3.教材の評価結果
3.2 教師と生徒の評価の比較
図3〜4に基づき,2006年度の教師による評価と2007 年度の生徒による評価の差異について比較することにす る。
⑴ 「内容全般」についての評価
まず,「内容全般」(図3)についてみると,教師の評価 傾向は項目間での差はあまり見られない。詳細にみると,
「07:絹とカイコの歴史」が最上位で,「01:地球の運動と 昆虫(季節と昆虫)」「03:昆虫はなぜ脱皮するのだろう」
が,これに続いており,「07:絹とカイコの歴史」が最も 高く評価されている。
これに対して生徒の評価傾向は,「08:昆虫を食料とし て考える」の評価が突出して高いほかは,項目間での差は あまり見られない。大半の項目について,生徒の評点は教 師よりも高い傾向がみられる。このことは,本教材が生徒
にとって,未知の学習内容や意外性に富んだ実験過程が豊 富に含まれていることから,その知的好奇心が十分に刺激 されたものと考えることができよう。
一方で,教師による評価の高かった「07:絹とカイコの 歴史」や「01:地球の運動と昆虫(季節と昆虫)」に対す る評価が,相対的に低い評価にとどまっている。これらの 内容構成をみると,例えば「07:絹とカイコの歴史」は 17項目にわたっており,絹織物の製造過程が丹念に解説 されている。このことは教師の側から見れば内容が充実し ている反面,生徒の側から見れば内容が濃密に過ぎる向き もあったのではないかと考えられる。また,絹やカイコそ のものについて日常的な知識が不足していることも,低い 評価の理由の一つと考えてよいのではないか。
「01:地球の運動と昆虫(季節と昆虫)」の内容項目も 12であり,この8テーマの中では3番目に項目数が多い ものである。しかしながら,生徒による評価が最も高かっ た「08:昆虫を食料として考える」の内容を見ると,全体 の項目数は2番目に多い13に上り,動画設定も5項目,
画面展開も4項目含まれており,鑑賞時間も長くかかる設 定である。このことから,「07:絹とカイコの歴史」のほ かは,必ずしも内容量が問題とされるものではないだろう。
⑵ 「取扱方法」についての評価
「取扱方法」(図4)についてみると,教師の評価傾向は 項目間での差はあまり見られない。詳細にみると,「01:
地球の運動と昆虫(季節と昆虫)」「06:アメンボはなぜ水 面に浮いていられるのか」「07:絹とカイコの歴史」「08:
昆虫を食料として考える」が若干上位層に評価され,「02:
地球の運動と昆虫(時間と昆虫)」「03:昆虫はなぜ脱皮す るのだろう」「04:オスとメスの出会い」「05:ホタルの光 はどんな光」が横並びで下位層に評価されている。
これに対して生徒の評価傾向は,「06:アメンボはなぜ 水面に浮いていられるのか」が最も高く評価され,続いて
「08:昆虫を食料として考える」「05:ホタルの光はどんな 光」が中位に,その他は横並びに下位に評価され,項目間 での差はあまり見られない。「内容全般」と同様に,大半 図2 「取扱方法・生徒」の評価傾向(N=12)
Fig. 2. A tendency to evaluation of a handling method/students (N
= 12).
図3 「内容全般」の平均得点(教師と生徒の比較)
Fig. 3. Scoring averages of the contents whole (A comparison of teachers and students).
