ( u L = l ̲ ( l n
L+ 1 I
u* u牢 1 (¥
h
Jの