文化的景観管理に共通する課題
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サイトの管理において検討される政策は、文化的景観管理 におけるそれぞれの段階で議論されてきた。しかし、前章で 示された事例研究からは、文化的景観の管理には特に重要な いくつかの課題が存在しており、そうした課題解決のために は価値を維持するための施策が必要で、それは価値の重要性 を理解することで引き出されることがわかる。文化的景観の カテゴリーやそれぞれの場における社会経済的環境によって 仔細な点やその合致する程度は異なるが、こうした課題は多 くの世界遺産の景観管理において生じると考えられる。そこ で、本章では以下の問題を検討する。
1. 文化的景観の世界遺産としての価値や社会的な価値に 関する意識不足や一般教育の不足。
2. 世界遺産の文化的景観に対する取組について、特定の サイトに限ったトレーニングの必要性。これは、場が 有するすべての価値の適切な管理を確実に進めるため に重要である。
3. 顕著な普遍的価値を維持しながら、景観における変化 の許容可能な程度およびそれを確実に実行するために 用いることができる技術を規定した農林業施策の実 施。
4. 顕著な普遍的価値に深刻な影響を与えることなく、景 観の評価や来訪者のアクセスの継続を実行するための 観光管理。
5. 文化的景観の価値を維持するための取組について、経 済的な実現を担保するための「受益者負担」の概念や ほかの外部収入を含む資金源の検討。
6. 設計された景観における不可欠な要素を管理し、新た な要素(建物、構造物、土塁、農園等)や利用法を取 り入れていくことを可能にするための景観保護手法や 新たな技術を生み出すこと。
7. 世界遺産に登録された文化的景観の完全性に対して影 響をおよぼしたり、脅威となるサイト外部の開発やプ ロセス、出来事による影響に対処すること。
8. 特に景観の関連する価値がコミュニティ内部に存在す る地域において、文化的景観の遺産としての価値を維 持しているコミュニティを支援すること。
こうした問題は景観の開発や変化によって引き起こされ る。そして、脅威となったり価値のある景観や介入の受容可 能な度合いを把握すること、伝統的な景観を管理すること、
新たな景観をつくり出すことなどについては、近年の現象と して世界各地で検討されてきた。
参考文献等
Green, B., and W. Voss, 2000. Threatened Landscapes:
Conserving Cultural Environments, London and New York, Spon Press.
Addison, Alonso C. (ed.), 2007. Disappearing World. The Earth Most Extraordinary and Most Endangered Places, London, Collins.
Leservoisier, Christophe, and Bertrand Carrier, 2006.
Tourism and Deserts: A Practical Guide to Managing the Social and Environmental Impacts in the Desert Recreation Sector, Paris, United Nations Environment Programme.
Lockwood, Michael, Graeme L. Worboys and Ashish Kothari (eds.), 2006. Managing Protected Areas: A Global Guide, London, Earthscan Publications Ltd.
ひとつには、施策の種別によって最も共通する課題をカテ ゴリー化し、それらを、すでに世界遺産リストに記載されて いたり、あるいは各国の世界遺産暫定リストに含まれたりす る文化的景観の事例につなげていくといったことがありう る。農林業に関する課題は、レドニツェ-ヴァルティツェ(チェ コ)の設計された景観やキューバのコーヒー農園のように継 続している景観、残存している景観において生じる。また、
保護と修復はデッサウ・ヴェルリッツ(ドイツ)の設計され た文化的景観やセント・キルダ(英国)を含む多くの化石景 観・考古学的景観において見出だされる。無形遺産の問題は ミジケンダの聖なるカヤの森林(ケニア)の継続する景観や トンガリロ(ニュージーランド)の関連する文化的景観にお いて例示され、また教育や意識啓発の問題はブレナヴォン(英 国)の残存する産業景観によって示される。観光やレクリエー ションがウルル-カタ・ジュタ国立公園(オーストラリア)
やアマルフィ海岸(イタリア)における重要な課題である一 方で、社会的な支援は特にスクル(ナイジェリア)の継続す る景観やチレント国立公園(イタリア)に深く関連している。
環境への影響やインフラのような外在的影響はホルトバージ 国立公園(ハンガリー)やロワール渓谷(フランス)において、
また人的災害や自然災害はクルシュー砂州(リトアニア/ロ シア)やバムとその文化的景観(イラン)において見られる。
連続性や境界、緩衝地帯の問題はペルデュ山(フランス/ス ペイン)やサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼道にお いて生じ、後者は現在フランスとスペインの異なる3つの資 産として登録されている。
景観が自然的価値、文化的価値の両面を有し、両者を合わ せて考えねばならない一方で、表は価値を保護するために必 要とされうる施策の幅がサイトのカテゴリーによって異なる ということを示している。しかし、第2節で検討するように、
すべての施策は世界遺産に登録された文化的景観で示される 遺産の価値に対する重要性の言明と関連しなければならな い。こうした価値は管理の将来像やサイトの目標を強化する ものでもある。どのタイプの施策が景観のカテゴリーに適応 するのかを分類することは比較的簡単である。施策は顕著な 普遍的価値を有する景観構成要素を位置づけるのに必要であ る。顕著な普遍的価値には例えば以下のようなものがある。
▪自然要素:その美しさが観光客を魅了する絶景。
はじめに
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世界遺産の文化的景観 ― 保全・管理のためのハンドブック
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▪地元住民のあいだで生きている文化と景観の関係。
▪現時点で、また2,000年の時間幅での資源の持続可能な 利用。
すべての施策は受容可能な変化の度合いという文脈での脆 弱性の調査を取り巻くように存在している。問題は、「21世 紀という時代には、価値が失われ、意味が変化する以前に顕 著な普遍的重要性を有する景観に介入することがどの程度許 容されるべきか」ということである。
文化的景観管理に共通する課題