㈠ 特定外国子会社等に係る所得の課 税の特例(外国子会社合算税制)の
2 改正の内容
⑴ 外国関係会社の租税負担割合の基準
現在、OECDの「税源浸食と利益移転(BEPS)
プロジェクト」において外国子会社合算税制に 関する議論が進んでいるところですが、現下の 状況を見ると、英国で活動する子会社に関し、
英国法制上の義務に沿って業務を二つの法人に 分けて行う結果、各々の法人単位では適用除外 基準を満たさないと判定される可能性のある事 例が把握されており、英国が2015年度から法人 税率を20%(現行21%)に引き下げる結果、本 税制が適用される可能性がありました。
わが国としては、BEPSプロジェクトの勧告 を踏まえ、今後、本税制の見直しについて検討 が必要と考えられることから、上記のような事 例について、適用除外基準の見直しによる対応 は控えつつ、本税制が適用されないようにする
ため、特定外国子会社等の判定における外国関 係会社の租税負担割合の基準を「20%以下」か ら「20%未満」に変更することとされました
(措令39の14①二)。
⑵ 統括会社等に係る適用除外基準の見直し
① 事業基準における「被統括会社」の範囲 特定外国子会社等の行う主たる事業が株式 等の保有である場合には、適用除外基準のひ とつである事業基準を満たさないこととされ ていますが、株式等の保有を主たる事業とす る特定外国子会社等のうち、被統括会社の株 式等の保有を行う一定の統括会社に該当する ものについては、事業基準でいう株式等の保 有を主たる事業とする特定外国会社等に該当 しないこととされています (旧措法66の 6
③)。この「被統括会社」とは、特定外国子 会社等の有する直接持分が25%以上である等 の要件を満たす外国法人とされ(旧措法66の 6 ③、旧措令39の17②)、被統括会社に該当 し得るのは外国法人に限られていましたが、
買収した外国企業グループの中に日本企業が 含まれている場合などには、その組織形態を そのまま活用することが事業上効率的である ケースも考えられることから、今回の改正で は、内国法人も被統括会社に該当し得ること とされました。他方で、内国法人である被統 括会社については、特定外国子会社等にわが 国の課税ベースを移転することが可能であり、
かつ、所得移転を受けた特定外国子会社等に ついて本税制の適用対象から除外すると、わ が国の税源浸食リスクが高まることから、そ のような所得移転に対し移転価格税制を発動 するための一定の持株割合要件が措置されま した。
具体的には、被統括会社は、次のイからハ までに該当する法人で、その法人の発行済株 式等のうちにその法人に対して統括業務を行 う特定外国子会社等の有するその法人の株式 等の占める割合及びその法人の議決権の総数
のうちにその特定外国子会社等の有するその 法人の議決権の数の占める割合のいずれもが 25%(その法人が内国法人である場合には、
50%)以上であり、かつ、本店所在地国に事 業を行うに必要と認められるその事業に従事 する者を有するものとされました(措令39の 17②)。
イ 特定外国子会社等、その特定外国子会社 等の発行済株式等の10%以上を直接及び間 接に有する内国法人及びその内国法人とそ の特定外国子会社等との間に株式等の所有 を通じて介在する外国法人(ロ及びハにお いて「判定株主等」といいます。)が法人 を支配している場合におけるその法人(ロ 及びハにおいて「子会社」といいます。)
ロ 判定株主等及び子会社が法人を支配して いる場合におけるその法人(ハにおいて
「孫会社」といいます。)
ハ 判定株主等並びに子会社及び孫会社が法 人を支配している場合におけるその法人
② 事業基準における「統括会社」の範囲 内国法人であっても被統括会社に該当し得 ることとされたことに伴い、事業基準におけ る統括会社の「 2 以上の被統括会社に対して 統括業務を行っていること」とする要件につ いても見直しが行われました。
具体的には、統括会社は、一の内国法人に よってその発行済株式等の全部を直接又は間 接に保有されている特定外国子会社等で、次 の要件を満たすものとされました(措令39の 17④)。
イ 複数の被統括会社(外国法人である 2 以 上の被統括会社を含む場合に限ります。)
に対して統括業務を行っていること。
ロ 本店所在地国に統括業務に係る事務所、
店舗、工場その他の固定施設及び統括業務 を行うに必要と認められるその統括業務に 従事する者を有していること。
③ 事業基準における「事業持株会社」の要件 特定外国子会社等が事業持株会社(株式等
