授業実践の分析 を とお して、教科書型 プ リン トと子 どもの既習知識 の活用 についての問 題 点 を明 らかにす るこ とができた。
(ア
)教
科書型 プ リン トの問題点 教科書型 プ リン トの課題 は3点
ある。1点日は、授業者 が教科書記述 を授業後 に配付す ることの是非である。
教 科 書 型 プ リン ト (図Ⅲ ‐2‐
2)は
、子 ど もが 探 究 を行 う前 に教 科 書 記 述 や 資 料 を見 るこ とを防 ぐた めに、教科書記述や一部 の資料 を授業 の最後 に配付 し、子 どもに貼 ら せ た。 子 どもが 、 プ リン トの指 定 され た場 所 に教 科 書 記 述 を の りで貼 る こ とに よ っ第Ⅲ章
第3節
書記述 は、学習課題 のま とめ として子 どもに ワー クシー トに書い てほ しい内容 であ る。子 どもが配付 した教科 書記述 とワー クシー トに書 いた学習課題 のま とめを比較 す る こ とに よつて、授業 内容 を理解 で きていたか ど うかを確認 で き るよ うにす るた めの手立てで もあ った。 しか し、教科書記述 を配付す るこ とによって、子 どもが配付 され る教科書記述 に頼 り、 自ら学習課題 につ いて考 える姿勢 を放棄す る可能性 が ある。 また、教科書記述 を貼 り 付 ける空欄 を子 どもが板書 を写す スペースである と誤解 し、板書内容や メモ を記述 して し まった子 どもが数人いた。資料 を貼 り付 けるスペース に 「の りしろ」 と書 くな ど、子 ども の誤解 を防 ぐための手立てを講 じる必要がある。
2点
目は、学習課題 に対す る説 明的知識 を、どの よ うな探究 によって導 き出 したのか とい う探究過程 の流れ がわか りづ らい ことである。教科書型 プ リン トは、子 どもが資料 か らわか った内容 を記述 し、配布 された教科書記述 を貼 ることによつて、授業内容 の教科書 として完 成す る。しか し、子 どもが どの よ うな流れ で説明的知識 を導 き出 したか とい う探 究過程 の再 確認 とい う点で、開発 した教科書型 プ リン トは不十分 だつた。教科書記述 か らは、探究 を と お して習得 した説 明的知識 を再確認す るこ とはで きる。 しか し、学習課題 に対 して、なぜ その よ うな説明的知識 が導 き出 され たのか とい う探 究過程 を確認す ることがで きない。本 時の検証過程 であ る、大 日本帝国憲法 、松本案 、マ ッカーサー草案 のそれぞれ の内容 を箇 条書 きで示 し、比較 させ る活動 は別 の ワー クシー トで作業 を行 つた。 しか し、説 明的知識 を導 き出 した過程 を再確認す るためには、検証過程 を教科書型 プ リン トで行 うことが重要 である。3点
目は、子 どものつ まず きを防 ぐた めに、必要 に応 じて漢字 にル ビをふ ることや言葉 の意味 を記述す ることである。教科書型 プ リン トに掲載す る資料 として、大 日本帝 国憲法、松本案、マ ッカーサー草案 を掲載 した。 しか し、子 どもに とつて条文 の漢字や言葉 の意 味が難解 で あ り、ふ りがなや 言葉 の意味 の説 明な どの配慮 が十分 ではなかつた。 そ のた め、資料 の読み取 りが難 しい面 もあつた。 その結果 、「日本 国憲法 の制定」 の授業 は 「敗戦後 の人 々の くらし」 の授業 と比 較 して、子 どもに とつて難解 な授業 となつた。
(イ
)子
どもの既習知識の活用について適切だつたことである。授業仮説 に基づいて、子 どもにポツダム宣言
10条
と12条
を学 習課題 (「なぜマ ッカーサーはGHQに
草案の作成を指示 したのだろ う」)の
