6 研修要求定義
6.6 戦術ゴールの設定
戦略マップより導出した戦略ゴールを人材育成ゴールモデル上に展開し,実践,技術,哲学について戦術ゴ ールを導出する.
6.6.1 戦略ゴールの展開
図6.5は戦略マップより導出した戦略ゴールを人材育成ゴールモデルに展開した図である.戦略マップの達 成目標を人材育成ゴールモデルの戦略ゴールのトップゴールとし,導出した実践,技術,哲学の戦略ゴールを 人材育成ゴールモデル上に展開する.
図6.4の戦略マップで検討した実践と技術,実践と哲学の戦略ゴール間の関係は,図6.5の人材育成ゴール モデルでは戦略ゴールのトップゴールである戦略目標間の関係で表現する.戦略マップにおける戦略ゴール間 の関係から,技術の戦略ゴールは実践の戦略ゴールである「課題の導出」,「解決策の立案」に対して必要な技 術,ツールを提供している.また,哲学の戦略ゴールは,実践の戦略ゴールである「解決策の立案」「解決策の 適用」に対して判断基準と行動原理を提供している.
6.6.2 戦術ゴールの導出
図6.6は,図6.5の戦略ゴールより戦術ゴールを展開して作成した人材育成ゴールモデルである.戦術ゴー ルは,戦略ゴールを達成するために必要な定量的な育成目標として導出する.
図6.6の人材育成ゴールモデルは,技術,実践,哲学の各戦略ゴールに対して戦術ゴールを導出している.
導出した戦術ゴールが他の戦略ゴールと共有する場合は,両者間の関係を赤色の点線で示している.これによ り,技術と実践,実践と哲学の戦略ゴールの関係が戦術ゴールで表現できたことになる.従って,人材育成ゴ ールモデルの戦術ゴールに着目した研修設計を実施すれば,カリキュラム設計,教授法設計において技術と実 践,実践と哲学の関係を配慮した設計が可能となる.
図6.6の人材育成ゴールモデルにおける実践,技術,哲学の戦術ゴールの詳細な設定方法について説明する.
(1) 技術の戦術ゴール
技術の戦略ゴールは,技術の習得が中心である.そこで,Bloom’s Taxonomyの認知的領域のレベルを適 用して戦術ゴールを設定する.ソフトウェア工学,自動車ソフトウェア工学は,実践における問題解決に必 要な技術であるので,Bloom’s Taxonomy のレベル2の理解に相当する「技術を説明できること」を戦術 ゴールとして設定する.また,エンジニアリングには,分析,最適化など問題解決に必要な基本技術が含ま れている.そこで,エンジニアリングの基礎については,Bloom’s Taxonomy のレベル3の応用と4の分 析に相当する「開発の適用可能性を分析できること」を戦術ゴールとして設定する.
(2) 実践の戦術ゴール
実践の戦術ゴールは,戦略ゴールが示す課題解決のプロセスをさらに細分化し,課題解決を具体的に実施 するプロセスのゴールを設定する.戦略ゴールの課題の導出には,問題の原因分析,その結果から課題の抽 出が必要である.さらに,その課題に対し解決策を作成し,解決策を実行することにより戦略ゴールは達成 できる.以上の観点から実践の戦術ゴールを設定する.
(3) 哲学の戦術ゴール
哲学の戦術ゴールは,トップゴールより展開した4つの戦略ゴールについて課題解決を正しく進めるため に必要な条件を具体的に設定する.ソフトウェア開発に必要な技術者倫理は,安心・安全なシステムを提供 するために技術者に必要な倫理である.関係者と連携,協調していくためには,信頼関係は必要不可欠であ り,関係者との相互理解が求められる.リーダーシップを発揮するには,関係者との相互理解を前提に目標 達成に向けてメンバーを先導する能力が必要である.以上の観点から哲学の戦術ゴールを設定する.
図 6.5 人材育成ゴールモデル(戦略ゴール)
課題に対する 解決策を 提案できている
解決策を 開発に適用 できている
エンジニアリングを 習得できている
エンジニアリングを 適用して開発課題を 解決できている
エンジニアとして 適切な判断,行動 ができている SW工学を習 得できている
技術/ツール判断基準 行動原理 自動車SW 工学を習得 できている エンジニアリン グの基礎を習 得できている
開発の課題が 導出できている
倫理感に 従った判断, 行動ができ ている
リーダー シップが発揮 できている
関係者と 連携,協調 できている
SW工学自動車 SW工学解決策の 提案解決策の 適用
技術実践哲学 技術者 倫理連携・協調リーダー シップ 関係者と 信頼関係が できている
ソフトウェア開発を主導できる技術者 育成目標 戦略ゴール 解決策が 立案できている
課題の 導出解決策の 立案エンジニア リングの基礎信頼関係
図 6.6 人材育成ゴールモデル
課題に対する 解決策を 提案できている
解決策を 開発に適用 できている
エンジニアリングを 習得できている
エンジニアリングを 適用して開発課題を 解決できている
エンジニアとして 適切な判断,行動 ができている SW工学を習 得できている
技術/ツール判断基準 行動原理 自動車SW 工学を習得 できている エンジニアリン グの基礎を習 得できている
開発の課題が 導出できている
倫理感に 従った判断, 行動ができ ている
リーダー シップが発揮 できている
関係者と 連携,協調 できている
SW工学自動車 SW工学解決策の 提案解決策の 適用
技術実践哲学 リーダーシップ 関係者と 信頼関係が できている
ソフトウェア開発を主導できる技術者 育成目標 戦略ゴール 開発への 適用可能性 を分析できる
SW開発 技術を 説明できる
課題を 抽出 できる
解決策 を実行 できる
問題の 原因を 分析できる
関係者と 理解し合う ことができる
目標達成に メンバーを 先導できる
自動車の SW技術を 説明できる
安心・安全な システムを 提供できる
戦術ゴール
解決策が 立案できている 解決策 を作成 できる
技術者 倫理連携・協調 課題の導出解決策の立案 エンジニア リングの基礎
信頼関係