3. 周辺視野への情報提示の基本特性の分析
3.3. DS 実験
3.3.2. 情報提示仕様
3.3.2.1. ドライバへの情報提示
本実験では，右折先の歩行者の存在をドライバに伝えるために，一般的な警報（中心視 で見ることを想定した情報提示と音による警報）と，周辺視で見ることを想定した情報提 示の 2 種類の情報提示を用いて実験を行った．中心視，周辺視の特性を踏まえて構築した 評価環境を図 3-8に示す．運転中のドライバの中心視野に近い領域に，HUDを想定した7 インチの液晶ディスプレイを設置し，中心視で見ることを想定した情報提示を行った．ま た，周辺視の領域として，ハンドルの左右に周辺視で見ることを想定した情報提示用のデ ィスプレイを設置した．実験では，図 3-8の評価環境を用いて，表 3-1に示す仕様で，情 報提示を行った．
中心視情報としては，HUDに対して歩行者のアイコンを示す表示を行った．また，ディ スプレイへの表示と同時に，危険の存在を通知するビープ音（ピピッ）を提示した．
一方，周辺視情報としては，先行研究 [28]を参考に，視野角3度の黄色の円形を1Hzで 点滅させた．この際，情報提示への注視や焦点調節を誘発しないように，表示のエッジの 無いパタンを用い，1Hz で点滅する際には輝度が急峻に変化せず，連続的に変化するよう に配慮し，認知課題を遂行中の右折時においても，被験者が情報を注視することなく認知 可能であることを確認した上で，実験を行った．
subject vehicle
oncoming vehicle
pedestrian 16km/h 40km/h
20～40m
Large-sized vehicle
oncoming vehicle
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本実験では，警報と表示を用いた一般的な警報と，周辺視による視覚的な表示のみの情 報提示の特性の違いについて分析することを目的とするため，周辺視による情報提示では，
警報や注意喚起音などの聴覚情報の提示は行わなかった．
ドライバに対しては，前方のディスプレイは中心視で確認ように教示し，ハンドル横に 設置したディスプレイについては，視線を動かさずに周辺視で認知するように教示した．
また，周辺視における情報に関しては，右側のディスプレイに情報提示があった場合には，
右折先に何らかの危険対象が存在することを示す，という情報提示の意味合いを，予めド ライバに教示した．また，いずれの情報提示も，ドライバの発進と同時にドライバに提示 し，右折完了または歩行者との衝突が発生したタイミングで提示を止めた．
図 3-8 評価環境
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表 3-1 情報提示仕様 本研究における
呼称
中心視情報
（比較対象）
周辺視情報
（評価対象）
表示の様子
注意喚起音 あり（ビープ音） なし
情報に含まれる 内容
リスクの有無，種別（歩行者） リスクの有無，存在方向
提示位置 有効視野領域
（HUD を想定）
周辺視野領域
（視野角：左右 25 度，下 25 度）
サイズ 7 インチディスプレイ（9×15×cm） 直径 4cm のマーカ（視野角 3°）
表示パタン ― 1Hz で点滅
ドライバへの 教示
注視して情報を確認 注視せずに，周辺視で確認
3.3.2.2. 情報提示時の注視行動
HUD による情報提示，周辺視野への情報提示を行った場合の注視行動を確認するため，
視線計測装置（NAC EMR-8）を用いて，実験中の被験者の注視点の解析を行った．
図 3-9は，交差点右折時，右折先の歩行者の情報を，HUDへのアイコン表示を用いて提 示した際の，被験者の注視点の時系列変化を可視化したものである．注視点は，対向車両 とHUD付近に集中しており，被験者は，HUDに表示される歩行者の情報を注視した上で，
右折を行っていることが分かる．
一方，図 3-10は，周辺視野に配置されたディスプレイに，注視しなくても認知可能な周 辺視情報を提示した際の，被験者の注視点の時系列変化を可視化したものである．注視点 は，図 3-9 と同様に対向車両に集中しているものの，周辺視野領域に配置されたディスプ レイに提示されている，周辺視情報への注視は確認されなかった．これより，被験者は周 辺視情報を，注視することなく周辺視により認識していることが分かった．
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図 3-9 歩行者情報をHUDに表示した際の注視点分析
図 3-10 歩行者情報を周辺視野に配置されたディスプレイに表示した際の注視点分析
Central vision information Oncoming
vehicle Central vision
information
Central vision information
Peripheral vision information Oncoming
vehicle
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