• 検索結果がありません。

本章では、高齢者の生活機能の差異とその特徴や介護予防・生活支援の必要性を分 析し、彼らの自立生活支援のために地域の老人福祉機関の予防的サービスプログラム を体系化するための基礎資料を提供することを目的としている。

この目的を達成するために、韓国A市A区の60歳以上の高齢者を対象に調査・分析を 行ったが、その結果は次の通りである。

第一。回答者の個人的特徴は、女性が56.2%であり、年齢は75歳未満の前期高齢者 が約6割を占めている。学歴は中学校卒が35.0%で多く占めており、専門学校卒以上も 3割を占めている。同居家族は、一人暮らしや高齢者のみの世帯が約9割を占め、社会 的孤立・孤独死などのおそれがある。住居形態は、持ち家が66.3%であり、主観的な 所得生活レベルは中が3割以上を占めている。相談相手は7割が配偶者や子女などの家 族であり、近隣や機関なども2割を占めている。特に、一人暮らしや高齢者のみの世帯 の増加は、今後の見守り支援やドルボミ総合サービスなどの介護予防・生活支援の強 化及び重要性とつながっていることが推察される。

第二。回答者の健康特性は、7割が普通であったが、「健康ではない」も3割を占めて いる。持っている疾患は、低・高血圧の疾患が7割であり、健康管理の方法は、十分な 睡眠と休憩が37.0%で多くを占めている。主に利用している医療機関は、病院が85.5%

であり、日常生活上での難しさでは、医療費が約6割を占めている。この結果からみる と、ほとんどの高齢者が一つ以上の疾患を持っており、約7割以上の高齢者が低・高血 圧及び高脂血症・脂肪肝などの成人病を持っていることが分かる。これらは、今後の 要介護状態になる恐れがあり、将来医療費の支出が増加し、高齢者の経済生活の負担 につながる原因になると推察できる。

第三。提供機関へのアクセスは、「主要利用機関」は福祉館が多く、「交通手段」は、

バス・地下鉄・タクシーであり、交通手段の便利さは、ほとんどの対象者が便利であ ると感じている。地域保健福祉サービスにおける情報提供の十分性は、5割以上となっ ている。

第四。回答者の生活機能低下の程度は、「心身機能」「活動機能」「社会参加状況」を 性別に比べてみると、男性は、第1位が「電話番号を調べて、電話を掛けることをし ているか」であり、女性は、「6ヵ月間で2-3㎏以上の体重減少がありましたか」が 多く占めている。また、年齢別では、前期高齢者と後期高齢者とも、第一位が「電話 番号を調べて、電話を掛けることをしているか」であった。この調査対象者は要支援

103

者に限定しておらず、地域の一般高齢者を対象としたにもかかわらず、結果からみる と、うつや軽度認知症の恐れがある高齢者の比率が多く占めており、今後、全体の高 齢者を対象とした実態調査や介護予防・生活支援の対象把握が求められる。

第五。介護予防・生活支援の対照群別にみると、分析1では、日本の二次予防事業 把握基準(基本チェックリスト)を用いて元気な高齢者と虚弱な高齢者にわけて分析 した結果、日本より高齢者化率や要介護程度が軽い状況にもかかわらず、元気な高齢 者より二次予防対象となる高齢者が5割以上を占めている。また、分析2では、元気 な高齢者、軽度高齢者、二次予防対象高齢者、重度二次予防対象高齢者にわけて分析 した結果、二次予防対象高齢者が3.5割であり、今後の二次予防対になる軽度高齢者 が5割以上を占めている。

第六。サービスの平均利用現況とその効果程度をみると、まず、月平均のサービス 利用回数の平均値は3.53回であり、四つの提供機関とも余暇や健康管理プログラムの 利用における割合が多くを占めていることがわかる。また、予防対照群による利用状 況をみると、二次予防対象高齢者の利用回数が最も高く占めている。

さらに、効果性の評価は全体平均が3.41点であるが、予防対照群による効果性の平 均値は、予防対照群の状態が重くなるとその効果性が高く感じられていることが分か った。また、予防対象者にあたっての重要な介護予防・生活支援プログラムは、単純 な健康増進プログラムではなく、実際に日常生活に関わる支援や、高齢者のお互いに 交流ができる機会づくり、社会参加など、予防対照群別に対応した予防プログラムの 提供が求められる。

第七。今後の介護予防・生活支援の必要性については、全体平均が3.49点であり、

地域保健福祉サービスの効果程度とほぼ同じ傾向がみられる。この結果からみると、1 群と2群は教育及び健康増進に関わる介護予防・生活支援が必要であり、3群と4郡は健 康増進及び日常生活支援とともに、老人大学への参加などの社会参加に関わる支援を 必要としている。つまり、元気な高齢者と軽度・重度予防支援における支援プログラ ムの差別化や具体化が必要であると推察される。

最後に、地域保健福祉サービス利用による生活変化は平均3.57点であり、ここでも 必要性と同じく、予防対照群の機能低下により生活変化やその必要性が高く感じられ ていることが分かった。これらは、現行の地域保健福祉サービス利用が、高齢者にと っては、社会活動参加のきっかけになり、意欲を高める機会につながっているからで あると評価できる。この点からも今後の介護予防・生活支援をより具体化・強化すべ きであると推察される。

