7 研修設計
7.1 カリキュラム設計
図 7.2 人材育成ゴールモデルによる知識,スキルの導出
知識 スキル
課題に対する 解決策を 提案できている
解決策を 開発に適用 できている
エンジニアリングを 習得できている
エンジニアリングを 適用して開発課題を 解決できている
エンジニアとして 適切な判断,行動 ができている SW工学を習 得できている
技術/ツール 判断基準 行動原理 自動車SW
工学を習得 できてい
る エンジニアリン グの基礎を習 得できている
開発の課題が 導出できている
倫理感に 従った判断, 行動ができ ている
リーダー シップが発揮 できている
関係者と 連携,協調 できている
SW工学自動車 SW工学解決策の 提案解決策の 適用
技術実践哲学 リーダーシップ 関係者と 信頼関係が できている
ソフトウェア開発を主導できる技術者 育成目標 戦略ゴール 開発への 適用可能性 を分析できる
SW開発 技術を 説明できる
課題を 抽出 できる
解決策 を実行 できる
問題の 原因を 分析できる
関係者と 理解し合う ことができる
目標達成に メンバーを 先導できる
自動車の SW技術を 説明できる
安心・安全な システムを 提供できる
戦術ゴール
解決策が 立案できている 解決策 を作成 できる
技術者 倫理連携・協調 課題の導出解決策の立案 エンジニア リングの基礎
信頼関係 <知識> SW工学
<スキル> 分析力
<知識> 自動車 SW工学抽象化 能力
<スキル> 技術者 倫理
<知識> 問題解決
<知識> コミュニ ケーション 能力
<スキル> リーダー シップ
<知識> 論理 構成力
<スキル> 問題 解決力
<スキル>
7.1.2 技術のカリキュラム設計
図7.2より,技術の戦術ゴールは,知識についての戦術ゴールとその知識を活用するスキルについての戦術 ゴールに分けることができる.表7.1は,図7.2から導出した技術の育成目標達成に必要な知識,スキルと戦 術ゴールとの関係を示した表である.
知識についての戦術ゴールは,「ソフトウェア開発技術を説明できる」「自動車ソフトウェア技術を説明でき る」である.習得すべき内容は,Bloom’s Taxonomyのレベル2に相当し,対象となるソフトウェア工学,自 動車ソフトウェア工学に対する理解が求められる.
スキルについての戦術ゴールは,「開発への適用可能性を分析できる」である.戦術ゴールの達成には,ソ フトウェア工学や自動車ソフトウェア工学を開発へ適用する際の可能性を判断する分析力が求められる.また,
分析力は,開発現場への技術の適用可能性の判断ばかりでなく,実践の戦術ゴールである「問題の原因を分析 できる」や「解決策を作成できる」にも必要不可欠なスキルである.
表7.1より,技術のカリキュラムは,ソフトウェア工学,自動車ソフトウェア工学についての知識を習得し,
それらの技術の開発への適用可能性を分析できるスキルの向上を目的として設計する.分析力は,表7.1より,
実践における問題の原因分析や解決策作成にも必要なスキルでもある.そこで,技術のカリキュラムは,ソフ トウェアに対する分析技術やプロセスのモデリング,設計,実装の最適化技術も取り入れ,実践における問題 の原因分析,課題抽出に対応できるカリキュラムとして設計する.
表 7.1 技術に必要な知識,スキル
7.1.3 実践のカリキュラム設計
図7.2より,実践の戦術ゴールは,戦略ゴールである「解決策の提案」を達成するための戦術ゴールと,同 様に「解決策の適用」を達成する戦術ゴールに分けることができる.表7.2は,図7.2から導出した実践の育 成目標達成に必要な知識,スキルと戦術ゴールとの関係を示した表である.
