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4. 周辺視野を活用した情報提示方法の設計

4.3. ドライバの状況認知過程のモデル化

4.3.5. 提案した認知過程モデルの検証

本節では,4.3.2において提案したドライバの状況認知過程のモデルの妥当性を検証する ための実験とその結果について示す.

実験は,運転支援システムのインターフェース・デザインの様々な要因が,ドライバ・

システム間要因に与える影響について, 4.3.3,4.3.4 で示した関係が成立する事を検証す るために実施した.ここで,インターフェース・デザインと情報提示の認知負荷との関係 については,情報量が少ないより多い場合,情報提示が行われてから理解する時間が長い より短い場合,注視を必要としない場合よりする場合の方が,認知負荷が高まる事は容易 に想定が可能である.そこで,本節では,特に,インターフェース・デザインと.ドライ バの運転支援システムに対する依存度との関係に着目して実験を行った.

本実験の目的は,インターフェース・デザインの中で,システムからドライバに提示さ れる情報量と依存度との関係及び,モダリティ(中心視で認知するか,周辺視で認知する か)と依存度との関係について評価を行う事とした.

能力,経験,訓練など 自動化

システムの複雑さ

長期記憶 自発性 作業目的,

予想・予測

ドライバ要因

システム要因

情報処理メカニズム

ドライバ・

システム間要因

システムの能力

インターフェース・デザイン

情報提示モダリティ

(視覚[中心視/周辺視]・聴覚)

タイミング 情報量

信頼性 緊急性

システムに対する 依存度 情報提示の

認知負荷

運転時の意思決定モデル

外部環境 状況認知

(ドライバ主体) 意思決定 行動

周辺視

低 ドライバの状況認知を促進

73 4.3.5.1. 実験シナリオ

実験参加者は,片側一車線の直線路を40km/hで走行する.走行中,100m間隔で見通し の悪い交差点を通過し,1走行約90秒のコースの中で,最大10か所の交差点を通過する.

走行中いずれかの交差点で,交差車両または歩行者が,1走行につき1回のみ,右または左 からランダムに出現し,衝突予想地点の 4 秒前に交差車両または歩行者に関する情報がド ライバに提示される.ドライバは情報提示に従い,ブレーキ操作によって回避行動をとる.

実験参加者の予期を防ぐため,歩行者は交差点の左右いずれか,また,手前もしくは奥 側のいずれかから出現し,5km/hまたは10km/hのいずれかの速度で交差点に進入する(図 4-11左).一方,交差車両は交差点の左右いずれかから,一時停止を無視して20km/hで 交差点に進入する(図 4-11右).

また,実環境における運転への集中を再現するために,ドライバの前方に一桁の数字を 提示し,直前の数字と現在の数字を合算した数字の一桁目を発声する1-back課題を課した.

図 4-11 歩行者・車両の出現地点

4.3.5.2. 実験参加者

表 4-1 に,実験参加者の概要を示す.運転免許を所有し,定期的に運転を行っている男 性被験者10名が実験に参加した.実験参加者には,実験の一週間前及び実験の直前にイン フォームドコンセントを得た.また,実験の実施にあたり香川大学の研究倫理委員会から 実施の了解を得た.

pedestrian

subject vehicle obstacle

subject vehicle

crossing vehicle

obstacle

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表 4-1 実験参加者

項目 条件

実験者数 6名(男性)

年齢 22.1歳(標準偏差1.0歳)

その他の条件 運転免許を所有し,定期的に運転を行っている

4.3.5.3. 情報提示仕様

本実験では,情報量,情報提示のモダリティを変更した4種類の情報提示を用いた.表 4-2 に情報提示仕様を示す.

