第 3 章 コンクリートの応答加速度に対するスランプの影響
3.3 実験結果および考察
3.3.2 応答加速度測定結果
測定した応答加速度を秒単位で解析した結果を図 3.7~図 3.9に示す。
1ch
は内部振動機表面の応答加速度を示しており,内部振動機挿入位置から100mm
の位置に
2ch
,200mm
の位置に3ch
,300mm
の位置に4ch
,400mm
の位置に5ch
,500mm
の位置に6ch
とした。内部振動機表面の応答加速度は,いずれのスランプの場合においても,振動 開始直後から,内部振動機がコンクリートの挿入されるため,急激に低下して いる。図 3.7および図 3.9に示すように,スランプ
5.5cm
および10.5cm
での 内部振動機表面の応答加速度は,振動開始初期に低い値を示し,時間が経過す るにつれて徐々に値が増加する傾向が認められた。これは,振動開始直後はコ ンクリートが十分に締め固まっておらず,内部振動機が振動する際の抵抗が大 きく,振動開始から時間が経過するにつれて,コンクリートが液状化し,内部 振動機表面に対する抵抗が減少していくため,時間の経過に連れて内部振動機 表面の応答加速度は増加していくと考えられる。しかし,図 3.8に示すよう に,スランプ8.0cm
の場合,応答加速度は振動開始直後に急激に低下した後,時間の経過による変化は認められなかった。スランプ
8.0cm
の場合,振動開始 から初期の段階でコンクリートが十分に締め固まり,それ以上内部振動機の表 面に対する抵抗が変化しなかったと考えられるが,スランプ8.0cm
よりもやわ らかく締固まりやすいと考えられるスランプ10.5cm
の場合に,時間の経過と ともに応答加速度が増加しているため,現在のところ実際の原因は不明であ る。図 3.7に示すように,スランプ
5.5cm
の場合,2ch
(振動機から100mm
)お よび3ch
(振動機から200mm
)で振動開始直後に応答加速度の値が急激に増加 して,4ch
~6ch
(振動機から300mm
~500mm
)では急激な変化は認められなか った。2ch
では応答加速度が時間の経過とともに減少し,3ch
ではばらつきはあ るが時間が経過しても一定な値を示し,4ch
~6ch
では時間の経過とともに増加 する傾向が認められた。図 3.8に示すように,スランプ
8.0cm
の場合,2ch
~5ch
で振動開始直後に応 答加速度の値が急激に増加して,6ch
では急激な変化は認められなかった。2ch
および3ch
では応答加速度が時間の経過とともに減少し,4ch
で一定,5ch
およ び6ch
で時間の経過とともに増加する傾向が認められた。図 3.9に示すように,スランプ
10.5cm
の場合,2ch
および3ch
で振動開始直 後に応答加速度の値が急激に増加し,4ch
~6ch
では急激な変化は認められなか った。2ch
および3ch
では振動開始から30
秒まではばらつきは大きいが,一定 の値を示し,その後増加する傾向を示し約55
秒から減少する傾向が認められ46
た。
4ch
では応答加速度は一定の値を示し,5ch
および6ch
では時間の経過とと もに増加する傾向が認められた。スランプ
10.5cm
の2ch
および3ch
では応答加速度の値が時間の経過とともに一定となったあと増加し減少する傾向が認められたが,いずれのスランプの場 合においても,内部振動機からの距離が近い位置では,応答加速度の値は時間 の経過とともに減少し,振動機からの距離が
200mm
~300mm
の位置で時間の 経過での変化はなく,それよりも遠い位置では時間の経過とともに増加する傾 向が認められた。振動開始から時間が経過すると,振動によりコンクリートは 液状化しており,内部振動機によりコンクリートの与えられるエネルギーの合 計は常に一定であり,振動開始初期に内部振動機表面の抵抗は大きく,その分 のエネルギーが内部振動機から近い位置で応答加速度としてあらわれる。締固 めが進むとコンクリートの抵抗が弱まり内部振動機からの距離が近い部分で応 答加速度が時間の経過とともに減少し,減少した分の振動エネルギーが内部振 動機から遠い位置に移動するため,時間の経過とともに内部振動機から遠い位 置では応答加速度が増加していくと考えられる。47
