第2章 総合単元学習に統合化された教科
第2節 rバザー単元」
(1)概要
大崎中学校分教場は、昭和22(1947)年に開設され、文部省教育 研修所の敷地内の建物を教室として使用していたが、昭和25(1950)
年に都に移管され、都立青鳥中学校として独立校となった。これを 機に新校舎が設立され、校舎移転に伴う引越し作業と、必要なもの
を購入するために、「バザー単元」が設定された。
「バザー単元」は、バザーを中心とした総合単元学習であり、昭
和26(1951)年度から昭和33(1958)年度まで実施された。バザ ーを行うための原材料収集、製作、販売、会計などの活動をすべて 学習として位置づけたことが「バザー単元」の特徴であるといえる。
青鳥養護学校の教育はrバザー単元」を機に、それまでの教科の生 活化や作業学習の強化といった枠を超えて、総合的かつ長期的な単 元学習の色彩を濃くしていった。
このバザー単元は、全国から注目を集め、その後の知的障害教育 に大きな影響を与えることとなった。では、「バザー単元」とは、ど のような学習であったのか。rバザー単元」の概要を以下のようなも
のである。
①動機づけ
②相談
③計画
④材料集め
⑤製作
⑥販売
新しい校舎の立派な落成式を行おう。それには学校 の設備備品を完備しよう
それにはどうしたらよいか、廃品を回収して、作品 を制作し、販売することによって利益を得よう→バ
ザー
バザーをどのようにしてやるか、作品、材料、販売 等について
材料集めの依頼、宣伝ポスター、どのように集める か、交通機関の利用、郵便局の利用、御礼状、材料 分類、量の確認
原料づくり、下ごしらえ、仕上げ、検査、市販の値
段調べ、定価づけ。〔品目〕男子一一(人形(首、手)、
額縁、空びん、空かん利用の花さし、灰皿、ブック カバー、はたき、その他) 女子一一(人形(衣装)、
まくらめ編み、火鉢しき、足ふきマット、ブックカ
バー、その他)
宣伝ポスター、バザー通知、通信販売、値段と計算、
陣列、品物の包装、対人関係
⑦収益計画
⑧反省
原価と売価、計算と現金、収益 態度、技能、参加度にっいて考える
(青鳥養護学校, 1977)
単元の内容としては、バザーで販売する商品製作のための材料の 収集による社会性の獲得をねらい、製作を通して作業的な学習を行 う。さらに、実際にバザーで販売することによって、金銭のやり取 りを学ぶ。この一連の過程を一っの大単元としとして捉え、学習活 動として位置づけたものである。つまり、バザーを成功させるとい
う目標に対して、全ての年間指導計画を集中させるものであった。
このように生産を中心にした教育課程編成は、現在、職業教育を 重視する養護学校において多く取り入れられている。
(2)ねらい
この「バザー単元」のねらいは、以下の5点にまとめられている
(青鳥養護学校,1957)。
①全部の生徒がその能力に応じて、組織の中に何らかの位置を 占める。
②そういった組織の中で働く子らによって、他人に対する態度、
社:会に対する責任等を身体で覚える。
③自分でできる程度の仕事を繰り返すことにより、訓練される と同時に自分にできることがあるという自信を持つ。
④自分の関与によって作られたものが実際に売られるというこ とで、自分の価値を認識する。
⑤長期問の組織活動により社会的成熟をもたらす。
この実践は、作業学習というよりは、作業を素材とした、生活総 合学習または、経験単元学習と位置づけるべきであろう。
昭和27(1952)年度から昭和39(1964)年度まで、青鳥中学校 及び青鳥養護学校の校長を務めた小宮山倭は、「バザー単元」のねら いに関して以下のように述べている。
「これ(引用者注一一バザー単元)を参観する人が、職業教育ですねとい うが、(中略)いわゆる職業教育は、そこにとりあげた職種に習熟させて、
卒業したとき、その職種に就かせる下準備ということをねらっているわ けであるが、われわれの採りあげた職種は必ずしもそうした下準備とい う意味はない。結論的にいえば、何の職種でもよいので、その職種を実 践させることによって、仲問といっしょに協同的に仕事を分担できるよ
うな身の習慣や心がまえを作りたいのである。」(小宮山,1951)
つまり、「バザー単元」は、それまでの作業学習よりも視点を広く 持ち、社会性の獲得をひとつの大きなねらいとして置いていたこと が、小宮山の言葉からわかる。
また、「バザー単元」は、バザーを成功させるという生徒にとって 理解しやすい目標の設定を行った。生徒は、原材料の収集や商品の 製作、販売について、バザーを成功させるという目的を理解してい たため、生徒の意欲・関心は高かったものである。
(3)指導計画
「バザー単元」が設定された時期の一年間の流れを表8にまとめ た。この時期の一年間の流れとしては、4月〜5月をバザー単元の導 入の時期として位置づけていた。6月から10月の青鳥祭まで、バザ ーで販売する作品の製作を行う。製作作業は、材料の収集に始まり、
