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授業案の作成

ドキュメント内 美術作品に対する固定的イメージを (ページ 36-48)

第二章  鑑賞授業の開発

第二節  授業案の作成

  (1)授業の方法

 はじめに、本授業はプレゼンテーションツールを用いて構成する。今回の場合、提示した い映像資料が多く、それらを高画質兼大画面で印刷するとなると、設備・費用両面で困難で ある。故に印刷にかかる設備・費用を気にせずに、スクリーンに大きく提示できるプレゼン

テーションツールを用いて映像資料を作成することとする。また、昨今学校で

ICT(Information and Communication Techno1ogy/情報通信技術)教育が文部科学省から推 奨されていることも理由の一つとして挙げられる。

 本授業は、第一章第一節にて考察した鑑賞教育の意義(i人間形成、i造形性に対する感覚 の充実、血美術文化の理解・創造・継承・発展)を基礎として授業を構成するが、今回は特に、

「i人間形成の視点」を主軸に「血美術文化の理解・創造・継承・発展」に的を絞ることと する。「i造形性に対する感覚の充実」は、感覚の指導に対する困難さと、本実践の中心作品 であるデュシャンの《泉》が、造形的な感覚を主とした鑑賞に適さないと考えたためである。

 授業の進め方として、対話と解説、発問を交えて目標達成を図る。第一章第二節(4)で考察 した対話型鑑賞の利点を活用し、できるだけ問い掛ける様に進め、生徒が能動的に授業に参 加できるようにする。

 今回はマルセル・デュシャンの《泉》という難解な作品を鑑賞の主軸としているため、対 話だけでは乗り越えられない壁があると判断し、資料や考える視点を明確に提示すると共に 解説を多く取り入れる。主体的な態度を持続できるように、対話と解説の双方が補い合うよ

うな形を目指したい。

 また、目標の「美術について考え、固定的イメージを揺るがす」ことについて、デュシャン の《泉》は美術について考え、美術に対する固定的イメージを揺るがすことは出来るが、こ の特殊な作品だけで美術全体について考えると偏りが生じると予想できる。よって、《泉》以 外に表現の幅をもった異なる幾つかの参考作品を授業の中に組み込むことが必要となるであ

ろう。

 更に、本授業を通して、美術について全て理解するといったことは期待すべきでない。そ もそも筆者自身も美術が何であるか、その普遍的な答えを明言できない。何故なら、美術史        35

を振り返ると、美術は常に変化を繰り返してきたし、今後もそうなると予想出来るからであ る。一つ確かなことは美術が多種多様な広がりを持っており、一つ一つの表現に、明確でな いにしても、その様になった理由があるということである。よって、本授業では美術の定義 について、積極的に指導することは出来ないが、固定的イメージ「対象を写実的に、キレイ に、何が描かれているか判別できるように描く」ことが美術の全てでないことを示すといっ た、消極的な働きかけであれば問題ないと判断し、これを授業に組み込むこととする。

 尚、本論文で作成した授業案は大きく分けて2っ存在する。それは、一回目に実施した授 業(第1授業案版)において、その内容が多くの生徒に伝わらず、改善する必要性を感じたから である。そして、内容を改善した2回目(第2授業案)は大多数の生徒に内容が伝わったであろ

うとワークシート等から分析された。そのため、授業は計4回であったが、2回目以降の授 業内容は大きく変化しない。故に本節では、第1授業案及び第2授業案の2つについて論述 することとする。

 授業実践協力校との協議の結果、対象は中学2年生、時数は一時間(50分間)とする。

(2)授業の内容

第1授業案について

①目標

本授業案の目標は第一章三節で示した「主体性を持って、美術について考え、美術に対する 固定的イメージを揺るがし、人間形成を図る」である。この目標を達成させるために構成し た授業の流れを以下に示す。

②授業の流れ

1,導入、マルセル・デュシャン《泉》の提示

 はじめて《泉》を見る生徒は、ただの便器が美術作品であることに驚き、なぜ便器なのか?

