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居住者の熱環境に対する意識及び住宅性能に対する要求

第4章 住宅の熱環境と住まい方に関する調査

4.4 居住者の熱環境に対する意識及び住宅性能に対する要求

図 4.31 にこたつのみを使用している住戸の居間の室温と温冷感,満足感,暖房器具使用状況を示す。

暖房器具をこたつのみとした住戸では,その温度も一日の平均で 4.0~5.9℃とかなり低い温度となって いる。また,こたつ使用時の室温でも朝方は 1.4~4.6℃,夕方でも 7.6~8.5℃とかなり低い温度となっ ている。居住者も,「少し寒い」と感じ「不満」としているが,「しかたがないもの」(寒くてあたり 前)ととらえている。

図 4.32 にこたつと石油ストーブ,石油ファンヒータ,エアコン等を併用している住戸の居間の室温と 温冷感を示す。居住者は,こたつと石油ファンヒータや石油ストーブ,エアコンを在室時に併用するこ とにより一日の平均室温が 7.4~10.2℃となっていた。石油ファンヒータや石油ストーブ,エアコン等 の使用時には,朝方では 6.0~11.0℃,夕方では 10.4~13.0℃と若干暖かくなっていた。また,その時 に最高温度が現れるが 13.0~16.0℃と低い温度であった。その時居住者は,「少し暖かい」,「暖かい」

と感じ,「満足」,「どちらでもない」ととらえている。つまり石油ファンヒータや石油ストーブ,エ アコン等を併用することにより,熱的にはかなり満足しているようである。

図 4.33~4.35 に非暖房室の室温と温冷感を示す。便所においては,朝方には-0.6~3.4℃,一日の平 均でも 1.6~5.4℃とかなり低い温度となっていた。また,廊下においても朝方には-2.7~3.2℃, 一 日の平均でも 0.8~6.5℃とかなり低い温度となっており,朝方などは寝室から廊下を通り便所へ行くだ けでかなりの寒さに身を曝すことになると思われる。また,脱衣室においては,北側の位置ということ もあり,使用時間帯でも 5.2~8.9℃とかなり低い。このような寒い環境にあって居住者は「少し寒い」,

あるいは「寒い」と感じてはいても「不満だがしかたがない」ととらえているようである。なお,上三 川の YT 邸では脱衣室と団らん室(台所)が繋がっており,最高温度が 13.5℃となっていた。

このような住環境において居住者はどの様なことに寒さを感じているか図 4.36 に男女別に示す。男性 においては,「入浴するとき」,次いで「便所へ行くとき」,「寝床から出るとき」等となっている。

なお,年齢による差は見られない。女性においては,「朝寝床から出るとき」,次いで「便所へ行くと き」となっている。また,「食事の用意をするとき」もやや多い。男女共に「便所へ行くとき」が寒い 等非暖房室の環境の悪さを指摘している。

そのような寒さに対して居住者はどのような対処をするのか図 4.37 に示す。各居住者とも「暖房器具 を使う」,次いで「衣服による自身の環境を調節する」と答えており,室内環境に対して居住者が意識 的に着衣量を多くしていることがわかる。

図 4. 31 居間の室温と温冷感(こたつのみ)

図 4. 32 居間の室温と温冷感 (こたつとストーブ,ファンヒーター,エアコン併用)

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図 4. 33 非暖房室の室温と温冷感(便所) 図 4. 34 非暖房室の室温と温冷感(廊下)

図 4. 35 非暖房室の室温と温冷感(脱衣)

図 4. 36 寒さを感じるとき 図 4. 37 寒さへの対処法

図 4.38 に暖房に対する不満項目を示す。各項目においての不満を感じる人数は少なく,ばらついてい る。図 4.39 に間欠的に暖房する理由を示す。男女共に「外出時には出火の恐れがあるので停止する」,

「電気代・燃料費が節約できる」,「始動するとすぐ暖まる」等が選択され,間欠暖房を基本としてい ることがうかがえる。また,注目すべきことには「こたつのみで十分である」と答えている人がいたこ とである。渡邊,堀越らはこたつ使用により,気温 11℃において約7℃を越える温熱的効果がある 18) と述べている。こたつは下半身を暖めることにより低い室温でもある程度快適性を保つことができると 思われるが,厳しい室内環境を自らつくり,良しとしていることがうかがえる。

図 4.40 に住宅に対する要求項目を示す。なお,1番重要視するものを3ポイント,2番目のものを2 ポイント,3番目のものを1ポイントとして集計したものである。住宅において重要視されたものは「住 戸の広さ」,「住戸の間取り」,「住戸の安全性」,「収納スペース」等であった。逆に重要視されな かったものとして「住戸内に洗濯物を干すスペース」,「窓からの景色や見晴らし」等があげられてい るが,これは十分確保されているためと思われる。男女共に同様な傾向が見られるが,住戸の断熱性に おいては男性は重要視しているが,女性はそれ程重要視していない。また,男性においても断熱性の必 要性は認めているものの「住戸の間取り」や「住戸の広さ」などが優先されている。