10月の青鳥祭において販売を行うことを学習単元として捉えた。11 月以降は事後の反省と次年度への引継ぎとした。
また、一日の活動(表9)を見ると、単元学習に最も多くの時問割 を割いている。単元学習の内容は、部・班ごとに異なるが、実習部
は木工・縄ない・編物・ミシン等の班があり、具体的には、状差し、
がく縁、ビン人形、押し絵、枕カバー等が製作された。生活部にお いては、男子が新聞紙を材料にしてのパルプ作り。女子は雑巾、は たき等を製作した。
教科的な内容に関しては、いわゆるr読み・書き・算」という将 来の職業生活に最低限必要な内容に限定して取り扱われていた。作 業の流れの中で適宜指導したり、一日の終わりのまとめの時問に指 導を行ったが、時間配分は極めて少なかった。
表8 年間単元
4月 新入生歓迎パーティー rバザー単元」導
入期
5月 6月
rバザー単元」
7月 8月 9月
10月 青鳥祭
11月 運動会
反省と次年度へ の引継ぎ 12月 クリスマス学芸会
1月
2月 成長展準備
3月 成長展
表9 毎日の活動(昭和27年度)
9=00 登校・朝掃除
部・班別単元学習(120分)
10=00 11=00
給食準備
12=00 給食・休憩
13=00 部・班別単元学習(60分)
14=00 日記記入・教科書によるまとめ
掃除・挨拶
15=00 下校
(4)学級編成
学級編成は学年の枠を外したr生活部」とr校内実習部」、r校外 実習部」に分けられた。入学者全員を初めは「生活部」に入れ、そ の後「校内実習部」、「校外実習部」へと適宜昇格させていく組織編 制をとった。生活部のねらいとしては以下のように示されている。
「入学させた生徒はまず誰も、一応生活部に入れる。この部というものは 普通学級の級にあたる。学校生活がおもしろく、友だちにも何らのひけめ や警戒心なしにつきあえて、いわば学校生活にのってくるようになること を生活部の指導のねらいとしている。」
「生徒にとつては生活部での生活が青鳥生活の意義あるスタートであり、
彼等が正しい扱いをうけ、いろいろなかくされていた能力の発見の場でも あり、社会人としての適応力をうるための第一段階ということにもなる。
物に接し人に対することに余り大きな失敗なしに、順次なれさせていこう とするわけである。」(青鳥養護学校,1957)
生活部は、実習部昇格までの準備期間として位置づけられた。一 年間生活部に所属するというものではなく、生徒の能力に応じて適
宜実習部に昇級させた。
その後、「バザー単元」による職業教育が徹底されていく過程で、
学校における学習活動に、一般の工場の体制を取り入れ、作業内容 の単純化による流れ作業方式をとった。これを学校工場方式と呼び、
工場体制含まれる教育的要素を活用することによって教育を行おう とした。図1には、青鳥養護学校を工場化した組織図を示した。
図1 青鳥工場組織図
青 鳥 工 場
木工班実習部
パルプ班実習部
縄 班実習部
ミシン班実習部
編物班 実習部
1
寮班
糸
粘土班 生活部
生活部
外交部
受付班
通信班
運搬班 全生徒
全生徒 実習部 印刷班会計班調査班実習部 実習部実習部
(5)「バザー単元」における教科内容
「バザー単元」における教科の内容は、主として、バザーの流れ の中で、機会を利用して指導がなされた。
例えば、図2に示したように、バザーに対する協力依頼状を書か せたり読ませたりすることによって、国語的な能力をつけようとね
らっていた。
しかし、表9に示されている毎日の活動表を見ると、教科的な学 習は、14時から14時半までの30分問しか取られていない。国語や 数学といった教科の内容でも、反復や系統的な指導が必要な「読み」
「書き」「計算」の指導が、十分になされていたとはいえないだろう。
図2 バザー協力依頼状
よ
六月瓦日
も ん た い
8 ノートにキーれいにかきなざい
・やのとこス.はちよっレ︐あかしてかくこレ
ロ よく鼎疏んでみなさい
口 なんのことかかいてあるチ紙てすか
個 うまくかけたレ﹃一.︸ろに赤でまるをつけなさい
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かんじのれんしゅうをしなさい
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ーをやりまかから︑ばろぎれや.あ玉︑︑かんや︑新聞を︑
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いろ/ー\なレのを︑雄ロヂ\ 一生けんめいに作・︐.㍉︑釦冗り
ますから︑ど.つか.買いにきノ︑.トさい.おねがいします
へ﹃伊齢つーー\︑ー藁↓ン\キ一.昌帰卜丁め4・います
第3節 rバザー単元」の廃止
(1)「バザー単元」のマンネリ化
昭和26(1951)年度から8年間にわたって青鳥中学校及び青鳥養 護学校の教育課程の中心に位置づけられた「バザー単元」は、昭和