• 検索結果がありません。

必然性演算子の真理条件

ドキュメント内 命題と証明の概念の哲学的基礎 序 (ページ 34-37)

1.3 様相論理

1.3.3 必然性演算子の真理条件

すでに簡単に見たが,古典論理では各命題は真か偽のいずれか一方に定まるものとみな されている.この点についてもう少し踏み込んだ言い方をしてよいのであれば,命題とい うものは,真偽のどちらにもなりうるようなものと考えることができるということであ る.つまり,私たちが日常の中で行う推論で扱っている命題というものは,古典論理の命 題のように真偽が確定しているような強い命題ではなく,その時の状況や時間的要素に影 響を受けて真偽が変わってくるような命題であるということである.そこで,古典論理 では扱うことができない命題を扱うことができるような,つまり,状況や時間について 扱うことができるような演算子が必要になってくる.それが,23 である.したがっ て,2A は「現状がどう変わりえようともA」を意味することになる*26.そしてこれを 形式化して整理したものが,クリプキによって与えられた様相論理のクリプキモデルであ る (Kripke 1963a, Kripke 1963b).さて,様相論理の論理式の真偽の値について考察を行 うためには,古典論理の真理表のようなものがなければならない.様相論理は古典論理を 拡張して得られる論理なので,古典論理に含まれる結合子については特別気をつける必要 はないが,2式や 3式の真理値を与えてくれるものが必要になる.それはクリプキモデ ルにおいて以下のように定義される:

ある状況(世界)で2Aが真

その状況(世界)から見てあり得る全ての状況(世界)を考えて,それらすべてでAが真 つまり,現状から想定されるすべての状況を考えて,それらすべてでその論理式Aが成 り立っている(真である)のならば,現状でその論理式は必然的に成り立っている(真で ある)と考えてよい(つまり,2A)ということである.この定義において重要なことは,

2式がある世界で真になるかどうかを定めるには,今現在の状況だけではなく,周囲の状 況(可能な世界)の状態も考慮しなければならないということである.そのため,クリプ キモデルは可能世界意味論とも呼ばれる.今後,わかりやすさのために,「状況」と表現 したものは「世界」と呼ぶことにする.以下で,クリプキモデルに関係する諸定義を与え

*26さらに言えば,ある命題Aに,2演算子を適用した2Aの直観的な意味は,「可能なすべての状況を考 えて,そのすべての状況でAが成り立つなら,Aが成り立つのは 必然 」と考えることができる.同様 に,3Aは「考えられる状況のうち,一つでもよいのでAが成り立つなら,Aが成り立つのは 可能 」 ということを意味していると考えることができるということである.

第1章 多様な論理体系と相互関係 21 ておく.

定義 13. もし,W が非空な集合で,R W ×W である時,F = ⟨W, R⟩ はフレーム

frame)という.もし,⟨W, R⟩がフレームで,V がProp→ P(W)(ここで,P(W)は W の冪集合{X | X ⊆W})なる写像であるとき,M=⟨W, R, V⟩はモデルmodel)と いう.このとき,V を付値(valuation)と呼ぶ.

定義 14 (様相論理の充足条件). 任意のモデルM=⟨W, R, V⟩,任意のw ∈W,そして,

任意の論理式Aに対して,充足関係(satisfaction relation)M, w |=A(「AがMのw で真である」を表す)が以下のように帰納的に定義される:

M, w|=P w∈V(P), M, w|= 成り立たない

M, w|=A&B M, w|=A かつ M, w |=B, M, w|=A∨B M, w|=AまたはM, w|=B, M, w|=A ⊃B M, w|=A ならば M, w|=B,

M, w|=2A wRw なる任意のw ∈W について,M, w |=A.

このとき,V を原子命題だけではなく任意の論理式に対しても用いることができるよう に拡張しておく.V(A)は,そこでAが真になるような状態の集合を表すこととする:

V(A) :={w | M, w|=A}. 定義 15 (妥当性).

AがモデルM=⟨W, R, V⟩で妥当である(M|=Aと書く) すべてのw∈W に対して,M, w|=A.

AがフレームF= ⟨W, R⟩で妥当である(F|=Aと書く) すべてのV とすべ てのw∈W に対して,M, w|=A.