300 320 340 360 380 400 420 440 460 480 500
0 10 20 30 40 50 60 70
応答加速度 (m/ s 2 )
振動時間 (s)
1ch
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
0 10 20 30 40 50 60 70
応答加速度 (m/ s 2 )
振動時間 (s)
2ch 3ch 4ch 5ch 6ch
図 3.7 スランプ 5.5cm の応答加速度
48
300 320 340 360 380 400 420 440 460 480 500
0 10 20 30 40 50 60 70
応答加速度 (m /s 2 )
振動時間 (s)
1ch
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
0 10 20 30 40 50 60 70
応答加速度 (m /s 2 )
振動時間 (s)
2ch 3ch 4ch 5ch 6ch
図 3.8 スランプ 8.0cm 応答加速度
49
300 320 340 360 380 400 420 440 460 480 500
0 10 20 30 40 50 60 70
応答加速度 (m/ s 2 )
振動時間 (s)
1ch
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
0 10 20 30 40 50 60 70
応答加速度 (m /s 2 )
振動時間 (s)
2ch 3ch 4ch 5ch 6ch
図 3.9 スランプ 10.5cm 応答加速度
50
(2)各時点における応答加速度比較
図 3.10~図 3.15にスランプ
5.5cm
,8.0cm
および10.5cm
における振動機か らの距離が10cm
~50cm
の位置で,振動開始から5
,10
,15
,20
,25
および30
秒の時点での応答加速度を示す。スランプ
5.5cm
の場合,5
秒の時点では振動機からの距離10cm
で他のスランプと比較して小さな値を示しているが,
10
秒および15
秒の時点で大きな値 を示している。また,その後20
秒および25
秒では再び他のスランプの場合と 比較して小さな値を示し,30
秒の時点では大きな値を示した。振動機からの距 離が30cm
~50cm
の位置では多少変化はあるものの,大きな変化は認められな い。スランプ
8.0cm
およびスランプ10.5cm
の場合においても,スランプ5.5cm
と同様に振動機からの距離が
10cm
の位置では応答加速度の増減が認められた。また,いずれの場合においても振動機から距離が離れるほど応答加速度は減少 していく傾向が認められるが,スランプ
10.5cm
の場合に,距離50cm
の応答加 速度が40cm
の値より大きくなっている部分がある。これは,内部振動機によ る振動の反射波が影響したためと考えられる。しかし,スランプ5.5cm
およびスランプ
8.0cm
の場合には反射波の影響は明確には確認できず,また,反射波の影響を低減するために型枠内側にスタイロフォームを設置しているにもかか わらずこのような傾向が認められたことから,スランプ
10.5cm
のコンクリー トは振動による反射波の影響を受けやすいことがうかがえる。もしくは,既往 の研究1)でスランプ16cm
の場合に,振動機からの距離20cm
の応答加速度より も,距離30cm
および40cm
の値が大きくなるという実験結果も存在すること から,比較的やわらかいコンクリートな場合,内部振動機から伝わる振動の波 の中でも,一時に発生した大きな波がそのまま大きな抵抗を受けずに伝わり,振動機から近い位置ではその波が過ぎ去った後で,遠い位置でその波が伝わっ ているような瞬間に,このような逆転する現象が発生する可能性も考えられ る。
いずれの場合においても,各時点により応答加速度の値は異なるため,ある 時点の応答加速度がその位置での応答加速度であると言い切ることはできな い。そのため,ある程度の時間を平均した値を,その位置での応答加速度とし て検討を行う必要があると考えられる。
51 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40 50 60
平均最大加速度
(m /s
