本章では、韓国における介護予防・生活支援とは何かについて検討するとともに、
高齢者ができる限り要介護状態にならないようにする介護予防・生活支援システムの 構築をめざした政策課題を導き出すために、韓国で地域保健福祉サービスに関わって いる機関の担当者を対象とするインタビュー調査を行い、その内容を分析した。
<図>は、介護予防・生活支援に関わる構成要因をまとめたものである。
図12 介護予防・生活支援に関わる構成要因
第一。自治体中心の介護予防・生活支援システムの構築が求められる。李(2014)
は、現行の支援体制が対象者の情報管理やサービス調整、管理的な責任などに関して 保険公団と自治体に役割が二元化されており、対象者の管理に関しても保険公団と自 治体ともに遂行機関であるとされているため、その役割や責任主体が曖昧であると述 べている(李 2014)。また、韓国の自治体が日本のように療養保険の保険者ではなく、
自治体がより積極的な介入することによって、療養保険と地域福祉との調整を強化し、
発展させていくことが重要である(朴 2008)。さらに、高齢者福祉事業が自治体に移 管されており、保健所や福祉館などが自治体の所属機関になっているため(善 2007)、 介護予防・生活支援の調整・協力のためにも自治体中心の支援の仕組みが適切である と考えられる。
第3章の高齢者調査の結果によると、高齢者にとって重要なサービス提供機関は福 祉館であった。日本と異なり韓国では、初期の制度の施行段階から介護予防・生活支 援を介護給付から外しており、地域保健福祉サービスとの調整を通して実施してきた。
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これは、介護予防・生活支援の中心が自治体であり、今後の取り組みもそれぞれの自 治体が中心になるべきであることを間接的に示している。
厚生労働省(2014)によると、日本では継続的な人口高齢化と保険財政の安定化の ために、2016年から 2018年までの経過措置を経て介護予防事業を、既存の予防給付 を段階的に各自治体へ移管し、2018年末をもって全国の予防給付を終了する予定であ るとしている(厚生労働省 2014)。また、高齢者の社会的参加を通した介護予防・生 活支援の推進を目指して、より自治体中心に地域支援事業を拡大・強化し、また、地 域資源の積極的な活用を図っている。韓国でも、介護予防・生活支援の効率的・効果 的な管理を通して、高齢者のニーズに合わせて、現存する生活機能を維持させ、でき る限り地域内での生活が可能な地域中心の介護予防・生活支援システムが定着すべき である。
第二。介護予防・生活支援の関連機関の連携体系と役割分担の明確化が求められる。
現行の地域保健福祉サービスの支援体制は、保険公団が要支援者を把握し、そのリス トを自治体に通報する。また、各自治体では、要支援者リストに基づき地域内の保健 福祉サービスを調整することになっている。しかし、これまでの介護や福祉業務が重 なっており、実施体制の変化があまりない状態での連携業務の強化は、業務負担を増 加させるだけである。また、具体的な連携方法や指針がなく、実施主体間の理解や連 携の活性化を期待することは難しい。さらに、介護予防・生活支援の主要サービスで あるドルボミサービスの場合、ほとんど民間福祉館や社会福祉法人が運営しているが、
その提供機関における役割分担や支援内容は、具体的に明確にされていない状況にあ る。
崔(2010)は、要支援者の介護予防支援方案として、自治体における予防支援を行 うことができる福祉館や高齢者在宅支援センター、保健所と連携し、特化された予防 的サービスの提供が重要であると述べている。また、介護予防・生活支援に当たって は、保健・福祉サービスの連携モデルの開発が必要であり、各保健所、住民センター、
福祉機関の参加による連携サービスが必要であり(金 2012)、地域保健福祉サービス 調整の責任主体を明確にし、関連機関間の役割分担や協力・情報の共有が重要である
(呉ら 2009)と指摘している。
したがって、自治体と保険公団はもちろん、介護予防・生活支援に関わるサービス を提供する機関を含めた実施主体間の連携システム及び役割分担の明確化が必要であ る。また、このために優先すべきことは、現行の介護予防・生活支援の責任主体が保 険公団であるのか、自治体であるのかを明確にすることである。
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第三。介護予防・生活支援の範囲と地域保健福祉サービスの拡大が求められる。韓 国における介護予防支援は、要支援者を対象にして、普遍的な側面からドルボミサー ビスなどの地域保健サービスを提供している。しかし、実際には、所得や健康状態な どの基準によって、要支援者であっても適切な介護予防・生活支援を受けられない場 合もある。
第3章の一般高齢者を対象に調査した保健福祉サービスの利用や効果、必要性に対 する結果によると、高齢者は福祉館の多様な福祉サービスを利用しており、その効果 性は、軽度より重度にいくほど効果性が高く、その必要性も高いとされている。この ことは、要支援者だけではなく、地域の虚弱な高齢者に対する介護予防・生活支援が 重要であり、体系的な管理の必要性を意味している。
善(2004)は、虚弱な高齢者は、障害をもつ状態ではないが、疾病や老衰状態がな い元気な高齢者とは区分される中間状態の高齢グループであり、虚弱な高齢者は、最 終的には介護保険には入らないが、持続的な管理が行われないと要介護状態になりや すい高齢者であるとしている。
高齢者の重要な健康問題である慢性退行性疾患などは、自覚症状がないまま急に重 症化する疾患であるため、事前予防と健康増進を通した生活の質を向上することが重 要である(李ら 2007;崔 2010)。また、一般高齢者には、元気な状態を維持させる ための健康増進及び日常生活の支援が必要であり、虚弱な高齢者については、初期発 見・悪化を防ぐ支援が優先すべきである。
したがって、高齢者における健康問題の管理や介護予防・生活支援の拡大は、生活 の質の向上とともに、究極的には医療費や介護費用の増加を抑制できる重要な方案に なると考えられる。
第四。介護予防・生活支援に当たっては民間機関や地域住民の参加・活用が求めら れる。介護保険の場合、保険料や本人負担金などにより一定水準の予算の確保ができ る。しかし、保健福祉サービスは、ほとんどが中央政府と自治体の負担金により行わ れているため、地域保健福祉サービスを拡大するためには、中央政府や自治体の負担 率を増加させる必要がある。しかし、大都市と小都市、永久賃貸集中地域と産業機関 集中地域における財政自立度はかなり異なっている。このような状況の中で、介護予 防・生活支援の強化・拡大は、自治体予算の負担になる。
要支援者管理の改善方案に関する研究では、要支援者の効率的な管理のために、第 3セクターの参加による活性化が重要であり(権ら 2008;姜ら 2013)、民間など地 域保健福祉サービス提供機関との有機的な協力関係の形成を通して持続的・包括的な
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サービスの提供を行うことが不可欠である(権ら 2009)と述べている。また、イギ リスの事例においても、POPP事業で 10 か所以上の非営利福祉団体が参加し、予防支 援における地域支援の活用や効果が示されている。民間福祉機関の場合、専門人材な ど専門性を持つ地域社会の福祉活動が行われてきたからである。
したがって、限定された財源の中ですべての高齢者を対象とした介護予防・生活支 援の仕組みを実施するのは困難であり、これを定着させるためには地域の様々な資源 の活用が必要不可欠である。また、どこからどこまでの資源を適用・活用していくの かは、介護予防・生活支援の範囲や役割分担、連携体制など全体的な枠組みから検討 すべきである。
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