岡 田 由紀子 キーワード :情報教育、情報リテラシー、理解度、アンケート
Yukiko, OKADA 情報教育研究センター助手
Research for the Computer Literacy of College Students for three years(from2001to2003)
1.はじめに
情報教育研究センター(以下、センターと略す)は、
平成13・14年度に引き続き、「情報活用の基礎」履修 者に対して、「情報活用の基礎100問チェック」という アンケートを実施し、学習内容の理解度を調査した。
「情報活用の基礎」とは、新入生の情報リテラシー を一定レベル以上に揃えることを目的として、本学が 平成13年度から1年生全員(大学人間科学科を除く)
を対象として開講している情報基礎教育科目のことで ある。
同科目は、教員スタッフ、教育レベルを確保するた め、授業を外部委託(アウトソーシング)している。
本稿は、平成15年11月にセンターが実施した、「情 報活用の基礎100問チェック」の調査結果の報告と共 に、3年間の推移を探る。
2.授業の概要 2−1 学習内容
同科目の基本的な学習内容は、平成13年度から余り 変わっていないが、平成14・15年度の学習内容には一 部発展的な内容を追加し、大学入学時に既に基本的な パソコンのスキルを持っている学生のための対策を 行った。また、平成15年度には、理解が追いつかない 学生のための「補充講座」(平成15年5月全7回)を 実施し、全ての学生の学習意欲向上に努めた。(資料 1)
2−2 学習環境
同科目の平成13年度の学習環境は、パソコンの種類 やソフトウェアのバージョンの違い、プリンタが設置 されていない教室があるなど、学習環境に不揃いの問 題があったが、本学が平成14年度に日下記念マルチメ ディア館(以下、MM館と記す)を建設し、同授業が
MM館で実施されるようになった結果、授業間の学習
環境は統一され、以前の問題は解消された。MM館は、館内に1300台(センター管轄は1200台)
のパソコンを配置し、1・2階にはセンター、3・4・
8階にはコンピュータ実習室が15室ある。これらの実 習室は、利用者の人数に応じて隣り合う教室を合併す ることができるようになっている。
また、各部屋にはネットワーク接続されたプリンタ やスキャナが備え付けられ、パソコンで印刷の指示を 出せば、当日内であれば、MM館実習室・オープンフ ロアに設置されているどのプリンタからでも印刷でき る。
さらに、個人ごとに用意されている「個人用フォル ダ」、授業の課題などを受け取るための「getフォルダ」、 レポートを提出するための「putフォルダ」の3種類が 利用できる。
電子メールには、Webメールを利用し、インター ネットが使用できる環境であれば、学内・学外を問わ ず、いつでもどこでもメールのやりとりが可能になり、
携帯電話からも使えるようになった。(資料2)
3.調査の概要
3−1 アンケート調査概要
調査目的 「情報活用の基礎」履修者の学習内容に対 する理解度を探る
調査対象 武庫川女子大学・同短期大学部の1年生 調査方法 マークカードによる回答
後期「初期演習」の授業の中で実施 調査期間 平成13年10月、14・15年11月 3−2 回答者の所属
回答者の所属の内訳を表1に示す。短英の人数が少 ない理由は、その時期本学のアメリカ分校(MFWI)
の英語研修に参加している学生が多いためである。ま た、調査対象者の学習条件をできるだけ揃えるため、
専任教員が授業を担当した平成13年度の大情を調査か ら省いた。大人が同科目に参加していないのは、学科 設置に伴うカリキュラムの関係である。(表1)
表1 学部・学科
学部学科 13年度 14年度 15年度
大日 46 54 55
大英 54 52 57
大教 50 42 42
大健 43 48 38
大環 42 39 43
大食 47 41 37
大情 − 39 31
大音 35 43 51
大薬 55 51 42
短日 38 62 58
短英 24 5 6
短教 49 31 27
短人 58 55 47
短健 58 49 57
短食 49 43 41
短生 52 50 46
合計 700 704 678 3−3 質問項目について
質問項目は、授業で使用した教科書1)2)3)を基に 作成した。質問のタイプには、A)いくつかの答えの 中から正解を1つ選ぶものと、B)指定された操作が できるかどうかを答えるものとがある。A)の正解又 はB)の「はい」の数を全体の人数で割った値(%表 示)をその項目の《理解度》とした。
3−4 質問項目の見直し
平成13年度のアンケート調査には、以下の二つの問 題があった。