104

以上の結果から、地域保健福祉サービスにおける予防的プログラムの体系的な樹立 や提供のための今後の発展方案を挙げると次の通りである。

第一。介護予防・生活支援の対象者把握体制の導入に関する検討が求められる。現 在の地域保健福祉サービス支援の対象は、要支援者に限定されている。本研究は、要 支援者を除外した地域の一般高齢者を対象とした。しかし、分析した結果、元気な高 齢者より二次予防対象高齢者の割合が約5割以上になっている。この結果は、体系的管 理や具体的な支援がないと、今後要支援や要介護状態になる恐れが高くなるといえる。

ここまでの研究では、高齢者の健康状態を3段階にわけ、各グループに適切な支援が 求めており、軽度の機能障害高齢者を対象に予防支援事業の開発が必要であることを 指摘した研究(善 2008a)とつながっている。しかし、保険財政の安定化及び要支援 者の機能低下のための予防支援必要性に関する研究(権ら 2008;善 2008b;善 2009;善 2012)や、制度の隙間にある要支援者に対する管理に関する研究と調査を 通して、介護予防・生活支援の拡大の必要性は認識されているが、全体の高齢者を対 象とした実態把握や実証研究は不十分である。

したがって、現行の韓国における急速な人口高齢化及び生活機能の低下を考えると、

地域の中で介護予防・生活支援を必要とする二次予防及び軽度高齢者がどの程度いる のか、また、どのように支援していくのかについて検討すべきである。

第二。サービス支援に当たって、対象別の段階的で具体的な予防的プロクラムの開 発が求められる。地域保健福祉サービス利用率や効果性の評価に当たっては、福祉館 以外の三つの機関は、全体的に平均値以下の数値を示している。これに対して、福祉 館で提供しているプログラムは、健康増進や日常生活支援はもちろん、生活相談から 見守りまで、予防に関わる多様なプログラムを提供していることがわかる。また、今 後の介護予防・生活支援の必要性については、保健所と福祉館が全体の平均値を超え ている。これは、保健所の場合、健康増進とかかわる訪問健康や認知症相談・検診、

運動プログラムなどの保健サービスが集中しているからである。また、一人暮らし高 齢者や高齢者のみの世帯が増えるので、家事、お弁当配達などのサービスに対するニ ーズは、ますます増加すると予測され、高齢者のニーズに合わせて、どのように対応 していくのかが課題になると考える。

要支援者を対象とした地域連携活性化方案(権 2008;権ら 2010;金 2012)や 要支援者に対する適切なプロクラム開発の必要性(金 2008;権ら 2010)に関する 研究など、要支援者における予防的支援の必要性は認識されている。しかし、それ以 外の虚弱な高齢者やすべての高齢者の介護予防・生活支援及び管理、また、それぞれ

105

の対照群に対する多様なプログラムに関する論議は、活発に行われてはいない状況に ある。

したがって、介護予防・生活支援に当たっては、既存の「住民センター」「保健所」

「保険公団」「福祉館」における重複するプログラムの支援を避け、それぞれの機関別 の特徴や差別化されたプログラムの開発が重要である。こられを通して高齢者の機能 に合わせて、サービスの選択権を広げ、サービスの総合化や専門性の向上をはかるこ とができる。また、介護サービスも重要であるが、それより社会参加を通した身体的・

認知的・心理的な機能向上を図る様々な地域保健福祉サービスがより効果的であると 考えられる。

第三。介護予防・生活支援のエリアを邑面洞エリアに基づいた取り組みの検討が必 要である。現在は、地域保健福祉サービスの管理主体は、保険公団と自治体に二元化 されている。また、介護予防・生活支援の対象では、虚弱な高齢者などのすべての高 齢者がその対象にはなっていない。ニッセイ基礎研究所(2012)は、「高齢者の生活に おいては介護保険や生活保護、虐待防止等の制度など、マクロ領域における課題から、

買い物や病院移動、外出、ゴミ処理、電球交換などの日常生活全般に関わるミクロ領 域の生活上の困難までの多様な課題が存在している」と述べている。また、介護予防・

生活支援は、高齢者の生活の場である自治体が担当するのが効果的であり(善 2008 b)、地域の関連機関との調整・協力、また、情報共有のためにも(権ら 2010)、介 護予防・生活支援に当たっては、各自治体が責任主体になることが正しいと考える。

特に、要支援者に対する要介護認定など要支援者の把握は、これまでのように保険 公団が中心になるが、その支援や体系的な管理は、自治体を中心にすべきである。ま た、対象把握の機能は、自治体レベルより地域住民の成果に関わっている邑面洞レベ ル(2-5単位)を用いた把握の仕組みの導入が適切であり、これまでのドルボミサービ スで行う全数調査と調整して行うことが求められる。さらには、全体的管理や評価な どは、それぞれの自治体を中心に行うことが妥当であると考えられる。

このように高齢者の生活機能の差異による特徴と介護予防・生活支援に対する分析 を行うことは、究極的には高齢者の介護費用の増加を抑制し、制度の安定化に影響を 及ぼす重要な貢献になる。したがって、介護予防・生活支援の対象把握のための体制 構築と、彼らの生活機能による接近方法に注目する必要がある。

また、急速な人口の高齢化に対して、公的部門が提供する社会サービスは、変化す る家族の機能と役割を漸進的に補完し、代替すると予測される。これまで家族が提供 していたインフォーマルな支援が、公的領域でマクロからミクロまでの様々な課題に

関連したドキュメント