最後に,実世界インタラクション記録の有効利用を目的として提案してきた各手法の応 用可能性について述べる.本論文では,これまでに述べてきたように,
• 不特定多数の人物による,会話を中心としたインタラクションの記録と利用性の 向上
• 実世界インタラクション記録に対してより豊かな表現を伴う利用
という大別して2種類の基礎的手法を提案した.これらの手法を組み合わせることで,
より社会的インタラクションに含まれる知識の再利用を促すことができるものと考えられ る*1.
会議支援への応用
例えば,会議では解決すべき課題を説明する際にプレゼンテーションファイルなどの資 料が用いられることが一般的である.資料に対してAware Posterシステムで用いたタグ 付けインタフェースをノートPC上に実装し,発表者のみならず聴衆からも同様のタグ機 能を用いることで,発話内容の分類が容易となろう.またその際に不在であった人物によ
*1ただし,公的な場における人物の撮影にはプライバシに関して議論の余地がある.そのため,インタラク ションの収録対象としてはオフィスなどの,収録される側と利用者とが同一組織にあることが望ましいで あろう.例えば,組織において日常的に多人数インタラクションが観察されるインフォーマルスペースや 従来の会議への適用などが挙げられる.
る意見の集約に,Aware Topicsによるコメント機能が利用できる.同時に,展示会場より も周囲の雑音に比較的強いという利点を活かし,機械認識によるセグメンテーションと併 用して,記録へのアクセシビリティを向上することも可能であろう.そのようにしてセグ メントされたシーンに対してCinematized Reality システムを用いることで,従来よりも 豊かな表現形式を用いて映像議事録を作成し,また配布することが考えられる.
インタラクション分析への応用
実世界におけるインタラクションを分析するための試みとして”インタラクション・
コーパス”の構築が試みられていることは1.2.3節にて述べたが,インタラクションの分 析を目的とした収録と分析の際に自由視点映像を用いるという手法が考えられる.
これまでに実世界インタラクションの分析において,音声やセンシングデータを映像を 時間的にリンクさせた分析ツールが提案されているが,用いられている多視点映像は配置 するカメラの位置に依存する.会話場におけるインタラクションの様子を概観するために は俯瞰的な位置へのカメラ配置が必要となり,同時に,会話など2〜3名による詳細なイ ンタラクションを記録する際には「会話」という場面における詳細なモーダルの記録に適 したカメラ配置が必要であろう.詳細なインタラクションの記録の際には,分析者の望む カメラの画角に撮影対象が収まるように行動してもらうことが望ましい.しかしながら,
実際のポスター発表のように,動的なインタラクションの場では参加者の行動が予測しに くい上,実際にある位置にカメラを配置しても参加者が撮影位置に収まってくれるとは限 らない.
このような問題に対してCinematized Realityシステムの利用が考えられる.撮影対象 の位置や発話状況のセンシング結果,あるいはポスタのような対象物を介したインタラク ションにおいては対象物を通じたセンシング結果に基づいてカメラワークを適用すること が可能であろう.これに加えて,自由視点映像本来のメリットである視点の自由移動機能 による微調整も可能であり,分析時の利便性を高めることができよう.さらには,あるイ ンタラクションに対して人手で付与されたカメラワークを蓄積していくことで,特定のイ ンタラクションに応じた自動的なカメラワークの付与も考えられるなど,インタラクショ ン分析における映像閲覧ツールとしての応用が期待できる.
以上の内容を一例として,今後はより日常の様々な場面における社会的インタラクショ ンの記録を用いた知的活動支援システムについて取り組んでいきたいと考えている.
謝辞
博士論文をまとめるにあたり,非常に多くの方々に多大なるご支援を賜りました.この 場を借りてお世話になった方々にお礼を申し上げたいと存じます.
主指導教官である北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 國藤進教授には,6年 もの長い間にわたり,研究に関して様々なご指導およびご支援をいただきました.深く感 謝しております.
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学教育研究センター 西本一志教授には,副テーマ 指導教官をご担当していただきました.西本先生には研究に関する有益な議論の時間を割 いていただくとともに,非常に多くの助言を頂戴いたしました.西本先生のご指導がなけ れば本論文は日の目をみることがなかったものと存じます.篤く御礼申し上げます.ま た,本論文の審査員も務めていただきました.重ねて御礼申し上げます.
和歌山大学 システム工学部 デザイン情報学科の宗森純教授,北陸先端科学技術大学院 大学 知識科学研究科の藤波努准教授,由井薗隆也准教授には,本論文の審査員を務めてい ただきました.審査員の方々にはご多忙の中お時間を割いて頂いた上,貴重なコメントを いただきました.深く感謝いたします.
本論文の第4章は,株式会社 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)での学外実習期間に おこなったものです.本研究の機会を与えてくださった畚野信義博士,萩田紀博博士に深 く感謝いたします
ATR知能ロボティクス研究所の小暮潔博士(現ATR知識科学研究所長),北原格博士
(現 筑波大学 システム情報工学研究科 准教授),坂本竜基博士(現 和歌山大学 システム 工学部 講師)には,非常に多くのご指導とご配慮を賜りました.皆様の益々のご健勝とご 活躍を願い,感謝の言葉と代えさせていただきます.特に,國藤研究室OBでもある坂本 博士には,数多くの実践を通じて研究の進め方についてご教示いただきました.坂本博士
による指導は,研究者としての基礎を築く上で不可欠なものであったと思います.重ねて 御礼申し上げます.
知識科学研究科 知識科学専攻・知識メディア領域専攻の三浦元喜助教,羽山徹彩助教に は,貴重な研究時間を割いて御討論や御助言をしていただきました.まことに有難うござ います.羽山先生には,研究活動だけでなく学生生活においてもお世話になったことと存 じます.心から感謝致しております.
河原塚有希彦氏,桑村宏幸氏,真隅暁氏をはじめとする知識科学研究科OBならびに在 学生の皆様には,常日頃から研究に関する議論の相手や被験者としてのご協力に加え,学 生生活全般においても大変お世話になりました.皆様方の更なるご活躍をお祈りするとと もに,感謝の言葉を申し上げます.
佐賀大学総務部の野口尊子様には,在職時から今日に至るまでの長い間,様々な励まし をいただきました.心より感謝いたしております.
末筆になりますが,学位取得にご理解をいただき,精神的・経済的にご支援いただいた 母と2人の兄に感謝の意を表しつつ,本論文の結びとさせていただきます.
参考文献
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