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採決時の区分所有者数及び議決権数の考え方

ドキュメント内 役員候補に選ばれたら (ページ 46-50)

1 区分所有者数及び議決権数のそれぞれの要件を確認する

集会で議案を採決するときに,出席区分所有者の数だけを数えて過半数とか4分の3以 上といっている場合がよく見受けられますが,注意が必要です。区分所有法では,「集会の 議事は,この法律又は規約に別段の定めがない限り,区分所有者及び議決権の各過半数で 決する」(区分所有法39条)こととなっています。つまり,出席区分所有者の頭数だけで なく,全区分所有者数と全議決権数の双方が要件を満たすことが必要となるのです。区分 所有法と異なる採決方法は,区分所有法において,規約で別の採決方法を定めることが許 された決議事項について,規約に定めた場合にのみ,効力を持つことになります。

2 議決権数の考え方

議決権の割合は,原則として,専有部分の床面積の割合によります(区分所有法38条,

14条1項)。ただし,規約で別段の定めをすることもできます。その場合,様々な事情を 総合的に考慮して区分所有者間の利害の衡平を図る必要があります。

専有面積をそのまま議決権割合にすると複雑な数字になる為,専有部分の床面積の大小 にかかわらず専有部分 1 住戸につき 1 個の議決権と規約で定めているマンションは少なく

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ありません。この場合において,例えば,総数が100戸のマンションであれば,ある一 人が30戸を所有し,残り70戸をそれぞれ70人が所有する場合でも,全議決権の数は 100となります。

3 区分所有者数の考え方

集会決議の用件で共有の場合に区分所有者の数をどのようにカウントするかが問題にな ります。

複数の共有者がいても,区分所有の法律関係においては,併せて1つの構成員の地位で すので,数人で一つの専有部分を所有しているときも区分所有者数は1です,また,一人 で数個の専有部分を所有していても区分所有者数は1となります。例えば上記の100戸 のマンションの場合,30戸を一人が所有していますから区分所有者数は1となり,残り 70戸をそれぞれ70人が所有していますから区分所有者数は70,あわせて区分所有者 数は71となります。

なお,共有の場合,誰が集会で議決権を行使するか,ということについては,区分所有 法は「議決権を行使すべき者1人を定めなければならない」(区分所有法40条)と規定し ています。標準管理規約では「・・・あわせて一の組合員とみなされる者は,議決権を行 使する者1名を選任し,その者の氏名をあらかじめ集会開会までに理事長に届け出なけれ ばならない」(標準管理規約46条2項・3項)と定めています。この書面は,行使者の変 更が届け出られるまでは,その効力を持つと考えられるので,集会のたびに提出する必要 はありません。

区分所有者数の数え方

A・B・Cの区分所有者が複数戸のマンションを 所有した場合を想定します。

① Case1の場合,A氏が単独で1号室を所有している場合は議決権数,区分所有者数共1 となります

② Case2の場合,B氏が2号室・3号室を所有している場合は先ほど説明しましたように,

議決権数2,区分所有者数は1となります

③ Case3の場合,B氏とC氏が4号室を所有している場合も先ほどの説明のように議決権 数1,区分所有者数1となります

Case1 Case 2 Case 3

専有部分 1号室 2号室 3号室 4号室 合計 A氏 単独

B氏 単独

C氏 共有

議決権数 1 1 1 1 4

区分所有者数 1 1 1 3

B C

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4 委任状,議決権行使書の数え方

区分所有法によれば,書面や代理人によって行使することができるのは,あくまでも議 決権に限定されています(区分所有法39条2項)。したがって,これらの書面が提出され ているからといって,これを出席とみなして区分所有者数に含めることはできません。

そこで標準管理規約では「書面または代理人によって議決権を行使する者は,出席組合 員とみなす」という規定を設けることによって,単に議決権数だけでなく,区分所有者数 のカウントにも有効になるとしています(標準管理規約47条5項)。

5 集会(総会)主義という考え方

例えば,ある議案について採決をしたところ,出席者の意見は圧倒的に反対が多く,ま たその声も強いという状況でした。しかし,委任状及び議決権行使書を合計すると,賛成 が過半数をわずかに超えることになりました。

このような場合,議長はこの議案をどのように処理すればよいのでしょうか。

これを考えるヒントの一つが,区分所有法第45条第2項の「書面決議」にあります。

書面決議の場合は,意見交換を行う機会はなく,賛成か反対かの結論のみが求められ,全 員同意でなければ,決議は認められません。このように区分所有者同士が意見を戦わせな がら管理組合としての意思形成を行っていくことを,区分所有法は非常に重要だと考えて いて,これを「集会主義」と呼んでいます。書面決議の場合は,このプロセスを省略する ため全員同意という高いハードルを設けているのです。

したがって,実際に集会に出席した多数が示す意思は,十分に尊重される必要がありま す。議長は,このような点を考慮して,この例のような場合には採決を一旦保留して,再 度,集会を開いて話し合うなどの配慮を示す必要があります。ただし,この場合,議長は,

議決権行使書や委任状で意思表示をした多数の人のことも十分配慮する必要があります。

このような事態にならないためには,総会までに十分な広報等を行い,議案の趣旨及び 内容について周知徹底することにより,各区分所有者の理解を含めておくことが望まれま す。

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ロバーツ・ルール ―――

集会(総会),理事会をうまく進めるための「ロバーツ・ルール」

会社などには独自に会議のルールがありますが,管理組合や自治会 などには合意形成するためのルールがありません。そのため,合意形 成に時間と労力を費やしても一致点が見出せないことが多くあります。

最近,団体組織や地域活動で「ロバーツ・ルール」を利用して会 議を進めているところが多くなってきました。

ロバーツ・ルールは「4つの権利」と,この権利を守るための

「基本10原則」があります。

4つの権利

● 多数派が意思決定する権利

● 少数派の意見が傾聴される権利

● 構成員個人の権利

● 欠席者の権利

基本10原則

① 組織の権利は構成員一人ひとりの権利にまさる

② すべての構成員は平等であり,彼らの権利も平等である

③ 審議を進めるためには定足数以上の出席が必要である

④ 過半数が決する

⑤ 沈黙は同意を意味する

⑥ 3分の2表決規則

⑦ 一度に一つの議題,一度に一人の発言者

⑧ 討議が認められている議案は充分に討議されなければならない

⑨ いったん議題が採択されると,同じ会合で同一の議案やそれと本質的に同 様の議案を取り上げることは議事規則に反する

⑩ 討議における個人攻撃は常に議事規則に反する

た っ た 一 人の反 対 で 物事が決められない

総会や理事会に出 席しないで後で文 句をいう人がいる

議長になったけれど会議の効 果的な進め方が分からない

一旦決まったのにまた反 対意見を言う人がい

個 人 攻 撃 す る人がいる 理事会の権限 と責任が不明 声の大きい人の意見 に流されてしまう

ロバーツ・ルールとは:ヘンリー・マーティン・ロバートが議事の進め方に疑問を抱き,1874年に

「ロバート議事規則」を作成し,以来100年以上にわたりアメリカの議事法典とされてきました。

会合の効果的進め方、議案の提出方法,理事会運営などが例を示して説明されています。

同 じ 話 題 が繰り 返 さ れ議論が進まない

一人が長々と自分の 意見を話し続ける

ロバーツ・ルールは、合意形成を導くための話し合いのルール

民主主義の文法―市民社会組織のためのロバート議事規則入門―(ドリス・P・ジマーマン著)より 民主主義の文法―市民社会組織のためのロバート議事規則入門―(ドリス・P・ジマーマン著)より

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建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)

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