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応急仮設住宅の実測値と計算値の照合

第7章 応急仮設住宅の熱環境に関する調査と 数値解析による熱環境の基本的特性の検討

7.6 応急仮設住宅の実測値と計算値の照合

図 7. 20 に那須烏山の仮設住宅の冬季温度実測値と計算値の時刻変動を示す。日射のない夜間から 朝方にかけて居間1の室温は,計算値と実測値の値が同様の傾向を示している。断熱性能については 良好に計算されていると思われる。

しかし,日射のある昼間の居間1の室温は,日射熱取得率の大きい透明二重ガラスは実測値より 5

~10K 程度大きな値となっている。日射熱取得率が 0.1,0.2 程度の温度と一致している。実際のカー テンの反射率が大きく,日射熱取得率が小さいものと思われる。

図 7. 21 に那須烏山の仮設住宅の冬季温度実測値と計算値の1月と2月の累積頻度分布を示す。透 明二重ガラスの温度分布は,高温域で実測値と大きくずれている。これは,日射熱取得率が実際には もっと低いことによるものと思われる。

日射熱取得率を高性能熱反+透明ガラスの 0.271 でも高温域の温度が高くなっている。また,窓ガ ラス面積を 1 割減らしても同様である。日射熱取得率を 0.2 あるいは 0.1 とすると,実測値と同様の 傾向となっている。

那須烏山市の仮設住宅 2-4 邸の温度測定結果と BEST による計算結果を比較した結果,概ね再現でき ていることがわかった。

104

1 2 3 4 5 6 7

-15 -10 -5 0 5 10 15 20

温度[℃]

実 測 値

計 算 値 ・ 高 性 能 熱 反 + 透 明 ・ 日 射 熱 取 得 率    0.271 計 算 値 ・ 高 性 能 熱 反 + 透 明 ・ 窓 面 積 1 割 減 計 算 値 ・ 透 明 二 重 ・ 日 射 熱 取 得 率      0.457 計 算 値 ・ 高 性 能 熱 反 + 透 明 ・ 日 射 熱 取 得 率    0.1 計 算 値 ・ 高 性 能 熱 反 + 透 明 ・ 日 射 熱 取 得 率    0.2 那 須 烏 山 地 域 気 象 観 測 所

(b)居間1室温

実 測 値 0

200 400 600 800 1000

日射量[Wh/㎡]

水 平 面 全 日 射 量 ( 計 算 値 )   水 平 面 天 空 日 射 量 ( 計 算 値 ) 水 平 面 全 日 射 量 ( 宇 都 宮 地 方 気 象 台 ) 水 平 面 天 空 日 射 量 ( e p w デ ー タ ・ 推 定 値 )

2012年2月 (a)水平面全日射量及び水平面天空日射量

図 7. 20 那須烏山の仮設住宅の冬季温度実測値と計算値の時刻変動

-10 -5 0 5 10 15 20 25

0 20 40 60 80 100

累積頻度[%]

温度[℃]

居間実測値 那須烏山

地域気象観測所 (b)2月の室温度頻度分布

高性能熱反ブルー+透明ガラス 日射熱取得率  0.271

透明二重ガラス 日射熱取得率  0.457 日 射 熱 取 得 率    0.2

日 射 熱 取 得 率    0.1

高 性 能 熱 反 ブ ル ー + 透 明 ガ ラ ス 窓 面 積 1 割 減

※ 窓 ガ ラ ス 面 積 を 1 割 減 ら し 、 壁 面 積 を そ の 分 増 や し た 。

-10 -5 0 5 10 15 20 25

0 20 40 60 80 100

積頻度[%

那須烏山地域気象観測所 (a)1月の室温度頻度分布

居間実測値

透明二重ガラス 高性能熱反ブルー+透明ガラス 日射熱取得率  0.271

日 射 熱 取 得 率    0.2 日 射 熱 取 得 率    0.1

高 性 能 熱 反 ブ ル ー + 透 明 ガ ラ ス 窓 面 積 1 割 減

※ 窓 ガ ラ ス 面 積 を 1 割 減 ら し 、 壁 面 積 を そ の 分 増 や し た 。

図 7. 21 那須烏山の仮設住宅の冬季温度実測値と計算値の累積頻度分布

7.7 まとめ

栃木県那須烏山市及び宮城県東松島市の応急仮設住宅の居室の冬季及び夏季温湿度や構造材表面温 度,放射カメラにより各面・構造材の放射温度の測定及び各地域・各種構造の応急仮設住宅の熱環境

105 の計算により得られた知見を以下に示す。

1) 軽量鉄骨系プレハブの東松島の応急仮設住宅の熱損失係数は基準で 3.1W/㎡ K であったものが,

断熱補強することにより 2.7 W/㎡ K となった。那須烏山岩子は窓と壁の断熱補強を行っても 3.27 W/

㎡ K であった。板倉構法及びログハウスの熱損失係数はそれぞれ 4.33 W/㎡ K,4.20 W/㎡ K と,い ずれの応急仮設住宅の熱損失係数は次世代省エネ基準Ⅲ地域の基準値 2.4 W/㎡ K には達していなか った。

2) 冬季熱環境の実測により,東松島市の応急仮設住宅 1-1TM 邸は石油ファンヒーターなどの暖房機 器をよく使用しているため室温が 25~30℃となっていた。しかし,暖房を使用していない朝方など は那須烏山の応急仮設住宅と同様に 5℃まで下がっていた。1-3MY 邸はこたつしか使用していないた め,一日中 5~10℃ととても寒い環境となっていた。また,構造材表面温度は露点温度より低くな っており,表面で結露していたものと思われる。断熱性能のさらなる強化が必要と思われる。

