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第 5 章 授業時間の変更による節電対策

本章では,前章で推定したモデルを用いて,授業時間が 5 号館の消費電力量に与える影 響を調べる.さらに,4つの節電対策を提案し,それらを比較検討する.

図 5.1 2010年7月15日の授業時間と気温の推移

累積加重授業時間と消費電力量の関係を推定するために,2010年4月から2011年3月 までの365日間のうち,「行事」が授業日である168日間のデータを使用する.さらに「空 調」の運転方式をもとに168日間を4つの区間

春季(換気運転):04月09日から05月15日までの28日間

夏季(冷房運転):05月16日から09月30日までの66日間

秋季(換気運転):10月01日から11月15日までの34日間

冬季(暖房運転):11月16日から01月18日までの40日間

に分ける.4章で求めたとおり(図 4.20 および図 4.21),それぞれの区間ごとに「行事」

「空調」の与える影響の大きさは一定であり,消費電力量の変動の主な要因は「気温」「曜 日」であると考えられる.前日,前々日から影響される「残差」の部分については,回帰 モデルで抽出することはできないので,消費電力量から 4 章で求めた「残差」成分を取り 除く.この「残差」を取り除いた値を目的変数とし,累積加重授業時間を説明変数とする,

区間に応じた 4 つの単回帰モデルで表す.これにより,それぞれの区間(暑い時期,寒い 時期,寒暖切替わりの時期)における,気温を考慮した授業時間の影響を,単回帰モデル の「傾き」として得ることができる.

24 26 28 30 32

0 5 10 15 20

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22

気温[℃]

授業時間[h]

時刻 授業時間

気温

図 5.2 累積加重授業時間と残差成分を除いた消費電力量のプロット

図 5.2 に累積加重授業時間と残差を除いた消費電力量に関する散布図を示す.図中に上 記区間ごとに色分けした計 168 日間のデータをプロットし,それぞれの区間に対する単回 帰モデルをプロットと同様に色分けした直線として示す.

この図によると,それぞれの区間における単回帰モデルは

(消費電力量) (残差) (累積加重授業時間) 春季 (消費電力量) (残差) (累積加重授業時間) 夏季 (消費電力量) (残差) (累積加重授業時間) 秋季 (消費電力量) (残差) (累積加重授業時間) 冬季

(5.2)

となる.これにより得られた消費電力量の推定値と実測値の決定係数は 0.868 となった.

また,夏季では消費電力量が最低でも約9000キロワット時は必要であり,授業時間や過ご しやすい気温の条件により,(残差を除いた)1日の消費電力量が9000から11500キロワ ット時変動することがわかる.春季については授業時間や過ごしやすい気温の条件により 6000から9000 キロワット時で変動することがわかる.冬季については,夏季と比べると 累積加重授業時間に対する負荷が小さいので,気温に鈍感であることがわかる.

これに関連して,気温による重みを考慮しない場合について述べる.単純に授業時間の 累積をとったものと,残差を除いた消費電力量の散布図を図 5.3 に示す.縦軸は図 5.2 と 同様に残差を除いた消費電力使用量を表すが,横軸は単純な累積授業時間を表す.この累 積授業時間は,1日ののべ授業時間を表すため,授業の行われる曜日ごとに決まった値をと る.

y = 2.27 x + 6163.93 R ² = 0.46 y = 1.94 x + 8659.49

R ² = 0.56

y = 2.01 x + 6509.96 R ² = 0.24

y = 1.18 x + 8011.30 R ² = 0.22

3000 6000 9000 12000

0 500 1000 1500

消費電力量[kWh]

累積加重授業時間 [℃・h]

春季 夏季 秋季 冬季

図 5.3 累積授業時間と残差成分を除いた消費電力量のプロット

図 5.3 を見ると,秋季および冬季におけるあてはまりは比較的よいものの,夏季および 春季のあてはまりは悪い.このことは,図 4.12 および図 4.13 で見たように,冬季では気 温による影響の大きさが小さい結果と関連していると考えられる.これにより得られた推 定値と実測値の決定係数は0.781となった.

図 5.2 得られた累積加重授業時間を用いたモデル (5.2) と,図 5.3で得られた累積授業 時間を用いたモデルでは,消費電力量の推定に関して,決定係数を比較すると前者のほう があてはまりはよいが,これらのモデルについて単純に優劣を与えることは難しい.とは いえ,本章においては,暑さ(寒さ)に対する不快さを抱えた学生人数が多くなるのに比 例して,5号館の消費電力量が大きくなることを仮定しているので,節電効果のシミュレー ションにおいては,累積加重時間を用いたモデル (5.2) のほうを用いる.

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