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4) 5 つの基本的な考え方

7. 今後の進め方

2.2 戦略プランの位置付け及び目的

(1) 福島第一原子力発電所の廃炉に求められる取組

福島第一原子力発電所の廃炉は、通常の原子力発電所の廃炉とは異なり、これまで国内外で経 験したことのないプロジェクトである。炉心損傷若しくは水素爆発又はその両方を経験したプラ ントが 4基あり、既に放射性物質によるリスクが顕在化した厳しい環境下にある(軽水炉で類似 の事故を起こした米国スリーマイルアイランド原子力発電所2号機(以下「TMI-2」という。)と 比較しても、損傷の程度、基数、環境等は、はるかに厳しい状況である)。プラント状況(特に PCV内部)に不明な点が多く、それらが不確定要素となるため、様々な視点からの検討を欠かす ことができない。さらに、それぞれが相互にトレード・オフの関係になるものもある。

このような不確定要素の多い事故炉の廃炉や廃棄物対策は、汚染水対策のように現下における 主要な対策を実施する短期的な取組と数年~数十年程度のスパンを視野に入れた中長期的な取組 を進めながら、将来の在り方も視野に入れて進める必要がある。すなわち、「短期」の取組が不十 分であれば「中長期」や「将来」にも影響を与え得るとともに、「将来」に対する先見性が「中長 期」の取組の条件や内容を制約する可能性があるなど、時間軸上の因果関係が複雑に影響し合う ことがある。例えば、燃料デブリの取扱いや燃料デブリ取り出しに伴い発生する廃棄物の扱いに ついては、保管エリアとも関連するため、汚染水対策の状況にも留意しながら、燃料デブリ取り 出しの検討する必要があることなど時間軸上の全体最適な取組を策定する必要がある。

また、上記に述べたように不確定要素の多い事故炉の廃炉作業は、安全が確保されていること を確認しながら進める必要がある。原子力規制委員会は、福島第一原子力発電所に設置される全 ての発電用原子炉施設における保安措置については、特定原子力施設監視・評価検討会を設置し、

外部専門家も交えて監視・評価を開始させた。特に、地中・海洋への汚染水の漏えい問題につい て、当該検討会の下に汚染水対策検討ワーキングループ等を設置して、汚染水の拡散範囲、拡散 防止策を検討してきた。海側海水配管トレンチ内の高濃度汚染水が除去されたことによって、滞 留水流出による環境汚染のリスクが従来に比べて大幅に低減したことから、原子力規制委員会は、

廃棄物の安定的な管理に係る課題について、今後の長期にわたる廃炉作業を念頭に置き、実施計 画として具体化される以前の段階から検討を加えるための体制として特定原子力施設放射性廃棄 物規制検討会を新たに設置し、汚染水対策検討ワーキンググループを廃止した。

さらに、廃炉を進めるに当たっては、安全の確保だけでなく、廃炉プロジェクト自体の遅れや 風評被害の誘発と言った社会的なリスクも考慮した取組も求められている。

(2) 中長期ロードマップと戦略プランの関係

福島第一原子力発電所の廃炉は、政府の定める大方針である中長期ロードマップに従って推進 されている。中長期計画を示すものとしては、原子力委員会に設置された東京電力㈱福島第一原 子力発電所中長期措置検討専門部会による報告書「東京電力㈱福島第一原子力発電所における中 長期措置に関する検討結果」(2011年12月7日付)が、最初に政府及び東京電力等に対して提示 されたものである。その後、2011年12月21日に原子力災害対策本部のもとに設置された政府・

東京電力中長期対策会議において中長期ロードマップの初版が決定され、3 度にわたり改訂され て現在に至る。(添付2 参照)

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中長期ロードマップでは、廃炉プロジェクトの目標や方針、計画等の重要要素が示される。こ れを受けて、NDFは、目標の実現に向けた取組や判断の考え方、優先順位等を戦略としてまとめ るとともに、東京電力に指導・助言を行う。1 章でも述べたように戦略プランは、具体的な方針 や要件を検討し、戦略を実行するため現場作業、研究等の取組に関する統合的な計画として廃炉 を遂行する東京電力や、研究開発を進めるメーカや研究機関と進捗状況や課題を共有しながら、

取りまとめている。

(3) 戦略プランの目的

戦略プランは、福島第一原子力発電所の廃炉を適正かつ着実に実施する観点から、政府の中長 期ロードマップの着実な実行や改訂の検討に資すること、すなわち、中長期ロードマップにしっ かりとした技術的根拠を与えることを目的としている。

今後、燃料デブリ取り出し等の技術的難度の高い研究開発、現場工事等に関わる技術的検討、

作業が本格化するに当たり、現場状況・研究開発状況の把握・変化に対応した技術的根拠のしっ かりとした実行可能な戦略プランを明示するためには、現場における実務者を含め関係者の間で プロセスや技術の選定・判断の考え方(技術戦略)を共有することが必要である。

