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4.5.4 アンケート調査の方針

アンケートの作成については,いずれの学生も映像演出に関する体系的な教育は受けて いないため,個別のカメラワークに対する質問や,フレーミングなどの専門用語を用い ずに「カメラの移動」と「カメラの切り替え」といった一般的な表現を用いて質問を作成 した.

Cinematized Realityシステムは,自由視点映像を対象としたカメラ演出をおこなう上

での,基礎的なカメラ位置決定手法を目的としている.そのため,今回は単純に「カメラ ワークがある」「カメラワークがない」という2種類の映像に対する評価をお願いした.

また,被験者の大半が映像分野の専門教育を受けていないことを考慮して,アンケートの 実施に当たっては,

カメラワークを意識して映像を見ているか.また,カメラワークの無い映像を長時 間見ることに対する意識調査.

本論文で提案しているカメラ位置決定手法による自由視点映像が,映像に関する研 究を専門としない集団からはどう判定されるか

カメラワークを適用したものが,果たして本当に印象に残る映像として捉えられて いるかどうか

という比較的回答しやすいと思われる設問を心がけた.

全アンケート項目のうち,Iは普段からカメラワークを意識しているかどうかを問う設 問であり,IIは環境カメラ映像にカメラ移動を加えることの有効性に関する質問である.

III,IV,V,VI,VIIは前章で説明したカメラ位置決定方法に対する評価項目である.VIII は実験用映像における一番印象に残った映像を問う設問である.

4.2 カメラ演出自体に関するアンケート項目

質問項目 YES NO

I.これまでにカメラワークを強く意識してテレビや映画などの映像を見たことがありますか 70.0% 30.0%

II.一箇所に固定されたカメラで撮影された映像を長時間見たいと思いますか 22.2% 77.8%

4.3 カメラの配置および移動に関するアンケート項目

質問項目 平均

III.カメラの移動はスムースだったと思いますか 3.2

IV.カメラの切り替えタイミングは適切だったと思いますか 3.8

V.映像に何らかの違和感を覚えましたか 3.9

VI.ひとつの映像に対して,もっと多くのカメラ移動や切り替えがあったほうがいいと思いますか 2.3 VII.自由視点映像にカメラ演出を加えることは,映像内の出来事を理解するために有効だと思いますか 5.0

4.4 一番印象に残った映像に関するアンケート項目

質問 映像1 映像2 映像3 映像4

VIII. 4種類の映像のなかで,一番印象に残った映像をお教えください 2 1 5 2

質問Iで「カメラワークを強く意識して見たことがある」と回答した被験者の約80%が 設問IIで「固定されたカメラによる映像を長時間見たくない」と回答していた.また,質 問IIについて「いいえ」と答えた被験者の自由記述欄は,「面白さが無い」「飽きる」とい う回答が中心であった.映像の内容にもよるために一概には言えないが,「一点から長時 間見ること=飽きやすい」という傾向が見られる.

質問IIIの結果は回答にばらつきがあるものの,予想していたよりも低いものとなった.

その理由としては,自由記述欄で「カメラの動きが等速」という指摘が見られたように,

人手によるカメラ移動とは異なる動き方をしていることがスムースではないと判断される 要因となっていることがわかる.カメラの注視点としてアノテーションボックスの中心座 標を逐次的に追いかけるだけでは不十分であると考えられる.

設問 IVの結果はおおむね良好なものとなった.機械処理によるイベントキー情報抽出 手法との比較をおこなっていないために単純に結論付けることはできないが,人手でマー クされたアノテーションをイベント区切りとして用いたことが評価された推測される.

質問 Vでは,結果として「どちらかといえば違和感がある」と答えた被験者が半数を 超え,思わしくない結果となった.この設問では,カメラの切り替え時の座標のギャップ

(カメラの飛び)についての評価を意図したものだったが,自由記述欄に「ボクセルによっ て表現された映像のため,生っぽさがない」「映像の精度(綺麗さ)」「背景がフラット」を 対象とした回答がほとんどであり,視点の切り替えと移動よりも自由視点映像の「画質」

を対象として,何らかの違和感を感じた被験者が多かったと考えられる.またこの設問方 法に関しては改善の余地が残る.

質問VIの結果では「どちらかといえば少ないほうがいい」と答えた被験者が7割を超 えていた.自由記述欄においては,全般的に視点の切り替えが多すぎて「映像についてい けない」または「疲れる」という意見が散見された.これは映像のタイムスケールに対し てカメラワークが多すぎたためと考えられる.今回の実験に用いた映像では一本あたり8 秒程度と短く,そのなかにカメラワークを4種類入れたため,タイムスケールにに対して 窮屈になってしまったためだと考えられる.映像のタイムスケールに対する適切なカメラ ワーク個数の配分方法についても,今後の検討が必要だと考えられる.

質問VIIへの回答では,無回答1名を除き,すべての回答が「有効である」という結果 が出た.被験者の数が少ないため断定はできないが,自由視点映像へのカメラワーク適用 についての有用性が示唆される.ただし,「映像の目的による」という記述も見られるな ど,今後のシステムの発展を考えるうえで課題となる項目が多数記述されていた.目的と する対象分野ないし自由視点映像の目的に応じたカメラワーク選択方法ないし制約条件の 作り込みが必要であると考えられる.

質問VIIIへの回答では,映像3(Dramatic)が一番印象に残った映像として挙げられた.

しかしながら他の3種類の映像は大差がないことから,1番視点移動の激しいものが選ば れる傾向にあると考えられる.また,今回の実験では人物の入退室という単純かつ時間長 の短い映像を用いたが,今後はより長めの映像を用いた実験が必要であろう.

最後に,アンケート結果全般に関する考察を述べる.アンケート結果からは,カメラの 移動と配置に関してはまだまだ改善の余地が残っているが,提案手法を用いた自由視点映 像へのカメラ演出は有効であるという回答が得られた.

本研究の主眼は自由視点映像への視点配置方法の確立にあるが,「カメラワークの適用 はコンテンツ次第である」という意見が散見された.実験にあたっては,複数の演出で自 由視点映像を提示するメリットに関して深く説明しなかったため「目的によって有効性は 変わってくるのでは」という意見を多数いただく結果となった.また,映像の内容理解支

援に関しては,せっかくカメラワークを適用しても,エスタブリッシュショットの時間が 十分にとられていないため,その後のカメラワークに圧倒されてしまい,内容理解の支援 にはあまりつながっていないのでは,という意見もあった.エスタブリッシュショットの 適切な挿入方法に関しては,今後の課題としたい.