A がフレームのクラスF で妥当である(F |= A と書く) すべてのフレーム FFに対してF|=A.

各世界の間には,状態の進展や変化という形で関係が付いており,もう少し一般的な言 い方をすれば,各世界は到達可能性関係によって定義されていると考えてよい.この到達 可能性関係は,2の充足条件を定義する際に重要な働きをする.つまり,到達可能性関係 が変われば,その変化に応じて,2の性質も変わってくるということである.到達可能性 関係が2演算子を特徴付けることについてはひとまず措き,到達可能性関係の性質が変化

第1章 多様な論理体系と相互関係 22

1.2 到達可能性関係

性質の名前 フレーム条件

反射性(Reflexivity) ∀x(xRx)

推移性(Transitivity) ∀x, y, z(xRy&yRz ⊃xRz) 対称性(Symmetry) ∀x, y(xRy yRx)

連結性(Connectedness) ∀x, y, z((xRy&xRz)(yRz∨zRy)) 継起性(Seriality) ∀x∃y(xRy)

有向性(Directedness) ∀x, y, z((xRy&xRz)⊃ ∃w(yRw&zRw)) ユークリッド性(Euclidean) ∀x, y, z(xRy&xRz ⊃yRz)

するとはどういうことなのかということについて見ていくことにしよう.到達可能性関係 の例としては,表 1.2のようなものがあげられる.このとき,各世界は,変項x, y, z, . . . を用いて表すこととし,x, y, z, . . .W 上を走る.ここではxRyは「xyへ到達可能 である」ということを表すこととする.

到達可能性関係はいろいろな性質を組み合わせることができ,その組み合わせによっ て,各世界の間の関係は変わってくる.このとき,到達可能性関係も,公理の場合に見た ように,複数の性質から別の性質を導き出すことができる.例えば,反射性(∀x(xRx)) とユークリッド性(∀x, y, z(xRy&xRz yRz))からは推移性(∀x, y(xRy yRx)) を導き出すことができる.その証明を簡単にみていこう.まず,任意の x, y を考え,

xRy を仮定する.次に,反射性をx で例化し xRx を,ユークリッド性を x, y で例化

し (xRy&xRx yRx) を,それぞれ手にする.今,仮定した xRy と反射性の例化に

よって導かれた xRxより,xRy&xRx であり,ユークリッド性の例化の結果帰結した (xRy&xRx⊃yRx)と合わせて,yRxを手にする.

このように,到達可能性関係の範囲をどのように決めるかによって,各世界の間の繋が りも変化してくると考えることができる.つまり,先ほども述べたように,到達可能性関 係は2演算子の働きを定めるための前提であるため,その変化に応じ,2の性質も変化し てくるということである.演算子の充足条件を考える際に,到達可能性関係が重要な役割 を果たすということは,直観主義論理の「含意」の充足条件を考えるときにも大事になっ てくる考え方であるが,この点については後でみる.

到達可能性関係の範囲が変化するのに応じて,2の意味が変化してくるというのは,K

第1章 多様な論理体系と相互関係 23 公理を基本とし,加える公理の種類によって2 の働きが異なってくることに似ている.

では,これらの間に何か関連はあるのだろうか.4公理と推移性の関係については少し触 れたが,実は,2の各公理とクリプキモデルの各到達可能性関係との間には以下で定義す るような対応関係がつくことが知られている*27

定義 16 (定義可能性). 論理式の集合ΓがフレームのクラスFを定義するのは任意のフ レームFについて

F|= Γ FF

が成り立つ場合である.フレームのクラス Fが定義可能であるのは,論理式の集合Γが 存在して,ΓがFを定義する場合.

定義可能性の例は例えば,表 1.1のように与えることができる.公理と到達可能性関係の 間にこのような関係が存在するため,クリプキモデルは公理の組み合わせによって様々な 体系を考えることができる様相論理の意味論を一様な仕方で与えることができるのであ る.つまり,23の働きの違いは,各公理が対応する到達可能性関係によって整理し,

説明することができるということである.

ドキュメント内 命題と証明の概念の哲学的基礎 序 (ページ 34-37)