174 菅沢 茂・普後 一・濱野 國勝・島田 順・金勝 一樹・馬場眞知子
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の項目について生徒の評点は教師よりも高い傾向がみられ るが,「01:地球の運動と昆虫(季節と昆虫)」や「07:絹 とカイコの歴史」に対する評価が,相対的に低い評価にと どまっている。
「06:アメンボはなぜ水面に浮いていられるのか」「05:
ホタルの光はどんな光」は,項目数が少なくかつ学習内容 が簡潔で,前半が主に理論の解説,後半が主に実験場面の 動画による紹介とするなどの工夫がなされ,場面展開も容 易である点などが取扱方法について生徒の高い評価につな がったものと考えられる。また,間接的には,アメンボや ホタルという既知の昆虫に対する学習であることから,関 心も高いものがあったと考えられる。一方,評価の低かっ た「07:絹とカイコの歴史」についてみると,17項目の すべての項目に映像による動画が設定され,生徒にとって 鑑賞時間も長く拘束されることから,「取扱方法」につい ての厳しい評価に連動したものと考えられる。
3.3 「中等教育理科実験プログラム」の自由記述 回答による生徒の評価(一部抜粋)
以下に,各テーマの内容や取扱について自由記述回答に よる生徒の意見や感想の中から,紙面の都合で評価の高い 上位4テーマ(08:食料,05:ホタルの光,03:脱皮・
04:出会い(同位)の順)に絞って列記する。各回答文の 末尾に評価項目を分類し,その評価を○,△,×で示した。
なお,各回答文頭のアルファベットは,a〜iが高校生,j
〜Lが中学生を示している。
⑴ テーマ 08:昆虫を食料として考える
肯定的な意見・感想としては,「食糧問題の糸口として 昆虫を出すのは斬新で面白かった/昆虫を食べるのは良い ことだと思った/タイトルに驚いたが栄養の点などから十 分に可能性があると感じた/カイコハンバーグはカイコが 入ってると言わずに人に食べてもらって感想をもらうべき だ/昆虫にはたくさんのタンパク質が含まれていて多くの 栄養分があることは伝わってきた/昆虫を食料として見た ときとても栄養があることがわかった/有用な事柄だ/昆虫 の栄養がこんなにあるとは考えたことがなかった/昆虫を
食べるなんてちょっと想像しにくいが,まさか本当におい しいとは思わなかった/内容も取り扱いもとてもおもしろ く未来に考えなければならない問題も解決できるかもしれ ないので役立った/非常におもしろい内容だ」など数多く 挙げられている。改善点としては,「生理的に嫌悪感が生 じる可能性もある」が1件のみ指摘されている。(表4参照)
⑵ テーマ 05:ホタルの光はどんな光
肯定的な意見・感想としては,「興味を引く内容で実験 もインパクトがあってよかった/実験動画があるのはわか りやすい/面白かった/ホタルが光るのに化学反応が行われ ているとはビックリ/その反応の様子も説明「6.生物のエ ネルギー源であるATP」のところの図でとても理解しやす かった/細菌の検出に利用できるのはすごい/化学反応で 光っていることを知りすごいなと思った/興味深い内容」
などが挙げられている。改善点としては,「ATPとかピン とこない単語が多かった/動画でどれがどの薬品なのか分 からなかった/物質名が多くて分かりづらい/実験は普通の 設備では難しいのではないか」などが指摘されている。(表
5参照)
⑶ テーマ 03:昆虫はなぜ脱皮するのだろう
肯定的な意見・感想としては,「脱皮の瞬間など,普段 見られないものがすばらしい/動画がたくさんあって面白 かった/考えさせるように促す言葉もあって良かった/昆虫 図4 「取扱方法」の平均得点(教師と生徒の比較)
Fig. 4. Scoring averages of A handling method (A comparison of teachers and students).
表4 自由記述回答・生徒
テーマ08:昆虫を食料として考える
Table 4. Free description answers/student, Theme 08 : I think about an insect as food.
a 高3: 食糧問題の糸口として昆虫を出すのは斬新で,面白 かった。○
b 高3:昆虫を食べるのは良いことだと思った。○
c 高3: タイトルに驚きましたが,栄養の点などから,十分 に可能性があるのだな,と感じました。○
d 高3: カイコハンバーグは,カイコが入ってると言わずに 人に食べてもらって感想をもらうべきだと思う。○
e 高3: 昆虫にはたくさんのタンパク質が含まれていてとて も多くの栄養分があることは伝わってきましたが,
食料には…と,少し考えてしまいます(笑)。○
f 高3: 昆虫を食料として見たとき,とても栄養があること がわかった。○
g 高2: とても有用な事柄ではあると思うけれど,生理的に 嫌悪感が生じる可能性もあると思う。○×
h 高1: 昆虫の栄養がこんなにあるとは考えたことがなかっ た。○
k 中1:昆虫を食べるなんてちょっと想像しにくいですが,
まさか本当においしいとは思いませんでした。○
L 中1: 内容も取り扱いも,とてもおもしろく,未来に考え なければならない問題も解決できるかもしれないの で,とても役立った。非常におもしろい内容だった。
○
DVD教材の教育現場における活用とその評価 175
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がなぜ脱皮するのか今まで考えたことがなかったので興味 深い/ホルモンの働きによって変わるのがよくわかった/昆 虫って面白いなと思った/内容も興味があるし取り扱いも 難しくなさそうだった/実験も内容も面白い/動画で分かり やすい」などが挙げられている。改善点としては,「何故 脱皮するのかという説明も欲しかった/最後の実験が少し かわいそう/言葉が難しい/実験はパソコン上でやるより実 際にやった方が詳しい手順も分かっていい/「3.ホルモン の働き」は説明に用語が多くて難しい」などが指摘されて いる。(表6参照)
⑷ テーマ 04:オスとメスの出会い
肯定的な意見・感想としては,「実験の様子も含まれて いて面白かった/今まで(01〜03)のより分かりやすい,1 ページごとに「なぜ?」と思うことが多く次ページで「な ぜ?」が少し解決して行く感じが得られて面白い/写真と 説明で実験に興味をそそられた/実際にやらなくても分か りやすく説明されているので中学生も興味を持つ/カイコ ガはフェロモンによって交尾できることがわかった/ゴキ ブリホイホイなど身近なものを取り上げていて良い/昆虫 も子孫を残すためにいろいろな工夫がされていることに驚 いた/一度は知っておいた方が良い事だったと思う/実験方 法が面白かった」など数多く挙げられている。改善点とし ては,「内容があまりなかった」の1件のみ指摘されている。
(表7参照)
3.4 「難易度」の評価(自由記述回答)
本教材の難易度について,難しいとする評価は,「難易 度にバラツキがありやや難しいものが多かった/単語の難 易度が高い/ホタルの光の話のところでATPや複雑な化学 反応の話が出てきて少し内容が難しい/たまに難しい語が
表5 自由記述回答・生徒
テーマ05:ホタルの光はどんな光
Table 5. Free description answers/student, Theme 05 : Light of the fireflies is any kind of light?
