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第6章 政策提言

6.3 政策提言の適用可能性がある地区についての考察

6.2 で述べた容積率移転制度及び 6.3 で述べた用途別の容積率指定について、どういった地域 で導入の可能性があるのかについて整理する。

6.3.1 容積率移転制度の導入可能性について

容積率移転制度は、指定容積率を使い切っていない余裕のある地域から、床の需要はあるもの の、容積率規制がかかっていることから供給が抑えられている地域に対して、即ち、指定容積率 に対する使用容積率の充足率が 100%を下回っている地域から充足率が 100%超42の地域に対し て移転することが考えられる。

なお、建築物に対する形態規制は容積率規制以外にも斜線制限や日影規制等があるため、指定 容積率と使用容積率から計算した容積率充足率が 100%を下回っている場合には容積率規制以 外の規制が制約となっている可能性もある。しかしながら、斜線制限や日影規制などは隣接・近 接建築物の環境を保護する目的で行われているものであるから、これらの規制による制約を受 けた結果余ってしまった使用容積率について他地区へ移転することは、交通容量に対応した交 通量のコントロールという容積率規制の目的には影響しないと考えて考慮しないこととする。

第 2 章 2.5 で述べた通り、使用容積率や容積率充足率の状況は地域によって異なる。例えば、

使用容積率も容積率充足率も低い地域においては容積率移転のニーズはないと考えられるし、

使用容積率が低いが容積率充足率が高い地域は、良好な住環境の保護等のために低い容積率規 制を設定しており、容積率緩和により高容積な建築物が建設されると地域一帯のブランド価値 を下げてしまう可能性もある。或いは、使用容積率も容積率充足率も高い地域においては、既に 当該地域に認められる容量を使い切っているため、それ以上の高度利用は地域のインフラ負荷 を過度に高めてしまう可能性もある。一方、使用容積率が高く、容積率充足率が高くない地域、

或いは容積率充足率が高い建築と低い建築物が隣接・近接している地域においては、一方では高 度利用のニーズがあるにも関わらず容積率規制による制限を受け、一方では容積を必要として ないため余らせている床の供給者が同時に存在しているといえる。

こういった地域においては、容積率の移転を可能とすることで、地域の環境や交通混雑を悪化 させることなく容積率を有効活用し、高度利用を行うことによる正の近隣外部性を発揮させる

41 岡崎ら(2004)

42 吹き抜け、エレベーター、マンションの共用部など容積不算入の床面積についても床面積として算入していることなどにより、指定 容積率を上回る容積率を利用可能である場合があることが考えられる。

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ことができると考えられる。

以上を踏まえ、容積移転の可能性のある地区について例示する。

① 有楽駅周辺では高容積な施設が集積しているが、駅東側は指定容積率を使い切っている地 区が多いのに比べて駅西側は容積率を残している地区が多く存在する。駅西側から駅東側へ の移転可能性がある(図 40)。

② 四ツ谷駅西側では幹線道路沿いに高容積な建物が集中しているが、指定容積率を使い切っ た地区と使い切っていない地区がある。特に幹線道路から南側に一本奥まった道路沿いの建 築物は指定容積率を使い切っておらず、幹線道路沿への移転可能性がある(図 41)。

③ 霞が関周辺では建替えが行われ、指定容積率を使い切り、高容積となった地区もあるが、容 積率を使い切っていない地区もあり、霞が関内、また霞が関から日比谷への移転可能性がある

(図 42)。

④ 新宿駅から西新宿一体にかけて、一帯が高容積となっているが、容積率を使い切っていない 街区もあり、また、この地域と隣接する JR 及び東京所沢線と青梅街道で囲まれた範囲も容積 率を使い切っていない(図 43)。

