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指導上の留意点

5分

第3節  指導上の留意点

 これまでに学校教育現場においての伝統音楽指導の意義やあり方、課題点について考察 してきた。第2節では、そのことを踏まえた上で実際の教育現場で使用することを想定し た学習指導案の一例を提示した。この指導案を用いて指導するにあたり、より効果的に取

り組めるように、指導内容の意図や具体的な方法をいくつか留意点として挙げ、・さらに課 題点も共に述べていきたい。

 まず、琉球民謡を三線を用いて演唱する際には、歌うことに重きを置くべきだというこ とである。というのは、今回の指導案では三線を取り入れて琉球民謡を演唱する活動とな っているが、三線に触れたことのない生徒が、琉球民謡を演唱しようとすると、まず「歌 う」ことよりも三線を「弾く」ことに習得時間を要するため、三線を弾くことに意識が向 いてしまいがちになる。そのため、琉球民謡を歌うことよりも、三線を弾いたという印象 になってしまうことや、本来の目的である琉球民謡を歌うということを十分に楽しめなく なる恐れがあるからだ。

 三線の指導で時間が大幅に取られるので器楽の領域に偏りがちであるが、琉球民謡を学 ぶ上では、歌うことも重視して指導し、演唱ができるということを達成目標として取り組 むことが重要である。「沖縄の歌・三線の特色は、三線の弾き手が歌い手を兼ねるという〈絃 声一体〉の関係にあり、技巧的には絃と声とは同時進行ではなく、そこに微妙な味わいを 追求するところにあります。」1というように琉球民謡の演唱の魅力は一人で弾き歌いをする

ところにあるので、この魅力を十分に生徒が味わえるよう工夫する必要がある。

 次に段階を踏んだ指導について述べる。琉球民謡を取り扱う際には、琉球民謡の初歩的 な曲から発展的な曲まで段階を踏んで学習を進めて行けるようにしたい。具体的には、本 調子の曲を何曲かマスター出来たら、調子の違う曲を取り扱うことが望ましい。そうする

1大城學「三線音楽分率演目解説」財団法人国立劇場おきなわ運営財団2005p.16

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ことで調子が違う曲があるということや、調弦の変え方を学ぶことにも繋がる。

 今回の指導案の教材には、初歩的なものとして〈安里屋ユンタ〉を用いた。〈安里屋ユン タ〉は本調子の曲で、県外・県内で馴染みのある曲である。初めて三線を弾く生徒にとっ ては導入として適しているといえる。また背景としても元歌の〈安里屋ユンタ〉からく安 里屋節〉へ、〈安里屋歯〉を〈新安里屋ユンタ〉への移行があるため内容を掘り下げ易いだ ろう。また、歌詞の物語も興味深いものがあり、歌詞を学ぶなかで琉球方言に触れ、琉球 民謡の魅力に気付けるようにすることが重要である。

 今回は取り扱っていないが、発展的な曲として〈ていんさぐぬ花〉を扱うとよいだろう。

歌詞に8・8・8・6の表現技法が使われているので琉歌の勉強にもなる。また、〈安里屋ユ ンタ〉は本調子の曲であるが、〈ていんさぐぬ花〉は二揚ヴ調子の的なので、調子の違う曲 を扱うことで調弦の仕方や、調子の違う曲についても学ぶことができる。

 楽譜については、今回は歌詞カード・五線譜・工工四・対比楽譜の4つの種類を取り扱 った。本来ならば、工工四から歌詞や三線のポジションなどを読み取り、演唱することが 望ましいが、初めて三線を弾く生徒には]二工四を読み取ることは容易ではなく理解するこ

とに時間を要すると思われるため、理解の手助けとして見慣れている五線譜を用意した。

また、工工四との対比がしやすいように五線譜と工工四の対比楽譜も用意した。

 留意点としては、五線譜や対比楽譜を、工工四を読むための理解の手助けとして扱うと いうことだ。基本的には工工四をみて演唱するようにし、参考資料のような形で五線譜と 対比楽譜は使用するようにしたい。

 また、コニエ出は多数出版されており、種類も多いが、生徒が解りやすいものであればよ いだろう。同じ曲であっても出版杜や楽譜によっては難易度が異なっているので、工工四 の難易度は生徒が選ぶことができるようにするとよい。工工四を2パターン用意し、難易 度Aと難易度Bを両面刷りにしたプリント(巻末に添付)を配布し、生徒個々人が自由に 難易度を選択できるようにすれば、それぞれのぺ一スで学習を進めることが可能となり、

より達成感や充実感を味わうことができるだろう。その際はどちらを選択しても成績には        157

反映しないことにするなど生徒の実態に合わせてルールを変えて取り組むことも考えられ

る。

 次に調弦について述べる。第2章の第3節「沖縄県教員へのアンケート調査」では、琉 球伝統芸能を取り扱う際に教材研究で困ったこととして、「三線のチンダミ(調弦)に関し て、各自で取り組ませることが難しい」「チンダミが難しく、生徒ができない」という回答 があった。全ての三線を教師が調弦をすると、時間がかかるうえに生徒の授業に対する緊 張感を薄れさせてしまう恐れもある。また、調弦は琉球音階の基本の音であるため、生徒 が自分で調弦をすることによって琉球音階に慣れることに繋がるだろう。初めて調弦をす る生徒にとって、音を聞き分けることは容易でないので、チューナーを使って音が合って いるかを各自で確認できるようにするという方法も効果的である。しかし、その場合はチ ューナーに頼り過ぎないように注意しなければならない。ピアノの音を鳴らし、その音に 合わせて調弦できるようになることが目標として挙げられるので、音に慣れるまでの間の 最終確認としてチューナーを使うようにしたい。調弦を自分で出来るということは、琉球 民謡の演唱を保存・伝承するということに大きく関係しているため、生徒自身で出来るよ

うに指導することが大切である。

 次に、演唱を指導する際の手順について述べる。第2章の第3節「沖縄県教員へのアン ケート調査」と第3章「沖縄県立名護高等学校生徒へのアンケート調査」の回答では、三 線を弾きながら歌うことができないという生徒が大半を占めていることがわかった。この 現状を改善するために、今回の指導案では曲を三線で弾く練習をする際に、初めから歌詞 と工工四を同時に読むようにし、歌詞と三線を同時に並行して学習するようにした。なぜ なら、先に三線を練習してある程度弾けるようになってから歌をつけて演唱しようとする と、工工四と歌詞を一致させることが難しくなり、慣れるまでに更に時間が必要となって しまうからである。そのため、曲を練習し始めたらゆっくりでいいので、時間をかけて最 初から三線と歌を同時に練習することが重要である。また、工工四を歌詞と同時に読むこ

とで三線が伴奏楽器であることの意識づけにも繋がり、演唱を習得する近道になるだろう。

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しかし、実際に生徒が演唱することが困難であった場合には、クラスを三線を演奏するグ ループと歌唱するグループにわけて取り組み、生徒の伴奏で生徒が歌うことができたとい った形で目標を達成するということも考えられる。

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