予想 のための 資料 としてワークシー トに提示 した。資料を次のよ うに示す。○ポ ツダム宣言 (一部要約 :太 田)
10条
日本 国政府 は、基本 的人権 の尊重 を確立 しな けれ ばな らない。
12条
連 合国 占領軍 は、 日本 国民 が平和 で責任 ある政府 を作 つた とき、直 ちに 日本 よ り撤退 す る。
(①)
ポツダム宣言
10条
には、 日本 国憲法 の三大原理 で もある 「基本 的人権 の尊重」 とい う 言葉 がある。 また、12条
には 「平和で責任 ある政府」 とい う言葉 が ある。 これ らを検索手 がか りと して、「平和主義」 とい う既 習知識 を想起 させ 、予想 として表現 させ る とい う意 図 が あつた。 しか し、条文 にあ る言葉 を使 って予想 がで きてい る子 どもがい る ものの、「基本的人権の尊重」や 「平和主義」 とい うキー ワー ドを用いて予想 を立ててい る子 ども は一人 もいなかった。 この問題 の原 因 として、次の四つが考 え られ る。
一つ 日は、「基本的人権の尊重」や 「平和で責任 ある政府」 とい う言葉が検索手がか り として有効 に働 かず、子 どもが 日本国憲法 の三大原理 を想起 で きなかった ことである。
二つ 日は、子 どもが 日本国憲法 の三大原理 を覚 えていない ことである。
三つ 目は、学んだ こ とのある知識 として想起 はできたけれ ども、学習課題 との関連性が 見出せ なかつた ことである。
四つ 目は、学 んだ こ とのあ る知識 として想起 はで きた けれ ども、予想 に知識 を活用す る こ とがで きなかった ことである。
いずれ に して も、子 どもに とつては難 しい課題 であつた。予想 の際 に既習知識 を活用 さ せ るための手立てを考 え直す必要 がある。
2点
日は、探 究過程 のそれ ぞれ の段階 で既習知識 を活用 させ る取組 を行 うこ との是非で あ る。「日本 国憲法 の制定」 の授 業 では、探究過程 の説 明的知識 の習得以外 の全 て の段 階 で、資料 を とお して既習知識 を活用 させ る取組 を行 つた。 しか し、資料 に基づいた検証 の 段 階以外で時間 を割 いて しまい、子 どもが検証 を行 う時間が短時間 になって しまった。そ のため、条文の難 しい言葉や漢字 に戸惑 う子 どもが多かった ことを考慮 して、検証時間を第Ⅲ章
第
3節
用する既習知識を想起させる取組を行 う。
【註及び引用 。参考文献】
′
①太田昌吾「日本の民主化 と冷戦」兵庫教育大学大学院学校教育研究科教育実践高度化専攻 実習授業 (三田市立上野台中学校
)に
おける指導案2015.6
第 Ⅳ 章
「子 ど も とつ くる教 科 書 」 の 開発 と授 業 モ デル の改 善
本章では、第Ⅲ章で明 らかになつた成果 と課題 に基づいて、「敗戦後の人々の くらし」「日 本国憲法の制定」の二つの授業の改善指導案 を作成す る。また、子 どもが授業をとお して作 成す る 「子 どもとつ くる教科書」 を開発す る。
第 1節 では、小学校社会科の既習知識 を活用 した歴史的分野の探究学習の理論 の改善 と
「子 どもとつ くる教科書」の開発 について論 じる。
第
2節
では、「敗戦後の人々のくらし」の授業モデルの改善点について論 じる。第
3節
では、「日本国憲法の制定」授業モデルの改善点 と改善授業モデルにおける子 ども の小学校社会科の既習知識の活用について論 じる。第
1節
小学校社会科の既習知識 を活用 した歴史的分野の探究学習の理瞼の改善と『子 ど もとつ くる教科書」の開発本節では、小学校社会科の既習知識 を活用 した歴史的分野の探究学習の理論 の改善点に ついて論 じる。また、子 どもが授業で作成す る「子 どもとつ くる教科書」の開発について論