戦略プランを取りまとめるに当たっては、様々な技術分野の専門家集団によるレビューの場と しての廃炉等技術委員会及び専門的知見を有する有識者や関係機関の代表者から特定課題への意 見を聴取するための専門委員会を設置している。また、海外の有識者を海外特別委員に任命し、

廃炉等技術委員会に招聘するとともに、様々な技術的会合の場を持つことで廃炉に関する経験や 知識を得ている。

(4) 視点とスコープ

戦略プランの視点とスコープ(対象)は、地元・社会との関係や資金・財務面への影響は考慮 すべき要因の一つであるが、1章で述べた技術的支援というNDFの役割に沿って、技術的な観点 からの検討を中心に行うものとする。また、現場における作業だけでなく、必要な研究開発、現 場工事等に関わる技術的検討等も含めた全体的な計画とする。

戦略プランは、中長期ロードマップの着実な実行と技術的根拠を与えることを目的としている ことから、中長期的な視点から重要な課題である燃料デブリ取り出し及び廃棄物対策を検討対象 とする。

また、検討対象には、福島第一原子力発電所内の取組に加え、上記の燃料デブリ取り出しと廃 棄物対策で必要となる技術の研究開発及びサイト近くで JAEAの研究開発拠点施設(楢葉遠隔技 術開発センター及び放射性物質の分析・研究施設)を含む。また、廃炉が決定した5、6号機を活 用した実証・訓練も含むものとする。

(5) 進捗を踏まえた継続的な見直し

戦略プランには、より具体的に取り組むべき事項を見える化し、関係機関との共有化を図り、

プロジェクトマネジメントを行っていくことが求められている。また、プロジェクト評価として PDCA サイクルを回すとともに、現場状況の変化や研究開発成果等を踏まえて、継続的に評価・

見直しを行い、定期的に戦略プランの改訂を行っていくものとする。

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改訂にあたっては、改訂した部分のみを追加的に提示するのではなく、最新の現場状況や研究 開発成果を共有するためにも一つの完本版として提示する。

(6) 戦略プラン2015の概要

2015 年4月に公表した戦略プラン2015 では、「福島第一原子力発電所における放射性物質に よるリスクを継続的、かつ、速やかに下げる」ことを基本方針とし、燃料、汚染水、廃棄物等の 様々な放射性物質(リスク源)の潜在的影響度(ハザード・ポテンシャル)と閉じ込め機能喪失 の起こりやすさにより表されるリスクの低減戦略を提示した。

主要なリスク源を優先順位により3分類し、そのうち、可及的速やかに対処すべき汚染水等の リスクについては既に対策が進められているため、戦略プランでは周到な準備が必要であり、数 多くの課題にチャレンジしなければならない燃料デブリ取り出し及び長期的な措置を要する廃棄 物対策の検討を実施することとした。

リスク低減に向けて、5つの基本的考え方1:安全 放射性物質によるリスクの低減及び労働安全 の確保、2:確実 信頼性が高く、柔軟性のある技術、3:合理的 リソース(ヒト、モノ、カネ、スペ ース等)の有効活用、4:迅速 時間軸の意識、5:現場指向 徹底した三現(現場、現物、現実)主義、

に基づき、燃料デブリ取り出し及び廃棄物対策に関する技術検討を行う方針を示した。

戦略プランは、その内容が多岐に及ぶことから、内容の網羅性を担保し、論理展開の理解を促 すことを目的に文書全体の論理展開を「ロジック・ツリー」形式で表現している。

複数の燃料デブリ取り出し工法を提示し、その中から優先的に検討する工法を選んだ上で、冠 水・気中各工法の技術要件に対する取組の現状と今後の対応の進め方について整理を行った。

廃棄物対策としては、事故で発生した固体廃棄物の安全かつ安定な保管管理とともに、中長期 を見据えた処理方法や処分概念の検討が重要であることから、国際的に取りまとめられている一 般的な放射性廃棄物の処分に対する安全確保の基本的な考え方とそれに関連して留意すべき処理 の在り方を整理した。

廃炉の研究開発を推進するために、これらの研究開発を一元的に把握・レビューするとともに、

各々の実施主体の特性や期待される成果を踏まえた上で、役割分担の明確化と関係機関の密接な 連携により、全体最適化に取り組んでいくことし、次期開発プロジェクトの計画を取りまとめる ための提言を行った。

(7) 戦略プラン2016の位置付け

2015 年 6 月に改訂された中長期ロードマップでは、燃料デブリ取り出しに関する至近のマイ ルストーンとして、2017 年夏頃の「号機ごとの燃料デブリ取り出し方針の決定」、2017 年度の

「放射性廃棄物の処理・処分に関する基本的な考え方のとりまとめ」が規定されている。戦略プ ラン 2016 は、この中長期ロードマップを円滑・着実に実行するために必要な技術的根拠に資す るものとして、戦略プラン 2015 の考え方や取組の方向性に従って、具体的な考え方や方法を展 開したものである。

これまでの現場作業の進捗や各種調査により明らかになってきた技術的課題を見据え、「方針 の決定」に向けてより現実に即した判断をしていくための検討の方向性を明示するなど、今後取 り組むべき計画を提示する資料となる。