• 検索結果がありません。

オーサリングツールを用いた電子教材の開発

ドキュメント内 情報教育研究センター年報 2003 (ページ 33-38)

Eiji HAMATANI 情報教育研究センター長 人間科学科教授

Development of Electric Teaching Materials Using by Authoring Tools

1.はじめに

本学においては、2002年度から利用が始まった日下 記念マルチメディア館(以下、MM館)の完成に伴い、

学内の情報環境は一段と整備された。最新の実習環境 のもとで情報基礎教育が全学規模で実施できるように なり、学生の情報リテラシーの向上を図ることが可能 になった。また、1998年度から継続してマルチメディ ア教室の整備を行った結果、多くの授業で利用される ようになった。さらに、電子メールの利用はいうまで もないが、WEBサーバー、ファイルサーバーを活用 して、授業関連の資料を提供する試みも増えつつある。

こうした教育の情報化は、多くの教員の努力に拠る ところが大きい。とりわけ、教材作りに要する労力は 相当なものになる。従来の印刷物に加え、ワープロで 作成した資料やパワーポイントによるプレゼン資料の 準備、さらにはWEBによる参考資料の提供など、次 第に情報インフラを活用する割合が増えるにつれ、作 成と準備に要する時間と労力は急増する。

こうした状況を緩和し、より高度な支援が行えるよ う、情報教育研究センターでは、MM館が完成した 2002年度より、教材作成用のオーサリングツールの開 発と、学内教員の協力を得て、ツールを利用した教材 開発および学習場面での試用に取り組んできた。

本稿では、オーサリングツールの概要と、開発され た電子教材の概要について報告する。

2.教材開発とは

ここでの教材開発とは、授業に関連して利用される 様々な素材(教科書、プリント、スライド、板書、口 頭説明、演示など)を電子化して、より効果的に授業 や学生の学習に利用できるようにすることをいう。素 材としては、このほか、ビデオ、CDなども個別的に 利用されるものも含まれるが、教材開発というときに は、複数の素材を組み合わせて、利用する状況を想定 している。

さらに、教材開発を具体化する過程で、各種の情報 技術を活用することから、教材開発は素材の電子化と

いう意味合いを持つ。正確には、素材が文字情報、図 や絵・写真などのグラフィックス情報、音楽・音声・

音などのサウンド情報、映像などのビデオ情報のいず れであっても、コンピュータを介した処理によりデジ タル化するプロセスが伴う。

こうした「教材の電子化」に密接に関連することと して、授業支援環境、学習支援環境の実現ということ が重要になる。例えば、教材を電子化したとしても、

教室で黒板とチョークしか使えないのであれば、電子 化したメリットは活かせない。従って、教室環境がマ ルチメディア情報の提示に対応していることが必須に なる。この点では、本学では多くの教室の「マルチメ ディア化」が実現している。この意味で、教室のマル チメディア化は授業支援環境の大きな部分を占める。

また、キャンパスネットワークやインターネットの 利用も日常化していることから、ネットワーク環境を 前提とした教材データベースの構築や、電子メール、

電子掲示板、電子会議室、さらにはVOD(ビデオオ ンデマンド)などの機能の整備は、授業支援という以 上に、学生の学習活動を支援する環境として利用でき るであろう。

このように考えると、教材開発とは直接的に授業場 面で利用するだけでなく、課外の学習活動においても 学生が活用できる学習素材の開発という意味合いが含 まれてくる。

3.教材電子化の特徴

既存の様々な教材を電子化することは、例えば、印 刷物に記された文字情報などをワープロのデータに変 換するということだけを意味するのではない。電子化、

正確にはデジタル情報化することにより、次のような 特徴が生まれてくる。

① 複製が容易になる。

この点は、功罪両面が顕著になってくる特徴であ る。長所としては、必要に応じ多数の複写を作れる 上、複写後、一部手直しや差し替えなどを行うこと で、多種類の資料を短時間で準備できる。

問題点としては、著作権の侵犯を惹き起こしやす

いことが指摘できる。紙媒体を主とした教材の場合 には、引用部分があっても、配布が物理的に閉じら れた教室という空間であり、かつ受講学生が対象で あれば、従来から認められている教育的利用の範疇 とみなされるが、デジタル情報化した素材をネット ワーク環境で使うとなると、著作権上は疑義が出て くる。つまり、不特定多数の利用者を想定していな いか、していないとしても利用に際して、特定メン バー(受講学生)に限定できる技術的措置がとられ ているかなどが問題になる。

