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第4章 住宅・オフィスの延床面積が公示地価に及ぼす影響について

4.3 実証分析の方法

図 28 の通り、公示地価から半径 500m以内にあるオフィス・住宅の容積率を閾値(200%、

400%、600%、800%)で区切り、閾値未満の建築物と閾値以上の建築物の延床面積の増減が公 示地価に与える影響の違いを比較する。また、異なる閾値で区切った場合の差を比較し、その差 が特に大きい容積率の閾値を求める。加えてオフィスと住宅の違いを分析する。

容積率:中 容積率:高

容積率:低

容積率:中 容積率:高

容積率:低

比較

閾値

閾値

半径500m

半径500m

公示地価

公示地価

図 28 容積率と建物の形態の関係イメージ

32

4.3.2 使用するデータ

使用するデータは、国土数値情報(公示地価)、東京都の都市計画地理情報システム都市計画 レイヤー、東京都の区部土地利用現況調査建物 GIS データとする。

4.3.3 対象区域の選定

使用容積率が非常に大きい都心部から比較的使用容積率が低い地域までを幅広く含み、また 地域特性に応じた個別分析を行うことを想定して、東京都区部全域の公示地価を対象とする。ま た 2 時点(2017 年、2012 年)26のデータを用いたパネルデータ分析を行うため、当該区域内の 1520 ポイントの公示地価うち、2 時点で一致する 897 ポイントを対象とする(図 29)。

4.3.4 データの対象時点

地価に影響する当該地域固有の変数をコントロールするために、2017 年、2012 年の 2 時点の データにより、固定効果モデルを用いたパネルデータ分析を行う。

4.3.5 トリートメント変数について

オフィス・住宅の延床面積が公示地価に影響するという考えのもと、公示地価から一定距離

26 東京都区部土地利用現況調査建物 GIS データは 2011 年度末、2016 年度末のデータであるため、2012 年度、2017 年度の公示地価デ ータを用いて分析を行う。

図 29 分析対象とする公示地価ポイント

33

(500m以内)にあるオフィス・住宅について複数の使用容積率の閾値で分類し、閾値以上、閾 値未満で集計した延床面積をトリートメント変数として分析を行う。3.2 の図 18 で述べたとお り、容積率 400%を境に住宅/オフィス比が大きく変動することを踏まえて、その上下も加えて、

200%、400%、600%、800%を分類する閾値として設定した(図 30)。

4.3.6 データの処理について

使用容積率については、敷地単位で以下の式により求めている。

使用容積率(%)=現在立っている建築物の延床面積(㎡)/敷地面積(㎡)

現在立っている建物の延床面積については、2016 年度区部土地利用現況調査 GIS データの

「建築面積(㎡)」×「階数(地下階含む)」×「延床面積換算係数27」により計算した。なお、

東京都の区部土地利用現況調査建物 GIS データにおいては図 31 に示すように、土地利用が共通 であれば 1 つの土地利用として認識されるため、建築物と敷地が必ずしも1対1の関係となっ ておらず、1敷地内に複数の建築物が存在している扱いとなっていることもある。本稿において はデータの限界と考え、計算に当たっては、まとめられた土地を一つの敷地とみなし、複数の建 物が建っている場合は、敷地に含まれる全ての建築物の延床面積の合計と敷地面積から使用容 積率を求めている。

また、半径 500m以内のオフィス・住宅の延床面積については、当該建築物が立地する敷地の 重心が含まれる場合に該当するものとして取り扱っている。

また、道路や水面等宅地として利用されていない土地にあっても一部管理用建築物などが建 設されていることもあるが、計算対象から除外している。

27 建物によっては、下層部の建築面積は大きいが、上層部の建築面積が小さいものがあるため、建築面積と階数を単純に掛け合わせる と延床面積が実際よりも大きく出てしまうものがある。それを補正するために東京都が採用している係数であるが、調査員の目視によ って本係数を決定しているため、一定の誤差の存在は避けられないものと考える。

