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人工筋肉の配置方法の検討

ドキュメント内 藤 原 慎 平 (ページ 35-42)

第2章 魚類型ロボット用泳動機構の開発

2.4 泳動能力を向上させるためのフィン機構の検討

2.4.2 人工筋肉の配置方法の検討

フィン機構を駆動させたときのフィンの屈曲(Fig. 2.2.6におけるベンディング)及 び鰭先の形状は、人工筋肉の配置を変えることによって変化する。ここでは、急旋回と 急停止の動作時にフィンの鰭先の形状が各動作に適した形状となる人工筋肉の配置を 求めるため、3通りの人工筋肉の配置パターンを比較する。それぞれのパターンでの人 工筋肉配置をFig. 2.4.2に示す。

Fig. 2.4.2 Arrangements of artificial muscle on the fin

ここでは、フィンの鰭先の形状の影響を確認するために、各配置パターンにおいて、

ベンディング量は等しくフィンの鰭先の形状のみが異なる配置を採用している。配置方 法の詳細については後で述べる。

面状の抵抗体において、高い抗力を発生させるために面の向きを相対流れの向きに直 交させた場合、面の断面形状は凹または凸の形状と比較して平面形状の方が抗力係数が 大きくなり、高い抗力が発生する[36]。従って、フィン機構の鰭先の形状を平面に近づ けることにより、より高い抗力を発生させることが可能となる。

ここで、通電した BMF150の微小要素に注目すると、それぞれの微小要素での発生 力と収縮率は場所に関わらず全ての微小要素で同じである。従って、フィン機構内の

BMF150 に通電した場合、固定されてない鰭端部においてフィンに発生する曲げモー

メントは一様であると仮定することができ、通電時のフィンは単純曲げ (simple

bending) に近い状態であると考えられる[37]。このため、通電時のフィン機構の微小

要素における曲げ平面はFig. 2.4.3のようになる。Fig. 2.4.3(b)において、dlは人工筋 肉の微小長さ、a はフィンにおけるポリ塩化ビニルシートの厚さの半分(0.1mm)、dθ は微小角度、ρは曲率半径とする。

Fig. 2.4.3 (a) Arrangement of artificial muscle on fins and (b) conceptual diagram of deformation in the dl-cross section of fins

Fig. 2.4.3(b)において、変形前に互いに平行であった微小要素dlにおける左右端の断面

は変形後には図のように傾斜し、ポリ塩化ビニルシートの凹側の面は縮み、同材の凸側 の面は伸びる。それらの中間に伸縮しない線素があり、この伸縮しない線素を含む x-z 面に平行な面を中立面という。単純曲げにおける中立面の曲率半径が上記のρとなって おり、この状態において、

となる。ここで、Lは収縮前の人工筋肉の長さ、ΔLは人工筋肉の長さの変化量、εは人 工筋肉の歪みを表す。ΔL 及び ε はフィンの曲げ剛性によっても変化するが、BMF150 は単位体積当たりの発生力が非常に高く、今回製作するフィンの厚さは約 0.2mm と薄 いため、フィンの曲げ剛性はBMF150の収縮量にほとんど影響を与えないと仮定する。

フィンは人工筋肉の片側のみに接しており比較的容易に曲げることができるため、人 工筋肉の収縮量に影響しないが、人工筋肉をフィンに固定する弾性接着剤は人工筋肉の 全面をコーティングするため、少なからず人工筋肉の収縮量に影響を与えると予測でき る。Table 2.3.2にBMF150の収縮時の歪みを示しているが、これの値には弾性接着剤 の影響が含まれていない。そこで、弾性接着剤によるコーティングの影響を実験によっ て確認する。Fig. 2.4.4に実験の概念図を示す。

𝜀 = 𝑎 d𝜃 d𝑙 = 𝑎

𝜌 d𝜃 d𝜃 = 𝑎

𝜌 (2.4.1)

𝜌 = 𝑎 𝜀 = 𝑎𝐿

∆𝐿 (2.4.2)

Fig. 2.4.4 Experiment for measuring the contraction of the artificial muscle

実験において、コーティングに使用した弾性接着剤の体積(人工筋肉の単位長さ当た りの接着剤の体積)はできるだけフィン機構に使用する量と同じ値にした。人工筋肉の 片端につないであるオモリは人工筋肉を弛ませないためのものであり、重すぎると人工 筋肉の収縮量が小さくなるため、測定する収縮量に影響を与えないように配慮し、50g のオモリを使用している。また、魚類型ロボットに搭載する予定のバッテリを使用して

11.1Vの電圧を人工筋肉に印加する。実験結果より、ΔLは人工筋肉の全長の0.24%とな

り、εの値が0.0024と求められた。

式(2.4.1)と式(2.4.2)にファインの厚さと得られたεの値を代入することで、フィン機 構の微小要素における曲率半径 ρ の値を導出することができる。このことより、Fig.