① 各領域の項目数が揃っていない
(領域の比較ができない)
② 質問項目がやさしすぎる
(項目全体の30%が理解度90%以上)
そのため、①については、1領域の項目数を20問と し、5領域(パソコン基礎、Excel、Word、ネット ワーク、情報倫理)100問を作成した。
また、②の問題を解決するため、調査項目から理解 度90%以上の 誰でもできるような簡単な項目 を削 除し、新しい項目と入れ替えを行った。
削除した項目の中には、日頃よく使う操作やパソコ ンの画面上に常に見えているボタン操作が多かった。
■削除項目(理解度90%以上)
【パソコン基礎】(8項目)
「パソコンの起動と終了」、「マウス操作(ポイン
ト・クリック・ダブルクリック・ドラッグ)」、「ひ らがなと半角英数の入力切替え」、「入力した文字の 訂正」、「ペイントの絵に色をつける」、「ウィンドウ の最大化・復元・最小化」、「ペイントで簡単な絵を かく」、「日本語入力システム(MS‑IME98)のオ ン/オフ」
【Excel】(6項目)
「Excelの起動と終了」、「文字の左揃え・中央揃 え・右揃え」、「罫線を引く」、「線の太さや線種の変 更」、「文字の太字・斜体・下線」、「入力したデータ の訂正」
【Word】(10項目)
「Wordの起動と終了」、「文字の左揃え・中央揃 え・右揃え」、「文書に名前を付けて保存」、「タイト ルの太字・斜体・下線」、「保存ファイルを開く」、
「新規文書の作成」、「ファイルの上書き保存」、「文 字の削除や挿入」、「マウスを使った文字・行の範囲 選択」、「網掛け・囲み線の設定」
【ネットワーク】(7項目)
「メールの受信」、「メールの送信」、メールソフ ト「Al‑mailの起動・終了」、「メールの作成」、「武 庫川学院キャンパスネットワークの名前(MWU‑
net)」、「Internet Explorerの起動・終了」、「Al‑
mailのユーザー情報の設定」(理解度は50%であっ
たが、本学が平成14年度からWebメールを採用し たため質問項目から削除した。) 以上31項目 4.調査結果と分析4−1 全体
平成14年度と平成15年度の理解度平均は、平成13年 度と比較して若干(約4%)下がっている。しかし、
3‑4で述べた質問項目の見直しを行っていなければ、
学生の理解度は確実に上がっていたと言えよう。
ただし、平成14・15年度の値はほぼ横ばいで、年ご とに学生の理解度が上昇しているとは言えない。(表 2)
表2 全体 理解度 13年度
N=700
14年度
N=704
15年度
N=678
最 高 99 99 98
最 低 10 0 7
平 均 74.1 70.0 70.7 中央値 77.0 73.0 74.0 標準偏差 15.6 16.4 16.0
4−2 理解度の度数比較
平成13年度は質問のレベルが低かったため、上位グループ(理解度80‑100%)が他の年度に比べて約10%多い。平 成14・15年度では、上位グループが3割、中位グループ(理解度60‑79%)が約5割、下位グループ(理解度60%未 満)が約2割を占めている。(図1)
図1 理解度の度数分布
60
40
20
0
学生の割合︵%︶
0.6 1.6 1.0 2.9 3.3 3.7
12.7 16.516.5 14.9
41.3
46.8 48.8
0‑19 20‑39 40‑59 60‑79 80‑100 理解度(%)
42.6
31.8 31.6
13年度 14年度 15年度
次に、各領域の集計結果を報告する。質問項目を平成15年度の理解度の高い順に並べ替えを行ったものが図2〜図 6である。紙面の関係上、質問項目には「答」の記述を省き、「質問」のみを記している。先頭の丸数字は順位を示 す。これ以降、本文の「情報活用の基礎」を「授業」と略す。(図2〜図6 各①〜⑳)
4−3 パソコン基礎
3年間を比較すると、「①授業で使用したパソコンの種類」、「②ファイルのコピー」、「⑥新しいフォルダの作成」、
「⑧パソコンの周辺機器」、「⑰タッチタイピング」に2割以上の顕著な理解度の上昇が見られる。
また、「③ファイルの削除」、「⑬読みのわからない漢字の入力」、「⑲Aドライブ(A:)のファイル一覧表示」といっ た項目も1割以上上昇しており、下線に示すように、ファイルやフォルダ関連の項目の理解が深まっている。
一方、「⑱新しいフロッピーディスク(FD)のフォーマット」、「⑳3.5インチFD(2HD)1枚の容量」など、フロッ ピーディスクに関する項目の理解度が2年連続で下降傾向にある。(図2 パソコン基礎①〜⑳)
図2 パソコン基礎
パソコン基礎① 「情報活用の基礎」
で使用したパソコンの種類は?