a 高3: 興味を引く内容であり,また実験もインパクトがあっ てよかった。○
b 高3: ATPとか,いまいちピンとこない単語が多かった。
×
c 高3: 実験動画があるのは,わかりやすいと思いました。
○
d 高3: 「4。ホタルの発光反応を試験管の中で再現してみ よう」の動画で,どれがどの薬品なのかいまいち分 からなかった。×それ以外は分かりやすかったし,
面白かったです。○
e 高3: ホタルが光るのに,化学反応が行われているとはビッ クリです。その反応の様子も説明「6。生物のエネ ルギー源であるATP」のところの図で,とても理解 しやすかったです。○
f 高3:細菌の検出に利用できるのは,すごいと思った。○
h 高1:物質名が多くて分かりづらい。×
k 中1: どうして光なんて出せるのだろうと思ったら,化学 反応で光っていることを知り,すごいなと思いまし た。○
L 中1: 興味深い内容だが,実験をするのは普通の設備では 難しいのではないかと思った。○
表6 自由記述回答・生徒
テーマ03:昆虫はなぜ脱皮するのだろう
Table 6. Freedom description answer/student, Theme 03 : Why does the insect slough off old skin?
a 高3: 実験も内容も面白いが,何故脱皮するのか,しなけ ればならないのか,という説明も欲しかった。×
b 高3:最後の実験が少しかわいそうだった。×
c 高3:脱皮の瞬間など,普段見られないようなものがあり,
すばらしいと思いました。○
d 高3: 動画がたくさんあって面白かった。考えさせるよう に促す言葉もあって良かったと思うが,やっぱり言 葉が難しいと思った。こういう実験はパソコン上で やるより,実際にやった方が詳しい手順も分かって いいと思う。○×
e 高3: 昆虫がなぜ脱皮するのか,今まで考えたことがなかっ たので,興味深い内容でした。○
f 高3: ホルモンの働きによって変わるというのがよくわ かった。○
h 高1: 「3。ホルモンの働き」は動画で分かり易いが,説 明に,用語が多くて難しい。×
k 中1:昆虫って面白いなと思いました。○
L 中1: 内容も興味があるし,取り扱いも難しくなさそうだっ た。○
表7 自由記述回答・生徒
テーマ04:オスとメスの出会
Table 7. Free description answers/student, Theme 04 : A male and a female encounter.
a 高3:実験の様子も含まれていて面白かった。○
b 高3:内容があまりなかった。×
d 高3: 今までのよりわかりやすい気がした。段取りが良かっ たからではないかなと思う。1ページごとに「な ぜ?」と思うことが多く,次ページがその次のペー ジで「なぜ?」が少し解決して行く感じが得られて 面白い。○
e 高3: 写真と説明で,実験にとっても興味をそそられまし た。実際にやらなくても分かりやすく説明されてい るので,中学生も興味を持つと思います。○
f 高3: カイコガはフェロモンによって交尾できることがわ かった。○
h 高1: ゴキブリホイホイがフェロモンを利用しているとは 知らなかった。身近なものを取り上げていて良いと 思う。○
k 中1: 昆虫にも子孫を残すために,いろいろな工夫がされ ていることに驚きました。○
L 中1: 内容として,一度は知っておいた方が良い事だった と思う。実験方法が面白かった。○
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