なぜ便器が美術作品なのか?と、《泉》に大きな興味を示すと予想できる。そして、《泉》を 美術作品として認められない自分と、《泉》を美術作品として認めている美術館・美術の専門 家などの美術の世界との相違に気付き、生徒1人1人が自分の美術に対する固定的イメージ について改めて考える動機付けとなる。

2、《モナ・リザ》など、5つの表現の異なる作品の提示。

 美術に対する固定的イメージを揺るがすために《泉》の提示だけでは達成が難しいと考え られた。そこで、5つの表現の異なる作品・)を提示することで、美術の多様な表れを知り、

それらを認めることで固定的イメージを揺るがすことが出来るのでは?と考えた。故に、ま        36

ず世界で最も有名で、美術の代表的作品として知られる《モナ・リザ》の不自然な点を探し、

今までその作品について全て分かっているように素通りしてきた自分が、如何にちゃんと見 ていなかったかを実感する。そして、世界で一番有名な作品が決して本物そっくりに、ただ あるがまま描かれているのではないことに気付かせ、美術は「本物そっくりに作ること」と いう固定的イメージを揺さぶる。その後、ムンクの《叫び》やシャコメッティーの彫刻、ダ

リ、カンディンスキーの作品を見せることで、より揺さぶりを強め、美術は「キレイなもの を作ること」、「何か分かるものを作ること」という固定的イメージも否定する。

3、発間1:同じ美術と呼ばれることをしているのに、一人一人の作者によって表現された ものが違うのは何故か?

 先の5つの作品を見ながら、作者によって出来る美術作品が何故違うのか考えさせること で、美術が作者の表したいことを自由に表してもいいものだと結論付ける。そして、その様 な考えが正しいとした時、マルセル・デュシャンの《泉》が美術作品として成り立つかもし れないという可能性を抱かせる。

4、マルセル・デュシャン《泉》の解説

 《泉》が美術作品として認められている理由を明らかにする。それに込められた意味(オブ ジェの思想など)、デュシャンの言葉などから多様な考え方を知る中で、美術について考えを

深める。

5、発間2:美術作品も見方をかえればモノになるのか?

《泉》の解説より、「モノの意味や価値は見る人によって変わる」という考え方を知る。そし て、その考え方が本当に正しいならば、美術作品も見る人がその意味や価値を認めなければ ただのモノになる可能性がある。これに対して心から納得できるかどうか考えさせ、より美 術について考えを深めさせる。

6、ワークシート記入

自分の考えを書き出すことで頭を整理する。

③スライドの説明

本授業はプレゼンテーションツーノレを用いて構成し、スライドの内容に沿って授業が展開さ れる。そのため、各スライドについて記述することで授業の細かな流れが理解できる。故に、

ここでは各スライドの内容及び狙いを示すこととする。尚、スライドのレイアウトについて        37

は巻末資料pp.1・9を参照。スライド=(s)

(s1)自己紹介 資料p.1

名前と在籍する大学名を提示し自己紹介する。

(s2)マルセル・デュシャン《泉》 資料p.1

導入。デュシャンの《泉》を提示し、見覚えがあるかどうか問う。《泉》が便器と同じ形 をしていることを理解させ、便器と美術作品との関係に疑問を持たせ興味関心を高める。

(s3)《泉》の作り方 資料p.1

《泉》の作り方をアニメーションで解説。買い物に行ったデュシャンが店員と会話し便器 を買い、それをひっくり返し、筆でサインを入れ、タイトルをつけるまでをアニメーショ ンで提示。《泉》が市販の便器を購入し、ほとんど手を加えられていない既製晶であるこ とを理解させる。これにより、一層《泉》が美術作品であることに疑問を持たせ、興味関 心を高める。

(s4)《泉》の作り方まとめ 資料p.1

(s3)のまとめ。《泉》の作り方を①便器を買ってくる②ひっくりかえしてサインを入れる

③タイトルをつけて完成!でまとめ、ここまでの整理をさせる。

(s5)展示されている《泉》1資料p.2

《泉》が何も作っていないただの便器であると認識し、これに対する抵抗感を持たせた後 に、美術館に展示されている画像を見せ、驚きを与える。そして現時点で《泉》を美術作 品と認めるか認めないか挙手によって確認。是認派、否認派双方に理由を聞く。

予想では否認派が多数を占める。もし、是認派が多数の場合、自らが否認派となり次のス ライドに繋げる。

(s6)美術の基準の説明 資料p.2

美術の基準についてアニメーションで解説する。頭の中にr美術ってこういうものだ」と いう基準(美術に対する固定的イメージ)があるとし、現時点で《泉》がその基準に入ら ない、又は入りにくいことを示す。その中で、自分が《泉》を美術作品だと認められない のは、自分の申の美術の基準に合わないからだと自覚させる。また、美術館などの美術の

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