78.1
98.4 98.1
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎② ファイルのコピーが できる
65.3 65.3
92.9 94.0
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎③ ファイルの削除がで きる
82.0 93.8 93.7
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎④ 通常、デスクトップ にあるアイコンを一つ選びなさい
88.7 92.9 91.7
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑤ 記号(〒・★)の入力 ができる
81.9 88.6 91.4
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑥ 新しいフォルダの作 成ができる
59.3
87.6 86.9
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑦ 描画ツール「ペイン ト」の起動と終了ができる
84.9 80.0 83.8
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑧ パソコンの周辺機器 を一つ選びなさい
81.3 83.2 30.6
30.6
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑨ ゴミ箱を空にするこ とができる
76.9 87.2 81.0
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑩ 「ペイント」の絵をデ スクトップに保存することができる
79.9 77.3 77.9
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑪ ソフトウェアを一つ選 びなさい
67.7 71.6 74.5 68.0 68.9 73.6 67.7 71.6 74.5
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑫ ファンクションキーを 利用した文字の変換ができる
68.0 68.9 73.6 0
50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑬ 「読み」のわからな い漢字の入力ができる
47.7 56.4 63.1 0
50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑭ トラブルが起こった 時にWindowsの強制終了ができる
57.8 62.4 0
50 100
13年度無 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑮ 操作がわからないと きにオンラインヘルプの利用ができる
47.0 51.3 52.9 0
50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑯ 「情報活用の基礎」
で使用したOSの種類?
56.1 50.3 52.9 0
50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑰ タッチタイピングがで きる
45.5 41.6 16.9
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑱ 新しいフロッピーディ スク(FD)のフォーマットができる
49.4 37.9 35.7 0
50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
パソコン基礎⑳ 3.5インチFD(2HD) 1枚の容量はいくらですか
53.9
37.1 31.7
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
% パソコン基礎⑲ Aドライブ(A:)のファ イル一覧表示ができる
36.9 33.9 23.9
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
4−4
Excel
「⑬表の印刷」、「⑱絶対参照と相対参照の設定」が2割以上の大きな伸びを見せており、「⑧表示形式(¥、3桁区 切りカンマ、%)の設定」、「⑪データの移動やコピー」、「⑫範囲選択を利用したデータの消去」、「⑳授業で使用した
Excelの種類」についても理解度が1割以上上がっている。
しかし、「⑭罫線を消す」、「⑮斜め線を引く」の罫線関係の項目に理解度が下がる傾向がある。(図3
Excel①〜⑳)
図3
Excel
Excel① ファイル(ブック)の保存がで きる
89.1 94.3 95.0
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
Excel② ファイル(ブック)を開くこと ができる
86.6 94.2 94.7
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
Excel③ セルを結合して中央揃えに することやその解除ができる
86.6 93.0 94.2
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
Excel④ 指定範囲の合計を求めるこ とができる
88.3 90.3 93.5
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
Excel⑤ 行や列幅の変更ができる
88.6 86.5 92.0
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%
Excel⑥ 計算式の入力ができる
85.3 88.4 90.4
0 50 100
13年度 14年度 15年度 理
解 度
%