200%未満 200%以上 400%未満 400%以上 600%未満 600%以上 800%未満 800%以上

200%

400%

600%

800%

敷地の使用容積率

=Σ(建築面積×階数×床面積換算係数)/敷地面積 として算出

図 30 閾値による分類と床面積の集計イメージ

図 31 閾値による分類と床面積の集計イメージ

・敷地面積(㎡) ・建築物の建築面積(㎡)

・階数

・床面積換算係数

土地利用現況 建物現況

34

4.3.7 公示地価の属性等のコントロールの考え方

公示地価に影響する要素として表5に記載した事項等が考えられるが、このうち、公示地価か ら 500m以内にあるオフィス・住宅の延床面積は、それ自体が地価周辺の土地のポテンシャル

(用途地域や容積率規制の状況や業務・商業集積の状況)を反映した内生変数であるため、これ らを説明変数とする最小二乗法を用いた分析では内生性の排除が充分には出来ないと考えられ る。

そのため、地価物件の状況、地価物件周辺の状況、施設等からの距離については、2 時点で変 化しないことに加え、公示地価から 500m以内の土地のポテンシャルも 2 時点は変動しないも のと仮定して、2017 年、2012 年時点のデータを用いたパネルデータ分析を行うことでこれらの 内生性をコントロールすることとする。28

28 なお、当分析では公示地価の上昇がオフィス・住宅の延床面積の増加を招くという内生性を完全には除外できていないことから結果に は内生性バイアスがはたらく可能性がある。

分類 名称 単位

被説明変数 公示地価 円/㎡

地価周辺 β1 地価から半径500m以内の住宅の延床面積 ㎡ β2 地価から半径500m以内の住宅の延床面積 ㎡

地価物件の状況

γ1 指定容積率 %

γ2 前面道路幅員 m

γ3 地積 ㎡

γ4 敷地形状ダミー(整形:1、不整形・台形:0)

γ5 奥行比(対象地の奥行÷標準地の奥行)

γ6 間口比(対象地の間口÷標準地の間口)

γ7 住宅利用ダミー(利用状況に住宅あり:1、なし:0)

γ8 事務所利用ダミー(利用状況に事務所あり:1、なし:0)

地価物件周辺の状況 δ1

主要5区ダミー

δ2 千代田区 中央区

δ3 港区

δ4 渋谷区

δ5 新宿区

δ6

用途地域ダミー

第一種低層住居専用地域

δ7 第二種低層住居専用地域

δ8 第一種中高層住居専用地域

δ9 第二種中高層住居専用地域

δ10 第一種住居地域

δ11 第二種住居地域

δ12 準住居地域

δ13 近隣商業地域

δ14 商業地域

δ15 準工業地域

δ16 工業地域

δ17 工業専用地域

δ18 鉄道敷近接ダミー(鉄道敷100m内外)

施設等からの距離 ε1 都市公園からの距離 m

ε2 都心4駅(東京、池袋、新宿、渋谷)からの距離 m

ε3 最寄り駅からの距離 m

表 5 公示地価に影響する要素

35

4.3.8 推定モデル

推定に当たっては、①高容積建築物の床面積の増加が地価に与える影響について、②閾低容積 建築物の床面積と高容積建築物の床面積の地価に与える影響の差について、③公示地価から 50 m以内の近接する物件の影響(高さなど)を除外した場合について、④区による違いについて、

を明らかにするため、4 通りの推定モデルを用いて分析を行う。

(1)推定モデル①<高容積建築物の床面積の増加が地価に与える影響について>

ln(公示地価)= 定数項

+β1(半径 500m以内の閾値以上のオフィス(or 住宅)の延床面積(万㎡))

+β2(半径 500m以内の住宅(or オフィス)の延床面積(万㎡))+ ω ※ωは誤差項である。

Variable Obs Mean Std. Dev. Min Max

ID 1,794 449 259.0136 1 897

Log(公示地価) 1,794 13.47376 0.893764 12.04355 17.73748

年ダミー 1,794 2016.5 2.500697 2014 2019

容積率200%以上の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 27.82342 18.80237 0 147.7376 容積率400%以上の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 15.46847 15.60397 0 136.1731 容積率600%以上の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 8.671118 11.41077 0 107.8449 容積率800%以上の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 4.738853 8.339387 0 96.71967