じる。
1
小学校社会科の既習知識を活用 した歴史的分野の探究学習の理綸の改善先述 した授業実践の成果に基づいて、「探究I」 の学習過程において、子 どもが小学校で 学習 した既習知識 を活用す る過程のモデル を改定す ると図Ⅳ‐1‐1の ようになる。
先述 したモデルに、子 どもの先入観 を追加 した。子 どもの先入観 は、小学校で学習 した既 習知識か ら発生す ると考えられ る。
今後は、このモデルに基づいて授業モデルを開発 してい く。
第Ⅳ章
第1節
′ J攣校で学習した
既習知識 │
新 た に習得 した 情報
説明的 知識の習得
図Ⅳ
‑1‑1
改定 した「探究I」 の学習過程で子 どもが小学校で学習 した既習知識を活 用する過程のモデル2
「子 どもとつ くる教科書」の定義教科書型プ リン トの課題 は、子 どもが書 き込む部分 がほ とん どなかつた こ とである。この 課題 を改善す るために、子 どもが探究 した結果、わか つた ことをプ リン トに書 き込 ませ てい くことが大切 であ る。つま り、教科書型 プ リン トにワー クシー トとしての機 能 をもたせ るこ とになる。探究過程 を とお して、子 どもが ワー クシー トに資料 か ら読み取 つた ことやわかつ た こ とを記述 してい く。最終的 に、子 どもは授 業内容 が反映 された教科書 を 自身の手で完成
させ るこ とになる。
この よ うな ワー クシー トを 「子 どもとつ くる教科書」 とし、次の よ うに定義す る。
「なぜ疑間
Jの
発見探究学習における「子 ども とつ くる教科書 」は、次の特徴 をもつ。
(1)学
習課題の発生や予想 口仮説の検証 に必要 な資料が掲載 され ている。(2)子
どもが探究 をとお して、資料か ら読み取 つた情報 や習得 した説 明的知識 を教科書記 述 と して書 き込 ませ る ことによつて、探究過程 を再確認で きる教科書 と して完成 させることができる。
子 どもは、学習課題 に対す る仮説 の検証 として、資料か らわかつた情報 を「子 どもとつ く る教科書」 に記述 してい く。 また、「子 どもとつ くる教科書」 に記述 した情報 を比較、関連 付 けることによって新 たな情報 を生み出す。そ して、子 どもは、新た に生み出 した情報 同士 を比較 した り、総合 した りす るこ とによって、説 明的知識 を習得す る。
「子 どもとつ くる教科書」は、このよ うな検証過程 を含む ものでなければな らない。検証 過程 を「子 どもとつ くる教科書」に反映す ることによつて、学習課題 に対す る説 明的知識 を
どの よ うな探究 に よつて導 き出 したのかを再確認 できる。
先述 した教科書 プ リン トの課題 に基づいて、再開発 した「子 ども とつ くる教科書」を図Ⅳ
‐1‐
2に
示す。「子 どもとつ くる教科書」において、子 どもが探究過程 を再確認できるための手立て とし て
3点
の ことを行 う。1点目は、資料 か ら読み取 った情報 同士のつなが りを矢印で示す ことや 「なぜ疑問」が 発生す る部分 に下線や 両矢印 を引かせ ることである。例 を図示す る と図Ⅳ‐1‐
3に
なる。図Ⅳ ‐1‐
3に
は、「日本 国憲法公布記念祝賀都 民大会 」 の写真 か ら読 み取 る こ とがで き る 日本 国憲法 の公布 とい う情報 と「日本 国憲法制定 のあゆみ」に示 されてい る 日本 国憲法の 公布 がそれぞれつ なが る内容 で あるので、これ らの情報 を、矢印でつ ながせ た例 を示 した。また、「日本 国憲法制 定のあゆみ」 の 「なぜ疑問」 が発 生す る内容 同士 に下線 を引 き、両 矢印でつながせ る。