2.4.5に示すフィン機構の鰭先の形状を、式(2.4.3)、式(2.4.4)用いて推定する。

Fig. 2.4.5 Estimation of the deformation of fin

𝜌

1

= 𝑎𝐿

2

∆𝐿

2

(2.4.3)

𝐿1と𝐿2はFig. 2.4.5に示すそれぞれの箇所の人工筋肉の長さ、bは機体に固定されてい る箇所において平行に配置されている人工筋肉の間隔、𝐿1𝑧は𝐿1のz方向への投影長さ、

∆𝐿1𝑧 、∆𝐿2 、∆𝑏はそれぞれの長さに対する人工筋肉の収縮量、𝜌1と𝜌2はそれぞれ、𝐿2の みもしくは𝐿1と𝐿2の両方の収縮によって発生する鰭先部分の曲率半径を表す。鰭先の変 形だけでなくFig. 2.2.6に示すような胸鰭の様々な運動ついても同様に推定することが できる。また、フィン機構のxy平面の曲率の計算方法もこの計算方法と同じ原理で実 行することができるが、本研究では全ての人工筋肉の配置パターンにおいてxy平面の 曲率は同じになるため、計算及び検討は省略している。

この方法を用いて、Fig. 2.4.2で示した3種類の人工筋肉の配置を持つそれぞれのフ ィンの通電時の鰭先のzy平面の形状推定結果をFig. 2.4.6に示す。

Fig. 2.4.6 Estimated trailing edge shapes of fins deformed in air

次に、本推定方法の有効性を検討するため、通電時のフィン機構の鰭先の形状をカメ ラで撮影する実験を実施した。実験の模式図をFig. 2.4.7に示す。

Fig. 2.4.7 Experiment of the deformation of fin in air

実験では、フィン機構が駆動している様子を約 45°後方よりカメラで撮影し、鰭先 の形状を観測した。また、フィン機構内の人工筋肉への通電時間は 0.1sec とし、カメ ラの動画撮影設定をハイスピードモードにして、フィン機構の瞬間的な動作をスロー モーションで撮影した。ここで、フィン機構の鰭先には直径3mmの球体形状のマーカ ーを5カ所に設置している。観測されたフィン機構の鰭先の形状を推定結果と合わせて Fig. 2.4.8に示す。

Fig. 2.4.8 Estimated and measured trailing edge of fin in air

それぞれの人工筋肉の配置において、観測値と推定値は概ね一致しており、本推定法の 有効性が確認された。

フィン機構は弾性体であり、水中では流体力を受けて変形するため、次に、同様の実 験を水中で実施し、鰭先の形状を確認した。観測結果と推定結果を比較してFig. 2.4.9 に示す。

Fig. 2.4.9 Estimated trailing edge of fin in air and measured that in water

実験では、流体力の影響によって鰭先の形状が相対流れの下流方向にたわんでいるこ とが確認できた。人工筋肉の配置の異なる(A)、(B)、(C)の各フィンにおいて、水中で の形状が最も平面に近いのは(B)のフィンであるため、製作する機体には(B)のフィンを 採用する。

次に、(A)、(B)、(C)の各フィンを静水中で駆動させたときにフィンに発生する流体 力を、実験において計測した。本実験の概念図をFig. 2.4.10に示す。

Fig. 2.4.10 Measurement method of hydrodynamic force acting on a fin

図中、x、y、z方向の正の向きはそれぞれフィンの前方、奥行き方向の奥側、鉛直上 向を表す。フィン機構を張り付ける基盤として厚さ5mmのアクリル板を使用し、人工 筋肉への通電時間は0.1secとする。印加電圧は11.1Vとし、(A)、(B)、(C)に設置され た人工筋肉の長さはそれぞれ11cm、12cm、14cmである。このため、通電時の電流の 値はそれぞれ1.65A、1.51A、1.30A となり、フィン機構駆動時の消費電力はそれぞれ

18.3W、16.8W、14.4W であった。(A)(B)(C)それぞれのフィン機構について計測され

た力のx、y方向成分の時刻歴をFig. 2.4.11に示す。

Fig. 2.4.11 Drag acting on fins

実験結果より、最も高い抗力を発生させているフィンは(B)であることが確認できる。

従って、機体の製作において胸鰭及び尾鰭として使用するフィン機構には(B)の人工筋 肉の配置を採用する。

いずれのフィンの場合でも、Fy に比べて Fx の方が大きくなる傾向にあった。Fig.

2.3.3 で示したフィン機構を併用した急旋回動作において、機体の重心位置とフィン機

構により発生する抗力の作用点および向きを考えると、胸鰭ではFx成分が、尾鰭では

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