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図 4. 38 暖房に対する不満項目 図 4. 39 間欠的に暖房する理由

図 4. 40 住宅に対する要求項目(重み付け)

4.5 まとめ

栃木県の戸建住宅 15 軒に関する調査から得られた知見を以下に示す。

1) 調査住宅において居住者は,住宅の断熱性の必要性は認めているものの住戸の間取りや広さ等が優 先している。また,どの地域も採光,通風等を考慮し窓面積が大きくなっており,意識としては夏向 きの住宅構造となっている。

2) 熱環境としては,各住戸とも朝方には 0~10℃とかなり低い環境となっていた。しかし,そのよう な熱環境でありながら暖房器具は居間を中心に設置し,脱衣室,寝室,便所,台所等にはあまり設置 されていない。居間においてもこたつを多用し,石油ファンヒータ,石油ストーブ,エアコン等は省 エネルギーや防災的な面から間欠暖房を基本とし,補助的に使用されていた。暖房室と非暖房室温度 差が 10~15℃にもなることがわかった。

3) そのような厳しい環境において居住者はこたつのみで十分・非暖房室は寒くて当たり前ととらえて いる人,不満はあるものの改善したいという意思のある人は少なく,着衣量を 1.0~2.3clo と室内に いるにも関わらず厚着をし,自身の熱環境を調節し寒さを凌いでいることがわかった。

以上,夏向きの住宅に合わせて冬はこたつによる採暖が中心となり,かなり厳しい室内熱環境である

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ものの,不満の意識や改善意欲はそれほど強くないという実態が明らかになった。冬の熱環境を向上さ せるには住宅の断熱気密性を強化すればよいが,これによって夏向き住宅の良さを失ってはならない。

本論文では冬期のみを対象としたが,夏期の熱環境と住宅の熱性能,住まい方の良さも今後評価し,栃 木県の気候に適する住まい方を追求する必要がある。

注)着衣量の算定方法は文献 17)による。聞き取り調査時において居住者に着衣の熱抵抗値の表の中か ら普段着ているものを選択していただき,合計値(Itotal)を求め下記の式により算出した。

男子: Iclo=Itotal×3/4+1/10 女子: Iclo=Itotal×4/5+1/20

なお,着衣量が最も厚着の 2.3clo の場合は,パンツ,長下着(薄手)上下,長下着(厚手)上下,長袖ニッ トシャツ,半纏,エプロン,チャンチャンコ,ズボン薄手,ソックス厚手等の厚着となっていた。

謝辞

本研究にあたり,東京都立大学 石野久彌 名誉教授より終始御指導・御援助を頂きました。また,

宇都宮大学 藤本信義 名誉教授,青木繁 元助手,栗山村役場沢山勝氏並びに調査に御協力頂いた住戸 の方々に記して謝意を表します。

参考文献

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2)長谷川房雄,吉野博,赤林伸一:東北地方都市部の木造独立住宅における冬期の温熱環境に関する調 査研究,日本建築学会論文報告集第 326 号,pp.91-102,1983 年 4 月

3)加藤友也,山岸明浩,山下恭弘:長野市を中心とした一戸建住宅の冬季室内温熱環境に関する調査研 究 -熱損失係数から見た室内温熱環境と居住者意識の違いについて-,日本建築学会計画系論文集,

第 470 号,pp.19-27,1995 年 4 月

4)垂水弘夫,久保猛志,酒井健興:北陸の戸建住宅における温冷感を中心とした居住者意識調査 断熱 仕様・暖冷房等の実態と快適性評価の高い住宅の抽出,日本建築学会計画系論文集,第 488 号,pp.25-34,

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5)松原斎樹,澤島智明:京都市近辺地域における冬期住宅居間の熱環境と居住者の住まい方に関する事 例研究 暖房器具使用の特徴と団らん時の起居様式,日本建築学会計画系論文集,第 488 号,pp.75-84,

1996 年 10 月

6)福島逸成,浦野良美,渡辺俊行,林徹夫,龍有二,赤司泰義:福岡における夏季の住まい方と住宅の 冷房エネルギー消費量に関する研究,空気調和・衛生工学会論文集,No.61,pp.79~90,1996 年 4 月 7)赤坂裕,黒木荘一郎,小原聡司:奄美大島の木造戸建て住宅の夏季及び冬季の温熱環境実測調査,日

本建築学会大会学術講演梗概集,pp.1043-1044,1992 年 8 月

8)黒木荘一郎,赤坂裕,岩下剛,小原聡司,山中博志,遊喜純子:奄美大島の木造戸建て住宅の夏季及 び冬季の温熱環境実測調査その2,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.619~620,1994 年 9 月 9)黒木荘一郎,赤坂裕,荘達民,小原聡司:喜界島の住宅の夏季及び冬季の温熱環境実測調査,日本建

築学会大会学術講演梗概集,pp.1515-1516,1993 年 9 月