② 複数の素材との連携が容易になる。

文字、図や絵、サウンド、動画などいわゆるマル チメディア情報と呼ばれる情報形態では、教材の構 造や授業での利用場面を想定して、各種の素材をリ ンクすることが容易になる。

例えば、パワーポイントを利用することに限って も、単に文字情報のほか、写真や音声もその中で扱 うことができる。必要ならば動画の再生も可能にな る上、説明の状況に応じて、以後の展開を変えてい くこともリンクボタンを設定することで実現できる。

また、パワーポイントを実行しているパソコンがイ ンターネットに接続されているのであれば、参考資 料としてインターネット上のWEBサイトへリンク することも可能である。このように、パワーポイン トというソフト環境に限っても、多様な教材展開が 可能になり、その展開も含めた全体が新たな教材と いう意味を持つ。

③ 教材の蓄積・管理が容易になる。

情報がデジタル化されたことで、様々な電子媒体 に記録できるようになる。FD、MD、MO、CD‑

ROM、メモリーカードなど、使用場面に応じて使

い分けができる。さらに、ハードディスクの小型大 容量化が進んだため、これまでであれば膨大なファ イル(文具としての)を必要とした資料の保存管理 が、手のひらに乗る大きさのハードディスクに収 まってしまう。

こうした大量の情報の記録・蓄積に不可欠の条件 としては、記録の永続性、雑音などに対する耐性、

そして検索の容易性が挙げられる。

④ 教材の再利用が容易になる。

この特徴は①と似通っているが、この特徴はむし ろ授業支援環境、学習支援環境の整備に伴って、そ の有効性が発揮されてくる。第2章でも述べたよう に、教材の電子化は、単なる素材の情報形態の変換 ではない。その情報へのアクセス形態の変更も伴う ものである。その結果、教授者である教員も学習者 である学生も、双方が新しい情報空間の中で、より

効果的に教授=学習行動を行うことが可能になる。

4.オーサリングツール開発の考え方

一般に、オーサリングとは、文字、画像、音声、動 画などの種類の異なる素材データを組み合わせて、一 つのソフトウェア(コンテンツ)として作り上げるこ とをいう。実際には出来上がったソフトウェアは、

WEBサイトにアップロードする、あるいは、CD

ROMやDVD‑ROMに書き込んだ状態で利用する。

こうしたコンテンツ作りのために用いられるソフト ウェアをオーサリングソフト(オーサリングツール)

と呼ぶ。例えば、パワーポイントもオーサリングソフ トの一種といえる。市販されているオーサリングソフ トは多数あるが、素材データとして動画を含む場合、

動画データを円滑に編集できることが必須になる。動 画データは編集作業を行う際、パソコンに相当負荷を かけるため、ハードウェアの性能が十分でないと実用 にならない。それに加え、オーサリングソフトの編集 機能が優れていないと、作業効率は低下する。

さらに、教員自身がオーサリング作業を行う場合、

動画のノンリニア編集ソフトによるカット編集は非常 に敷居が高い。この点を考慮した上で、簡単に編集で きるものでないと、本格的な教材開発は実現しない。

以上のことから、学内教員の教材の電子化さらには 教材開発を支援するため、市販のオーサリングソフト を導入するのではなく、企業の開発部門と協力し、独 自にオーサリングソフトを開発することに着手した。

5.教材オーサリングの流れ

本稿で述べる教材開発では、学内で日常的に行われ ている授業の様子を、映像として記録し、編集段階で さらに付加的な情報を追加し、ひとつのコンテンツと して仕上げることを想定している。

実際のオーサリングの流れは、以下のようになる。

① 授業の様子を撮影

② 映像データの編集

③ 教材のオーサリング

④ 教材の登録・利用

① 授業の様子を撮影

当面は、講義形式の授業を対象とし、実際の授業 をDV形式のビデオカメラで撮影する。撮影は人手 で行っているが、将来的には自動撮影を想定している。

② 映像データの編集

授業1コマは90分であるが、取り組み2年度以降 はオンデマンド配信を計画しているため、前処理と して、ノンリニア編集ソフトなどにより、不要部分 の削除を行い、映像データのカット編集を行う。

ドキュメント内 情報教育研究センター年報 2003 (ページ 33-38)

関連したドキュメント