第2章 魚類型ロボット用泳動機構の開発
2.6 魚類型ロボットの運動性能の評価
2.6.3 急旋回泳動実験結果
Fig. 2.5.3の回路図に示したように、急旋回動作と急停止動作において、2か所以上
のフィン機構を同時に駆動させると電流が分流してしまい、十分なフィンの変形量が得 られない。このため、複数のフィン機構を同時に動作させる際にはそれぞれの駆動タイ ミングをずらして、複数の人工筋肉に同時に電流が流れないようにする。各鰭の駆動タ イミングを考慮した左急旋回動作における胴体駆動用サーボモータとフィン機構駆動 用人工筋肉に対する指令値の時刻歴をそれぞれFig. 2.6.5とFig. 2.6.6 に示す。
Fig. 2.6.5 Control signal of the servo motor during left quick turn motion
Fig. 2.6.6 Control signal of the fins during left quick turn motion
左急旋回動作において、サーボモータの腕は旋回開始直後に左側に約 60°動かし、
続いて元の状態に戻す。また、複数の人工筋肉に同時に電流が流れないように、尾鰭と 胸鰭のフィン機構の駆動タイミングをずらしている。Fig. 2.6.5に示すように、急旋回 動作時にサーボモータが腕の角度を元の中立状態に戻し始める時間は動作開始から
0.25sec後である。このため、フィン機構周りの相対流速が高くなるタイミングでフィ
ンを駆動させるためには、サーボモータの腕の角度が元の状態に戻り始めるまでに全て のフィン機構の動作を完了させている必要があるため、フィン機構の駆動は動作開始か
ら0.25sec以内に収めている。このときの各フィン機構の駆動順序は、フィンが発生す
る機体周りのモーメントの大きさに影響を与えると考えられるが、この影響は小さいと 予想できるので、ここではフィン機構の駆動順序は特に理由なく決定している。
実験では、動作開始から動作終了までにおける機体の回頭角と平均回頭角速度を調査 した。フィン機構を使用した場合と使用しない場合での左右の急旋回実験の結果を、そ
れぞれFig. 2.6.7 、Fig. 2.6.8に示す。ただし、それぞれの図における角度は絶対値を
示している。
Fig. 2.6.7 Turning angle during left quick turn
Fig. 2.6.7 及びFig. 2.6.8 において、急旋回動作の完了のタイミングを胴体及びフィ ン機構が旋回開始時の中立状態に戻った瞬間とすると、左右の急旋回共に、動作開始か ら急旋回動作完了までの時間は約 0.6sec であった。左急旋回において、動作完了時に おける機体の回頭角度の変化はフィン機構を併用する場合に 42.4°であり、フィン機 構を使用しない場合は 17.7°であった。右急旋回における機体の回頭角度の変化は、
フィン機構を併用する場合に46.3°、フィン機構を使用しない場合に19.3°であった。
急旋回動作における機体の平均回頭角速度は、フィン機構を使用しない場合は左が 29.5deg/sec、右が32.2deg/secであり、フィン機構を併用する場合は左が70.7deg/sec、
右が77.2deg/secであった。このように、急旋回動作においてフィン機構を併用すると
使用しない場合に比べて、平均回頭角速度が約2.4倍増加することが確認できた。また、
サーボモータの往復動作の前半ではフィンの使用の有無で回頭角度の変化は少ないが、
動作の後半では回頭角速度がフィンの使用の有無に大きく影響されることがわかった。
これは、フィン機構の動作はサーボモータの往復動作の前半に完了するため、フィン機 構により機体周りに発生した渦が動作の後半において、機体の旋回性能に影響を与えて いるためであると考えられる。