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戦後カラマツ造林の展開

1 北海道林業の現状と戦後カラマツ林業の位置

戦後北海道林業の再出発間もない頃、森林資源状況(1950 年、昭和 25 年)を見ると、森林総面積 546 万haに対して人工造林面積は28万ha、無立木地57万haと人工林率が5%と低く、無立木地が造林地の 2倍弱であった。そして主要造林樹種の造林面積のうちカラマツ12万ha(43%)、トドマツ11万ha〈37%〉

と、この2樹種が主要な人工林資源であった。特に人工林面積の約8割をカラマツ資源とする民有林では 83%が3齢級以下の若齢人工林ばかりだった。1950年の本道の素材生産量は3,502千㎥で、戦前水準〈1934

—36年平均〉の740万㎥の半分に過ぎない。さらに用途別になるとその生産量2,265千㎥であり、一般材 1,590千㎥〈70%〉、次に坑木411千㎥(18%)、パルプ材186千㎥(8%)が主で、このうちカラマツ材の生 産量はわずか66千㎥で、その87%は坑木用となっていた。戦後復興に必要な木材資源は質量とも不足した 状態で戦後をむかえたのである。これらの数値からカラマツ資源が戦後林業を担うという姿は容易に描く ことはできなかったと言えよう。

このような資源状況下で、戦後の北海道林業は、国有林の奥地林開発が国内の木材資源として期待され、

民有林に対しては資源造成が戦後林業政策の最初の課題となったわけである。1950年、戦前期から行われ てきた第2期北海道拓殖計画が1946年に終了し、1950年北海道開発法が制定され、同法に基づいた北海道 総合開発計画の第1次5ヵ年計画〈1952-56年)がはじまった。その中で林業部門は植民地資源の喪失に よる森林資源の回復、造成と木材増産という課題を与えられた。それは地域林業の再建というより、北海 道の未利用資源の開発を重視した国家のエネルギー資源政策であり、これが北海道林業への要請であった。

1950年時点から58年経って2008年(平成20年)の森林資源はどうなったか。全般的に本道の森林面積 は550万haを維持し、人工林面積は約5.4倍の151万haとなり、無立木地は57万haから98千haと大 幅に減少し、戦前期の森林資源の回復、造成はすでに一定水準に達していた。人工造林の増加を押し上げ たのは戦後造林の先行樹種となったカラマツであり、その後、カラマツ造林の減少に代わって増えたのが トドマツである。図7は2008年のカラマツ人工林の齢級別資源内容(北海道林業統計書)である。

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1950年時と比べてカラマツ人工林面積は12万ha→45万haと3.8倍に増加した。民有林(市町村含む)

の造林面積は10万ha→32万haへと増加し、カラマツ造林の71%は民有林に集中することになった。一方 トドマツ造林は78万haと主要な人工造林面積のなかで53%と最も多く、国、道有林はトドマツ人工造林 の54万haの69%を占め、民有林が24万ha(31%)となっている。

戦後、カラマツを主体とした民有林、トドマツ造林を重視した国、道有林という資源構造が出来上がっ た。図7で示すように、Ⅵ齢級以下の造林面積が極端に少なく、Ⅶ齢級からⅨ齢級の造林面積がカラマツ 造林全体の51%(237千ha)を占める、いわゆる齢級の偏重配置が出来上がっている。

これは1960年代初頭から1970年代半ばにかけて造林された“拡大造林”の結果であり、1980年代には“拡 大造林”の終息とともにトドマツ造林が台頭した影響もあるが、1990年代以降カラマツ造林は年間5千ha 前後の水準で推移している。

こうした戦後本道の人工林資源の造成はカラマツ主体に転換したことにより本道林業の木材需給構造が どう変わったのか、2008年を軸に置き、いくつかの指標からカラマツ林業の今日的位置を明らかにし、こ こに至った展開過程は後述する各章の分析に委ねることとする。2000年代の本道林業は、それまでとは異 なる新たな動きが見られた。外材依存率は50%(1992年)を越えているなかで、道産カラマツ材の需要は 2007 年にはじめて 200 万㎥台に乗り、道内木材需要の25%を占めることになった。北洋材の高騰(2008 年)で輸入が急減し、さらに道産カラマツ材にシフトし、道産材供給に回復傾向がみられるようになった。

表10 道内の木材供給と需要量(2008) 単位:千㎥

用途区分

カラマツ材の割合 合 計 内カラマツ材 道産材供給量

4,187

製材用 2,662 1,611

パルプ用 1,525 427

製材需要量 2,658

道産材 1,923 1,000

輸 入 材

丸 太 145 1 製 材 510 2 集成材 80 0 パルプ需要量

4,067

道産材 1,525 427

輸入チップ 2,542 0

合板等消費量 809

合板用道産材 299 255 合板用輸入材 61 0 その他 449 356 注1:「北海道木材需給実績」より作成(供給・需要量に広葉樹材含む)

2:「その他」は丸太から製造される製品の原木消費量及び道外移 出量。

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特にカラマツ人工林の資源内容の成熟化とともに主伐期に達した林分から中小径材ばかりでなく中・大 径材が供給されるようになった。またプレカット工場と一体的に連携する集成材工場が本格的に住宅建築 用材にカラマツ材を挽くようなり、これに連動して大手住宅メーカーや道内の有力な工務店がカラマツ集 成材を住宅建築や大型牛舎の梁や柱に使用しはじめたことなど、道産材としてのカラマツ材に新たな需要 が開かれる時代になった。

2008年という年は、合板用のカラマツ材利用が増加し一般用材との競合するなかでカラマツ丸太の価格 上昇があり、翌年2009年の“リーマンショック”で梱包材需要の激減とカラマツ製材工場の操業短縮など の打撃を受け、カラマツ材をめぐる事情が一変する節目の年でもあった。表10は2008年度における本道 林業、林産業の生産活動の実績をまとめたものである。