住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 53.50706 19.48622 0 150.0052

容積率200%以上のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 27.22724 50.94347 0 456.9014 容積率400%以上のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 23.74831 49.22448 0 455.5175 容積率600%以上のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 17.697 42.75491 0 435.1731 容積率800%以上のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 10.51459 31.62875 0 424.9962 オフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 28.19215 51.1314 0.045572 473.1012

用途 閾値 決定係数 説明変数 Coef. Std.Err. t P>|t| [95% Conf.Interval]

オフィス

200% 0.4087

β1 容積率200%以上のオフィスの延床面積(万㎡) 0.0009683 0.0005125 1.89 0.059 -0.0000376 0.0019741

β2 住宅の延床面積(万㎡) 0.0166923 0.000677 24.66 0.000 0.0153636 0.018021

定数項 12.55424 0.0381393 329.17 0.000 12.47939 12.6291

400% 0.4091

β1 容積率400%以上のオフィスの延床面積(万㎡) 0.0010523 0.0005118 2.06 0.040 0.000478 0.0020568

β2 住宅の延床面積(万㎡) 0.0166398 0.0006784 23.53 0.000 0.0153085 0.0179712

定数項 12.55842 0.0372936 336.74 0.000 12.48523 12.63162

600% 0.4198

β1 容積率600%以上のオフィスの延床面積(万㎡) 0.0022339 0.0004893 4.57 0.000 0.0012736 0.0031942

β2 住宅の延床面積(万㎡) 00163944 0.0006744 24.31 0.000 0.150708 0.017718

定数項 12.55701 0.0361336 347.52 0.000 122.4861 12.62793

800% 0.4376

β1 容積率800%以上のオフィスの延床面積(万㎡) 0.0032466 0.0004603 7.05 0.000 0.0023431 0.00425

β2 住宅の延床面積(万㎡) 0.016273 0.0006629 24.55 0.000 0.014972 0.027574

定数項 12.5689 0.0353367 355.69 0.000 12.49955 12.63826

住宅

200% 0.3588

β1 容積率200%以上の住宅の延床面積(万㎡) 0.0150151 0.0006763 22.20 0.000 0.0136877 0.0163424

β2 オフィスの延床面積(万㎡) 0.0008681 0.0004877 1.78 0.075 -0.0000891 0.0018252

定数項 13.03152 0.022852 570.26 0.000 12.98667 13.07637

400% 0.2467

β1 容積率400%以上の住宅の延床面積(万㎡) 0.0139371 0.0008237 16.92 0.000 0.123204 0.0155538

β2 オフィスの延床面積(万㎡) 0.0010245 0.0005284 1.94 0.053 -0.0000127 0.0020616

定数項 13.22929 0.0193232 684.63 0.000 13.19137 13.26722

600% 0.1848

β1 容積率600%以上の住宅の延床面積(万㎡) 0.0142924 0.0010196 14.02 0.000 0.0122914 0.162935

β2 オフィスの延床面積(万㎡) 0.0010749 0.0005497 1.96 0.051 -0.00000399 0.0021539

定数項 13.31953 0.0176644 754.03 0.000 13.28486 13.35419

800% 0.1131

β1 容積率800%以上の住宅の延床面積(万㎡) 0.0122762 0.0011797 10.41 0.000 0.0099609 0.0145916

β2 オフィスの延床面積(万㎡) 0.0011508 0.0005734 2.01 0.045 0.0000255 0.0022761

定数項 13.38314 0.0170451 785.16 0.000 13.34969 13.4166

表 6 推定モデル① 基本統計量

表 7 推定モデル① 推定結果

36

(2)推定モデル②<閾低容積建築物の床面積と高容積建築物の床面積の地価に与える影響の 差について>

ln(公示地価)= 定数項

+β1(半径 500m以内の閾値未満のオフィス(or 住宅)延床面積(万㎡))

