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第3章  教科による教育課程の編成

第2節  各教科の目標と内容

 ここでは、昭和37(1962)年の青鳥養護学校「研究紀要H」に示 されている、「国語」「数学」「社会」の指導目標と内容等から、各教 科の課題を探る。

(1)r国語」

  1.指導目標

   ①いろいろな相手や場に応じて話したり、聞いたりする能力を高     め、社会生活に参加できるようにする。

   ②簡単なことなら、人の話を正しく聞き、経験したこと、感じた     ことの要点をつかんだり、すじをたてて話すことができるよう     にする。

   ③目常生活で用いられる語句や文章などを読んだり、書いたりす     る能力を伸ばすようにする。

   ④職業生活に必要な言語になれるようにする。

   ⑤言語能力を高め、生活を豊かに楽しく過すようにする。

  2.指導内容

 「国語」においては発達段階の基準として、三段階に分けて示さ

れている。

 a)話題、主題の発達  b)経験の発達

 c)技能、態度の発達

 さらに、r国語」の能力をr聞く」r話すj r読む」r書く」の四つ に分類して、それぞれ明確なねらいをもって指導がするよう試みら れている。また、「聞く」「話す」は、日常生活の中において指導で きる機会が多く、生活場面を有効に利用できる。それに対して、「読 む」や「書く」は教師側が積極的に時間を設定しなければ指導が難 しい。よって、「国語」の時間の指導は、「読む」「書く」を重視する よう配慮されている。

 このように、「国語」を「聞く」「話す」「読む」「書く」という四 つの領域に分類して、それぞれの面でバランスの取れた発達を目指

して指導計画が立案されている。

(2)r数学」

 1.指導目標

  ・数量や図形に関する基礎的な知識の習得と基礎的な技能の習熟    を図り、目的に応じ、それ等が的確かつ能率的に用いられるよう    にする。

  ・数学的な考え方や処理のしかたを進んで日常生活に生かす態度    を伸ばす。

 r数学」の領域は、r数と計算」r図形」r量と測定」r数量関係」r実 務」という五つの領域に分けられた。さらに例えば、「数と計算」は、

「整数」「加法と減法」「乗法と除法」の段階に分けて指導計画が立 てられた。「国語」に比べて数学は、意図的に指導場面や教材を設定

しなければ、目常生活における指導は難しい。

(3)r社会」

 1.指導目標

   「学校や家庭の生活をささえるために行われているいろいろな   仕事のようすから、自分たちとの関係を理解させ、これらの仕事に   ともなう苦心やそのようすに気づかせる。

   学校や家庭その他の身近な生活にいろいろな行事や施設がある   ことの意味について理解させ、みんな楽しく健康な生活ができるよ   うな配慮がなされていることに気づかせる。

   身近な地形、事物の位置関係や場所的相違あるいは家庭の暮らし   などにみられる四季の変化、事物の新旧の違いなどを観察、理解さ   せ、空間〔地理的〕や時間〔歴史的〕についての意識の芽ばえを養