図 40 有楽町周辺地区

FAR<200 200≦FAR<400 400≦FAR<600 600≦FAR<800 800≦FAR

FAR<200 200≦FAR<400 400≦FAR<600 600≦FAR<800 800≦FAR

図 41 四ツ谷駅周辺地区

容積率充足率≧100 容積率充足率<100 容積率充足率≧100 容積率充足率<100

FAR<200 200≦FAR<400 400≦FAR<600 600≦FAR<800 800≦FAR 容積率充足率≧100 容積率充足率<100

図 42 霞が関周辺地区

図 43 新宿駅周辺地区

FAR<200 200≦FAR<400 400≦FAR<600 600≦FAR<800 800≦FAR 容積率充足率≧100 容積率充足率<100

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⑤ 中央区の西側一帯は高容積な施設が立ち並ぶ一方で、容積率充足率を見ると指定容積率を 使い切っている地区と使い切っていない地区が全域にまだらに存在している。ある程度の範 囲の指定は必要と思われるが、一体で容積率移転の可能性がある(図 44)。

⑥ 渋谷駅周辺においては、駅を中心に高度利用がされているが、全体的に容積率を使い切って いない地区が多い。容積率移転をしなくても一定規模の開発が行われる可能性があり、実際に行 われているが、全域で高度利用が行われるとは考えづらいため、今後の開発を促進したい地域に それ以外の地域から容積率を移転して高容積な開発を行うことも考えられる(図 45)。

なお、建築物については一度建てられると数十年は残存するものであるから、容積率規制の緩 和をしても実際に建替えが進むだけのニーズがあるとは限らない。実際の建替えについては、建 替えに要する工事費などのコストと建替えにより企業が得る効用の比較によって行われること となるが、本論ではこの分析については、控えることとしたい。

FAR<200 200≦FAR<400 400≦FAR<600 600≦FAR<800 800≦FAR 容積率充足率≧100 容積率充足率<100

図 44 中央区

図 45 中央区

FAR<200 200≦FAR<400 400≦FAR<600 600≦FAR<800 800≦FAR 容積率充足率≧100 容積率充足率<100

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6.3.2 用途別の容積率指定制度の導入可能性について

用途別の容積率指定制度については、容積率規制はあくまで利用可能な容積率の上限を定め るものであり、必ずしも地域の床供給・需要ニーズに合ったものである必要はない(指定をして も必ず利用されないといけないわけではない)ため、いずれの地区においても導入自体は可能で あるが、導入することで効果が見込まれる地区について述べることとしたい。

用途別の容積率指定制度の導入目的は端的に言えば都心への住宅立地の促進にある。つまり、

現在オフィス用途が支配的となっている地区において住宅に認められる容積率を増やすことで、

都心居住を進め、職住近接による生産性の向上、通勤混雑の減少などの効果を狙うことにある。

第 2 章で示したオフィス用途が支配的(オフィス/住宅比>1)となっている地域で、容積率 規制がオフィスと住宅の床構成を歪ませている=容積率充足率が 100%を超えている地区につ いては、用途別の容積率指定制度の導入によってオフィスの過剰供給と住宅の過少供給を是正 し、社会的効用を高める可能性がある。しかしながら、どういった地域に住宅立地のニーズがあ るかについては十分に分析できていないため、実際に用途別の容積率指定制度を活用する地区 はさらに限られることになる。

なお、都心部への住宅の立地は都心部の住宅の価格を下げ、郊外からの住み替えを促進するこ とに繋がり、ひいては電車通勤における混雑の緩和という正の外部性を持つものと考えられる43

この点については現在どこに居住している者がどこに通勤をしているのか、というデータを 用いた詳細な分析が必要となる。例えば港区、中央区などの大企業で働く人たちは郊外からの通 勤ではなく、単距離の電車交通・バス交通を利用するであろうし、総武線、常磐線、中央線など の郊外から都心部へ向かう路線の目的地については、明らかに郊外から通勤していると考えら れる。路線ごと、駅ごとのデータ等を用いて詳細な分析を行う必要があるが、総論としては都心 居住が混雑緩和により外部性を高める、ということは間違いないと言えよう。

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