2)
振動機からの距離
(cm)
スランプ5.5cm
スランプ8.0cm
スランプ10.5cm
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40 50 60
平均最大加速度
(m /s
2)
振動機からの距離
(cm)
スランプ5.5cm
スランプ8.0cm
スランプ10.5cm
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40 50 60
平均最大加速度
(m /s
2)
振動機からの距離
(cm)
スランプ5.5cm
スランプ8.0cm
スランプ10.5cm
図 3.10 振動開始 5 秒時点の応答加速度
図 3.11 振動開始 10 秒時点の応答加速度
図 3.12 振動開始 15 秒時点の応答加速度
52 0
10 20 30 40
0 10 20 30 40 50 60
平均最大加速度
(m/ s
2)
振動機からの距離
(cm)
スランプ5.5cm
スランプ8.0cm
スランプ10.5cm
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40 50 60
平均最大加速度
(m/ s
2)
振動機からの距離
(cm)
スランプ5.5cm
スランプ8.0cm
スランプ10.5cm
0 10 20 30 40
0 10 20 30 40 50 60
平均最大加速度
(m/ s
2)
振動機からの距離
(cm)
スランプ5.5cm
スランプ8.0cm
スランプ10.5cm
図 3.13 振動開始 20 秒時点の応答加速度
図 3.14 振動開始 25 秒時点の応答加速度
図 3.15 振動開始 30 秒時点の応答加速度
53
(3)5 秒~15 秒間の平均応答加速度
図 3.16にスランプ
5.5cm
,スランプ8.0cm
およびスランプ10.5cm
における 内部振動機からの距離10cm
~50cm
の位置での振動開始から5
秒~15
秒間の応 答加速度の平均を示す。3.2.2(1)で示したように,振動開始直後は,内部振動 機がコンクリートに挿入された瞬間に応答加速度が急激に変化する部分であ り,本研究ではその部分を検討対象外とし,いずれのスランプの場合において も振動開始から5
秒以降は応答加速度が安定して急激な変化がないことから,5
秒以降を検討対象とした。また,土木学会コンクリート標準示方書の締固め 時間の目安2)である5
秒~15
秒を考慮して,5
秒~15
秒の間を検討対象とし た。さらに,3.2.2(2)で示したように,各時点における応答加速度の結果は異 なり,ある時点での応答加速度がその位置での応答加速度と言い切れないこと から,5
秒~15
秒の間の平均値を各内部振動機からの距離における応答加速度 として検討を行った。図 3.16に示すように,いずれのスランプにおいても内部振動機からの距離 が離れるほど応答加速度は減少する。内部振動機から
10cm
の位置で,スランプ
8.0cm
およびスランプ10.5cm
の応答加速度は同程度の値を示しているのに対し,スランプ
5.5cm
は10m/s
2程大きな値を示した。また,20cm
~40cm
の位 置ではスランプ5.5cm
およびスランプ10.5cm
の応答加速度は同程度である が,スランプ8.0cm
の場合に若干大きな値を示している。内部振動機からの距 離が50cm
の位置ではいずれのスランプの場合において同程度の値となった。振動締固めにおける既往の研究3)では,スランプの大きさによる振動減衰の 差が報告されている。本研究においては,内部振動機からの距離
10cm
の位置 でスランプ5.5cm
の場合に他の配合と比較して若干大きな応答加速度を示した ことや,スランプ8.0cm
の場合に内部振動機からの距離20cm
~40cm
の位置 で,他の配合と比較して若干大きな応答加速度を示したことなどあるが,いず れも明確な差とは言い切れない。また,3.2.2(2)で示した各時点での応答加速 度の結果からも応答加速度の値にばらつきがあり,このばらつきが影響して平 均値に若干の差が発生したものと考えられるため,明確な傾向としては認めら れない。明確な傾向が認められなかった一因として,配合条件などが考えられ るが,今後の研究課題としたい。スランプ