の保有を主たる事業とする特定外国子会社等 のうち、その特定外国子会社等が統括業務を 行う場合における被統括会社の株式等の保有 を行う統括会社(統括会社の事業年度終了の 時において有する被統括会社の株式等の帳簿 価額の合計額が当該事業年度終了の時におい て有する株式等の帳簿価額の合計額の50%に 相当する金額を超える場合におけるその統括 会社に限ります。)をいいます。)に該当する 場合には、適用除外基準のひとつである事業 基準の判定上、株式等の保有を主たる事業と する特定外国子会社等から除外することとさ れています(旧措法66の 6 ③、旧措令39の17
④)。
今回の改正において、内国法人であっても 被統括会社に該当し得ることとされたことに 伴い、「事業持株会社」の対象を主として海 外子会社を統括する統括会社とする観点から、
事業持株会社の要件に、次のイ又はロの割合 のいずれかが50%を超えていることとする要 件が追加されました(措令39の17④)。
イ 統括会社の有する全ての外国法人である 被統括会社の株式等の帳簿価額の合計額の 当該統括会社の有する全ての被統括会社の 株式等の帳簿価額の合計額に対する割合 ロ 統括会社の全ての外国法人である被統括
会社に対して行う統括業務に係る対価の額 の合計額の当該統括会社の全ての被統括会 社に対して行う統括業務に係る対価の額の 合計額に対する割合
④ 非関連者基準
特定外国子会社等が卸売業を主たる事業と する統括会社に該当する場合には、その特定 外国子会社等に係る被統括会社を関連者の範 囲から除外して判定する特例が措置されてい ますが、今回の改正においては、特定外国子 会社等と内国法人である被統括会社が行う取 引については、わが国の課税ベースの海外移 転リスクがあることから、本特例の対象外と されました(措令39の17⑩)。
⑶ 適用除外基準の適用に関する手続要件 会社単位の合算課税制度に係る適用除外基準 及び資産性所得の合算課税制度に係る適用除外 基準は、確定申告書に適用除外に該当する旨を 記載した書面を添付し、かつ、適用除外に該当 することを明らかにする資料等を保存している 場合に限り適用することとされています(旧措 法66の 6 ⑦、旧措令39の17の 2 )が、外国子 会社が適用除外に該当する旨の情報を適時に入 手することが困難である場合もあり得ることを 踏まえ、適用除外基準の適用手続に係る宥恕規 定が措置されました。すなわち、適用除外に該 当する旨を記載した書面の添付がない確定申告 書の提出があり、又は適用除外に該当すること を明らかにする資料等を保存していない場合に おいても、税務署長がその添付又は保存がなか ったことにつきやむを得ない事情があると認め るときは、その書面及び資料等の提出があった 場合に限り、適用除外基準を適用することがで
きることとされました(措法66の 6 ⑧)。
また、特定外国子会社等が統括会社に該当す ることにより会社単位の合算課税制度の適用除 外基準の適用を受けようとする場合には、これ らに加え、特定外国子会社等が統括会社に該当 することを明らかにするために必要な統括業務 の内容を記載した書類を確定申告書に添付し、
かつ、統括業務に係る契約に係る書類の写しを 保存しなければならないこととされています
(措法66の 6 ⑨、措令39の17の 2 、措規22の 11④⑤)。この統括業務の内容を記載した書類 の添付及び統括業務に係る契約に係る書類の写 しの保存についても、宥恕規定の対象となりま す。
⑷ 外国子会社配当益金不算入制度の改正に伴う 見直し
① 基準所得金額の計算
特定外国子会社等が持株割合25%以上等の
≪統括会社、事業持株会社及び物流統括会社の要件≫
日本本社
軽課税国
その他の国 日本
(注)二重下線部分が改正事項 100%
50% 以上
25% 以上 25% 以上
【措令39の17②】
特定外国子会社等
(統括会社)
(内国法人)X 社
A 社
(被統括会社)
CFC
一の内国法人に100% 保有されている 複数の被統括会社(2 以上の外国被統括会社を含 む場合に限る)に対して統括業務を行っている 本店所在地国に事務所、従業員等を有している
主たる事業が株式保有業
被統括会社株式簿価(内法・外法)/全保有株式簿価 > 50%
被統括会社株式簿価(外法)/被統括会社株式簿価(内法・外法)
> 50% 又は
統括業務対価(外法)/統括業務対価(内法・外法) > 50%
主たる事業が卸売業
(注)内国被統括会社との取引を非関連取引とする特例は設けない 統括会社
【措令39 の17④】 事業持株会社【措令39の17④】
(事業基準の判定上、株式保有業に該当しない)
物流統括会社【措令39の17⑩】
(非関連者基準の判定上、関連者取引に該当しない)
B 社
(被統括会社)
【改正事項】
一定の要件を満たす内国法人 を被統括会社の範囲に加える
「被統括会社」及び「統括会社」の範囲等の見直し