  う。

   社会で多くの人々がそれぞれの仕事を分担している事実を理解   させ、これらの人々に対する理解と協力の気持を育てる。

   物資の利用のしかたについて工夫する習慣、態度を育てるため、

  生活に必要な物資の生産やその輸送に従事している人々のようす   に気づかせ、これによって自分たちの生活が成り立っていることを   理解させる。

   父母、兄姉、先輩及び自らも、やがて生産やその他重要な諸活動   をすることに気づかせ、公共施設や資源を大切にする態度を養う。」

2.指導内容

 1)家とその周辺

    (1)家人の仕事・父母の職業     (2)家人の協力

    (3)家の近所のようす     (4)学校のようす

2)広い社会

(1)交通機関

(2)行事

(3)公共機関

(4)日本やいろいろな国

(5)ものをつくる人々

 以上に見てもわかるように、「社会」の内容は、他の「国語」や「数 学」と比較して系統性が薄い。これらの内容は、日常生活の指導や

自立活動として、指導するほうが適切ではないだろうか。

 しかし、例えば、「2)広い社会」の「(4)日本やいろいろな国」

における具体的な指導内容は以下のようなものがある。

①地理

 ・日本はどんな形をしているのだろうか。

 ・地図に書いてあるいろいろな記号は、なにをあらわしてい   るのだろうか。

 ・東京の位置は、どの辺にあるのだろうか。

②方角

 ・北と南の[方角及び記号]、温度のちがいがあるのだろうか。

 ・地方によって、どんな植物があるのだろうか。

 ・また、くらしの違いがあるのだろうか。

③外国

 ・日本のほかに、どんな国があるのだろうか。

 ・その国は、世界のどの辺にあるのだろうか、そしてどんな   人が住んでいるのだろうか。

 ・どんな家に住んでいるのだろうか。

 ・世界には、どんな名前の建物があるのだろうか。

これらの内容は、目常生活場面等で取り上げて指導することが難

しいだろう。このような内容ならば教材を精選し、「社会」として授 業をする必要性があるのではないか。

第3節 まとめ

 小宮山(1967)は、生活主義教育について「すべての子どもに通 用する教育原理」として肯定的に捉えている。しかし、その実際の 指導においてはr混迷やむだ」が多いとして、教科による教育内容 の整理を試みた。よって、この教育課程再編成は「バザー単元」で 扱われていた内容を整理し、系統づけることが目的であったといえ

る。

 「バザー単元」ではほとんど取り扱われなかった知的内容等を取 り扱おうとする変化が一部で見受けられる。

 例えば、「国語」においては教材として詩が取り上げられ、その指 導目標には、「詩を読むことになれさせ、人間尊重の気持を育てるよ

うにする。」とある。また、r社会」の内容構成の基本的な考え方に は、「生徒の現在、ないし、将来の単なる生活態度の要請だけをもっ て可とする考え方を改め、ある程度の知的内容をくみ入れて(以下

略)」と示された。

 各教科の内容は、単に「装飾的知識」といったものではなく、「文 化の蓄積」としての視点を有しており、子どものバランスの取れた 人格形成を見据えた内容である。しかし、将来の職業生活と直接的 に結びついているとは言い難く、職業教育を重視しつつも、生活を 豊かにする内容を幅広く取り入れようとする姿勢が見られる。

 生活と直接的な関連の薄い教科内容の指導は困難であった。これ によって、生活と直接的な関連の薄い教科の内容を、教育課程上で どのように位置づけていくのかという新たな課題が提示されたとい

える。

 教科による教育課程の編成は、「バザー単元」における指導内容を 分節、整理することがそのねらいであった。しかし、各教科の教育 目標や内容は、「バザー単元」では取り扱われなかった内容が数多く 見られ、職業や生活に密着したものではない内容も数多く取り上げ

られるようになった。それらの内容は生活に密着させて指導するこ とが困難であり、指導方法の検討が必要である。また、それらが知 的障害児にとってどのような意味を持っ内容であり、どのように教 育課程に位置づけていくのか、検討されていない。

 「国語」r社会」r数学」の教育内容は、いずれも知的障害児の生 活を考慮したうえで、必要な点に絞って目標が掲げられている。「水 増し教育」と異なる点は、知的障害児にとって必要な内容が精選さ れている点である。

 国語や数学は系統的な内容であり、教科別に指導することが比較 的容易な教科であるといえる。それに対して、社会の内容は生活的 なものが多く、それぞれの関係性はあっても連続性や系統性が少な い。そのため、社会の内容は、日常生活の指導や領域・教科を合わ せた指導で統合的に取り扱うほうが、より効果的な指導となる。し かし、社会の中でも、例えば、世界の国々に関する内容は生活の中 で指導するよりは、特にねらいをしぼって、教科別の指導を行うこ

とができるのではないか。

 また、社会の内容を統合的に取り扱うほう際の課題としては、あ る程度の発達段階に達している子どもに対しては、生活において扱 う内容があまりにも広範にわたってしまうことがあげられる。青鳥 養護学校の実践においても、各教科の内容は授業においてのみ扱わ れるのではなく、教育活動のすべてを通じて行われるものであると

された。この点は、「バザー単元」と同様のねらいをもっている。し かし、各教科の内容を教育活動すべてを通じて行うという指導方針 は、指導の系統性を曖昧にしてしまうという危険性を持っ。

 これまでの議論の中では、「教科別指導」か「合わせた指導」か、

といった議論がなされてきた。しかし、同じ教科のなかでも、教科

として独立にして指導するのに適した内容と、他の領域・教科を合 わせて指導するのに適した内容がある。内容によって教科別で指導 するのが適切な内容か、合わせた指導で指導するのが適切な内容か

を、議論する必要があるのではないか。

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