「解決策の提案」を達成する戦術ゴールは,「問題の原因を分析できる」,「課題を抽出できる」,「解決策を 作成できる」である.これらの戦術ゴールは一般的な問題解決のプロセスに相当する.そこで,解決策の提案 に必要なスキルを「分析力」,「抽象化能力」,「論理構成力」,「問題解決力」とし,必要な知識を「問題解決」
についての知識とする.解決策は,安心・安全なシステムの提供が前提になるので,「技術者倫理」の知識を追 SW開発
技術を 説明できる
開発への 適用可能性を
分析できる
自動車の SW技術を 説明できる
問題の 原因を 分析できる
解決策を 作成できる ソフトウェア工学 ●
自動車
ソフトウェア工学 ●
分析力 ● ● ●
戦術ゴール
知識
スキル
技術 実践
戦略ゴール エンジニアリングを習得できている エンジニアリングを適用して 開発課題を解決できている 育成目標
カテゴリー
表 7.2 実践に必要な知識,スキル
技術 エンジニア リングを習得 できている 問題の 原因を 分析できる
課題を 抽出できる解決策を 作成できる解決策を 実行できる
開発への 適用可能性 を分析できる
安心・安全な システムを 提供できる
関係者と 理解し合う ことができる
目標達成に メンバーを 先導できる リーダーシップ●●● 技術者倫理●● 問題解決●●● 分析力●●● 抽象化能力●●● 論理構成力●●● 問題解決力●● コミュニケーション能力●●●
戦術ゴール 知識 スキル
実践哲学 戦略ゴールエンジニアリングを適用して 開発課題を解決できているエンジニアとして適切な判断, 行動ができている
育成目標カテゴリー
「解決策の適用」を達成する戦術ゴールは「解決策を実行できる」である.解決策の実行は,立案した解決 策を実際の現場で実行することである.解決策を実行するためには,解決策の提案とは異なり,チームメンバ ーや関係部署の協力や解決策を進める上でのリーダーシップが求められる.そこで,解決の実行に必要なスキ ルを問題解決力,コミュニケーション能力,必要な知識をリーダーシップの知識とする.解決策の実行に必要 な問題解決スキルは,技術の問題解決だけではなく,組織やマネジメントに対する問題解決も含む.
実践のカリキュラムの対象を表7.2の角丸長方形で囲んだ領域で示す.問題の原因分析,課題抽出,解決策 の作成を通して,分析力,抽象化能力,論理構成力,問題解決力の向上を目的とするカリキュラムとして設計 する.また,問題解決を通して実際の現場で必要な技術者倫理の知識や問題解決の知識が習得できるよう設計 する.
解決策の実行については,開発現場での取り組みが中心となるので教育研修システムで取り扱うことは困難 である.解決策実行に必要なリーダーシップの知識,問題解決力,コミュニケーション能力のスキルについて は,哲学でその内容をカバーできるよう設計する.
7.1.4 哲学のカリキュラム設計
図7.2より,哲学の戦術ゴールは,技術者倫理,信頼関係,リーダーシップの3つのカテゴリーに分けるこ とができる.信頼関係は,関係者との連携・協調,リーダーシップの戦略ゴールを達成する戦術ゴールである.
表7.3は,図7.2から導出した哲学の育成目標達成に必要な知識,スキルと戦術ゴールとの関係を示した表で ある.
技術者倫理の戦術ゴールである「安心・安全なシステムを提供できる」には,技術者倫理に関する基本的な 知識が必要である.技術者倫理の考え方や事例から得られる知識が,安心・安全なシステムを提供するための 判断基準となる.技術者倫理の知識は,実践における解決策の作成にも必要な知識である.
信頼関係の戦術ゴールである「関係者と理解し合うことができる」には,相互理解のためのコミュニケーシ ョン能力が必要である.相手を理解し,自分の意見,主張を論理的にわかりやすく表現するコミュニケーショ ン能力は,チームメンバーを目標達成に先導するリーダーシップを発揮する上でも重要なスキルである.また,
コミュニケーション能力は,実践の解決策の実行にも必要な能力である.
リーダーシップの戦術ゴールである「目標達成にメンバーを先導できる」には,コミュニケーション能力の 他に,リーダーシップについての知識[10][15]が必要不可欠である.リーダーの役割,行動原則,価値観を理 解しておくことにより,正しいリーダーシップを実践できる.リーダーシップの知識は,関係者との相互理解 においても相手の立場を理解する上で有効である.また,実践の解決策の実行にもリーダーシップの知識は必 要である.
表7.3より,哲学のカリキュラムは,技術者倫理,リーダーシップに関する知識を習得し,コミュニケーシ ョン能力の向上を目的として設計する.技術者倫理は,課題の解決策の作成に必要な知識であることを踏まえ てカリキュラムを検討する.リーダーシップの知識,コミュニケーション能力は,実践での解決策の実行に必 要な知識,スキルである.哲学のカリキュラムでは,解決策実行に求められるリーダーシップの知識の習得,
解決策のチームメンバーへの説明や説得に必要なコミュニケーション能力の向上を狙いとして設計する.