表中、道産材供給量(製材用、パルプ用)は 4,187 千㎥、輸入材(輸入丸太、輸入製材、輸入集成材、輸 入チップ)が3,347千㎥、この合計7,534千㎥が同年の総供給量で、このうち道産材の割合55.6%が道産 材供給率となる。木材は製材、パルプ、合板等の需要があり、製材需要部門では道産材が1,923千㎥の72%、

パルプ需要部門では輸入チップが63%の2,542千㎥、合板部門は360千㎥のうち299千㎥が道産材となっ ている。次に供給された道産材並びに輸入材のうちでカラマツ材の占める割合をみると、パルプ用材を含 めた道産材供給量4,187千㎥のうち49%がカラマツ材、輸入材を含めた製材需要量2,658千㎥では38%、

合板用原木の消費量360千㎥は71%とそれぞれにカラマツ材が高いシェアーを占めていることが明らかで ある。

表11によりカラマツ材の用途別素材生産量並びに製材品出荷量をみる。カラマツの素材生産量は2,035 千㎥であるが、用途先は製材、合板、パルプ材で95%を占めている。用途別の製材出荷量422千㎥は、梱 包材やダンネージ、パレット材の一次加工材が337千㎥と80%と最も多く、次に集成材用原版(ラミナ)

が57千㎥である。建築用は7千㎥と少ない。これら加工製品の出荷先であるが、建築用、土木用は主に道 内向け需要、それに対して梱包材やダンネージ、パレット材はほとんどが道外の首都圏中心に販売流通を 確保している。集成材原板も最近では東北地方に流れる傾向が強い。

道産材の供給率が高いとは言っても、加工製品の多くは梱包材等のように一次加工品であり、また最近 では集成材が伸びてはいるが半製品(ラミナ)として東北地方に出荷され、道内で製材品として出荷され ていない現状にある。また近年北洋材(主にカラマツ材)の輸入が急減し、道産材、特にカラマツ材には 競合が回避され有利な状況となり、カラマツ材が製材用としてその割合を高めてきたが、むしろカラマツ 材は一次加工品の原料供給源としての役割が定着しつつある。カラマツ資源の充実化とともに安定供給の 可能性を持ちながらも、低次加工、低価格ゆえに大量供給に応じる低い生産力から脱却できない林業構造 を形成しているのである。

優良広葉樹資源の枯渇化と劣化、そして国有林経営の破綻などで本道林業は国有林から民有林へその軸 足を移してきた。1970年代、800万㎥~1千万㎥の木材生産量であったが、現在では400万千㎥台の水準 の傾向が続いている。これに代わって登場したカラマツ材ではあるが、むしろ低質材生産に依存した特異 な林業地域として定着したと言わざるを得ない。

72 2 戦後復興期の開拓山村の実態

旧小作農が耕作地として利用してきた田畑を自己所有することで地主制から解放されたのとは違い、戦 後、新たに入植した開拓農家に対する未墾地等の売り渡しは、新たな可耕地の荒れた土地の新規開墾から はじまった。開拓地では建設工事が始まり、開拓者にはわずかな開墾補助金、住宅補助金、土地代金の外 に長期低利で年賦償還の営農資金などの特別優遇も与えられていた。しかし農業に経験のない多くの者は 日常の生活資金の乏しさと悪条件の生活環境の改善、向上は進まなかった。

1945年から1960年までの15年間に北海道への入植者数は約4万5千人だった。そのうち1949年までの 5年間に入植した者が60%を占め、その後は増加することなく減少したが、入植は1968年頃まで続いた。

支庁別でみると、入植者は上川、十勝、網走が多く、次いで根室、空知、宗谷など全道各地に拡がってい った。しかし道外からの入植者たちの多くは開墾途中に離農する者が多かったのである1

「道外入植者理由別離農者数」(1953年度)によれば、1946年から8年間に1,908人が離農し、この間 の定着者数は約4千人で31%の離農率だった。離農の理由はさまざまだが、「営農意志薄弱」とか「無断離 農」などが5割弱を占め、離農者に問題があるかのような調査結果であった注2。入植時期が遅れれば遅れ るほど交通が不便で町から遠くに離れ、地力もない土地しかなかった。

「開拓事業入植進度状況」(1953年度)によれば、1945年から1953年の8年間に3万6千人が入植し1 万人の離職が生じ、農業定着率は72%だった。入植者の30%弱が農業を離れたことになる。前章でも触れ たが、国有林の調査「北海道国有林野所属替未墾地の利用現況」(75年)によれば、1948年から1974年ま 表11 カラマツ材の用途・出荷量〈2008) 単位:千㎥、㎥

素材出荷量 2035.6千㎥

製材用 パルプ 坑木 足場 合板 その他

904.3 426.8 11.9 0.1 611.5 81

製材出荷量 421,518㎥

建築用 土木用 梱包材等 ダンネージ・パ

レット 集成材原板 その他 7,282 9,063 221,941 115,298 57,232 10,702 製材出荷先

道内 東北 京浜 中部・静岡 阪神その他

建築用 土木用 梱包材等 ダンネージ・パ

レット 集成材原板 その他 5,886 8,397 18,352 13,132 21,282 3,276

761 0 8,385 9,208 28,540 880

635 666 142,941 71,968 6,291 6,447

0 0 32,891 10,196 0 97

0 0 19,372 10,794 1,119 2

注1:「北海道木材需給実績」より作成

2: 製材出荷先量(千 ㎥)は製材出荷量(㎥)の内訳である。

3:素材出荷業者と製材流通業者の調査回答者数は異なるため数量は一致しない。

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