表 4-2 情報提示仕様 情報量

少 中 多

モ ダ リテ ィ

中 心 視

情報提示①

(中心視×情報量:少)

※提示画像

情報提示②

(中心視×情報量:中)

※提示画像(右方向)

情報提示③

(中心視×情報量:多)

※提示画像(右方向)

周 辺視

情報提示④

(周辺視×情報量:中)

※提示画像 ―

注視して認知する事を想定した情報提示に関しては,交差点付近に何らかの移動体が接 近する事を示す情報量:少(情報提示①),移動体の接近方向のみを示す情報量:中(情

交差点注意 交差点注意 交差点注意

交差点注意

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報提示②),移動体の接近方向とその種別を示す情報量:多(情報提示③)の 3 条件とし た.情報提示位置については,3章の情報提示位置(表 3-1の中心視情報)と同等とした.

一方,移動体の接近方向のみを示す情報量:中の条件については,周辺視野への情報提 示によっても情報を伝達することが可能と考え,周辺視で認知する事を想定した情報提示

(情報提示④)を,さらに設けた.情報提示位置については,3章の情報提示位置(表 3-1 の周辺視情報)と同等とした.

本実験では,全ての条件で警報や注意喚起音等の聴覚情報の提示は行わず,視覚的な情 報提示のみを行った.

4.3.5.4. 計測指標

情報提示①~④それぞれにおいて,1走行約90秒のコースを10回走行し,10回の走行 後,情報提示に対する依存度を主観評価により計測した.主観評価は,Visual Analog Scale(VAS)を用いて,「0:情報提示に全く依存しなかった」から,「10:情報提示に 非常に依存した」として回答を取得した.

4.3.5.5. 実験結果

図 4-12,図 4-13に実験結果を示す.いずれの図も,情報提示に対する依存度について,

6名の実験参加者の平均値と標準偏差を示したものである.

図 4-12では,中心視で認知する情報を提示した際の,情報量とシステムに対する依存度 との関係を示す.ドライバに対して提示される情報の量が増えるほど,システムに対する 依存度が増加していることが分かる.交差点接近時に,移動体の接近だけでなく,接近方 向と種別についても提示することで,ドライバがシステムの検知性能を高く見積もり,結 果としてシステムに大きく依存しながら,交差点を通過したと考えられる.

図 4-13では,情報量:中の条件において,情報提示のモダリティ(中心視/周辺視)と,

システムに対する依存度との関係を示す.同じ情報量であっても,周辺視で認知する情報 提示の方が,中心視で認知する情報提示より,システムに対する依存度が低くなっている ことが分かる.周辺視で認知可能な情報として提示されることで,ドライバはシステムの 不確実性を直感的に理解し,結果としてシステムに対する依存度が低下したと考えられる.

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図 4-12 情報量とシステムに対する依存度との関係

図 4-13 情報提示のモダリティとシステムに対する依存度との関係 0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

D ep en d en ce o n t h e Sy st em

Information Presentation①

Information Presentation②

Information Presentation③

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

D ep en d en ce o n t h e Sy st em

Information Presentation②

Information Presentation④

77 4.3.5.6. 検証結果

4.3.3では,中心視で認知する事を想定した形態で情報提示を行う場合,①情報提示のモ

ダリティとして中心視を用いる,②周辺視で認知する事を想定した形態よりも情報量が多 くなる,という 2 点から,運転支援システムに対するドライバの依存度が高まる,という 仮説を示した.また,4.3.4では,周辺視で認知する事を想定した形態で情報提示を行う場 合,①情報提示のモダリティとして周辺視を用いる,②中心視で認知する事を想定した形 態よりも情報量が少なくなる,という 2 点から,運転支援システムに対するドライバの依 存度が低くなる,という仮説を示した.

一方,本節での検証実験を通じて,運転支援システムからドライバに提示される情報量 が多い程,運転支援システムに対する依存度は高まることが分かった.また,運転支援シ ステムからドライバに提示される情報が,ドライバが周辺視で認知する事を想定した形態 よりも,中心視で認知する事を想定した形態で提示する場合の方が, 運転支援システムに 対する依存が高まることが分かった.

以上より,本項の検証実験を通じて,4.3.3,4.3.4で示した,インターフェース・デザイ ンと,システムに対する依存度との関係について検証を行うことができたと考える.

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