+β2(半径 500m以内の閾値以上のオフィス(or 住宅)延床面積(万㎡))

+β3(半径 500m以内の住宅(or オフィス)の延床面積)+ ω ※ωは誤差項である。

Variable Obs Mean Std. Dev. Min Max

ID 1,794 449 259.0136 1 897

Log(公示地価) 1,794 13.47376 0.893764 12.04355 17.73748

年ダミー 1,794 2016.5 2.500697 2014 2019

容積率200%未満の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 25.68365 14.84074 0 60.44528 容積率200%以上の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 27.82342 18.80237 0 147.7376 容積率400%未満の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 38.0386 18.11383 0 84.75249 容積率400%以上の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 15.46847 15.60397 0 136.1731 容積率600%未満の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 44.83595 19.02987 0 100.1039 容積率600%以上の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 8.671118 11.41077 0 107.8449 容積率800%未満の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 48.76821 19.41086 0 102.3392 容積率800%以上の住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 4.738853 8.339387 0 96.71967

住宅の延床面積の合計(万㎡) 1,794 53.50706 19.48622 0 150.0052

容積率200%未満のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 0.964915 0.967158 0 16.21186 容積率200%以上のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 27.22724 50.94347 0 456.9014 容積率400%未満のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 4.443845 4.40085 0 33.37303 容積率400%以上のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 23.74831 49.22448 0 455.5175 容積率600%未満のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 10.49515 13.55696 0 86.16822 容積率600%以上のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 17.697 42.75491 0 435.1731 容積率800%未満のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 17.67756 26.611 0.045572 147.7345 容積率800%以上のオフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 10.51459 31.62875 0 424.9962 オフィスの延床面積の合計(万㎡) 1,794 28.19215 51.1314 0.045572 473.1012

用途 閾値 決定係数 説明変数 Coef. Std.Err. t P>|t| [95% Conf.Interval]

オフィス

200% 0.4092

β1 容積率200%未満のオフィスの延床面積(万㎡) -0.0043613 0.0048575 -0.90 0.370 -0.0138947 0.0051721 β2 容積率200%以上のオフィスの延床面積(万㎡) 0.0013572 0.0006711 2.02 0.043 0.0000401 0.0026743

β3 住宅の延床面積(万㎡) 0.166419 0.0006794 24.50 0.000 0.0153085 0.0179753

定数項 12.55056 0.383635 327.15 0.000 12.47527 12.62585

400% 0.4098

β1 容積率400%未満のオフィスの延床面積(万㎡) -0.0022688 0.0022215 -1.02 0.307 -0.0066287 0.0020912 β2 容積率400%以上のオフィスの延床面積(万㎡) 0.0012081 0.0005341 2.26 0.024 0.0001599 0.0022563

β3 住宅の延床面積(万㎡) 0.0165102 0.0006901 23.92 0.000 0.0151557 0.0178646

定数項 12.57174 0.039508 318.21 0.000 12.4942 12.64928

600% 0.4562

β1 容積率600%未満のオフィスの延床面積(万㎡) -0.0104541 0.0013507 -7.74 0.000 -0.0131049 -0.0078033 β2 容積率600%以上のオフィスの延床面積(万㎡) 0.0021783 0.000474 4.60 0.000 0.0012479 0.0031086

β3 住宅の延床面積(万㎡) 0.0153863 0.0006661 23.10 0.000 0.014079 0.0166936

定数項 12.72166 0.0409571 310.61 0.000 12.64127 12.80204

800% 0.5717

β1 容積率800%未満のオフィスの延床面積(万㎡) -0.0202371 0.0012092 -16.74 0.000 -0.0226104 -0.0178638 β2 容積率800%以上のオフィスの延床面積(万㎡) 0.0022638 0.0004062 5.57 0.000 0.0014666 0.003061

β3 住宅の延床面積(万㎡) 0.0147363 0.000586 25.15 0.000 0.0135862 0.0158864

定数項 13.01921 0.0409375 318.03 0.000 12.93886 13.09955

表 8 推定モデル② 基本統計量

表 9 推定モデル② 推定結果(1)

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