3) 夏季実測により,那須烏山岩子の応急仮設住宅 2-1MY 邸は日射の影響により,日中 40℃まで達し ていた。しかし,冷房を行うことにより居間は 90%程度は 30℃以下に抑えることができていた。ま た,他の室の温度も 35℃まで下げられていた。しかし,天井や梁が 43℃にも達し,放射環境を改善 するには通気が可能な屋根構造にするなどの日射遮蔽策が必要である。

4) 那須烏山市の仮設住宅 2-4 邸の温度測定結果と BEST による計算結果を比較をした結果,概ね再現 できていることがわかった。

謝辞

実測調査にご協力いただいた栃木県県土整備部住宅課及び那須烏山市都市建設課,社会福祉法人東 松島市社会福祉協議会東松島市生活復興支援センター,応急仮設住宅の方々に記して謝意を表します。

参考文献

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2)牧紀男,小林正美,三浦研:災害仮設住宅研究その 3 北海道南西沖地震後に建設された仮設住宅, 日本建築学会大会学術講演梗概集 E,pp.207-208, 1994 年 9 月

3)山沢晴康,室崎益輝,大西一嘉,成尾優子:大災害時の応急仮設住宅供給に関する研究その 2 雲仙 普 賢 岳 噴 火 災 害 に お け る 応 急 仮 設 住 宅 の 問 題 点 , 日 本 建 築 学 会 大 会 学 術 講 演 梗 概 集 F,pp.633-634,1994 年 9 月

4)山口雅子,菊沢秀和,中島倫,菊沢康子:兵庫県南部地震における応急仮設住宅の事例研究,各輸入 仮設住宅の室内温熱環境の特徴と問題点,日本建築学会大会学術講演梗概集 E-2,pp.135-136, 1996 年 9 月

5)山戸義幸,牧紀男,三浦研,小林正美:阪神・淡路大震災の応急仮設住宅の居住性に関する研究, 日本建築学会大会学術講演梗概集 F-1,pp.91-92, 1996 年 9 月

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7)今井田留美,石川孝重,伊村則子:災害の特性を生かした応急仮設住宅のあり方,その 3 自治体が

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考える計画の実態,災害特性と防災対策,日本建築学会大会学術講演梗概集 F-1,pp.839-840, 1998 年 9 月

8)伊村則子,石川孝重:災害の特性を生かした応急住宅のあり方,その 4 自治体が考える今後の計画, 災害特性と防災対策,日本建築学会大会学術講演梗概集 F-1,pp.841-842, 1998 年 9 月

9)吉野 博,長谷川兼一,他:震災関連住宅における温熱・空気環境に関する調査,第1~7報,シン ポジウム東日本大震災からの教訓,これからの新しい国つくり,B6-1~7

10)佐藤豊,石野久彌,郡公子:仮設住宅の冬季熱環境に関する実測研究,日本建築学会大会学術講演 梗概集,D-2,pp.233-234 , 2012 年 9 月

11)田村こころ,橋本剛,豊川尚,安藤邦廣:板倉構法による応急仮設住宅に形成される夏季の室内温 熱環境,日本建築学会大会学術講演梗概集,D-2,pp.235-236 , 2012 年 9 月

12)豊川尚,橋本剛,小林久高,安藤邦廣:冬季における木造応急仮設住宅に形成される室内温熱環境 に 関 す る 研 究 そ の 1 福 島 県 会 津 若 松 市 に お け る 調 査 結 果 , 日 本 建 築 学 会 大 会 学 術 講 演 梗 概 集,D-2,pp.237-238 , 2012 年 9 月

13)橋本剛,豊川尚,小林久高,安藤邦廣:冬季における木造応急仮設住宅に形成される室内温熱環境 に 関 す る 研 究 そ の 2 福 島 県 い わ き 市 に お け る 調 査 結 果 , 日 本 建 築 学 会 大 会 学 術 講 演 梗 概 集,D-2,pp.239-240 , 2012 年 9 月

14) 佐藤豊,石野久彌,郡公子:仮設住宅の熱環境に関する研究 実測及びシミュレーションツール BEST による仮設住宅の冬季熱環境の検討 空気調和衛生工学会大会学術講演論文集,pp.2051-2054, 2012 年 9 月

15)海野玄陽,遠藤えりか,浜崎紘嗣,田辺新一:東日本大震災を受けて建設された応急仮設住宅の温 熱環境,空気調和衛生工学会大会学術講演論文集,pp.2055-2058, 2012 年 9 月

16)郡公子,石野久彌,古川貴宏:アトリウム各面からの輻射熱の影響評価に関する実測研究,日本建築 学会環境系論文集 第 535 号,pp.9-14,2000 年 9 月

17)郡公子,石野久彌,長井達夫,村上周三:建築総合エネルギーシミュレーションツール BEST のた めの建築シミュレーション法に関する研究,空気調和・衛生工学会論文集,No.162,pp.9-15,2010 年 9 月

18)佐藤豊,郡公子,石野久彌:自然室温による日本各地の戸建住宅の熱性能評価に関する研究,日本 建築学会環境系論文集 第 573 号,pp.41-46,2003 年 11 月

19)国土交通省住宅局住宅生産課:応急仮設住宅建設必携中間とりまとめ Ⅱ資料編,2012 年 5 月 20)(財)住宅・建築省エネルギー機構:住宅の次世代省エネルギー基準と指針,1999 年 11 月

第8章 各種応急仮設住宅の熱環境と