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基本論理 B と論理体系の階層性

ドキュメント内 命題と証明の概念の哲学的基礎 序 (ページ 136-139)

第 4 章 ラベル付きシークエント計算の体系 83

5.1 ベーシックロジック

5.1.2 基本論理 B と論理体系の階層性

これまで見たように,andyieldsという二つのlinkを反映する形で,各結合子の推 論規則は与えられる.これらの規則を用いて与えられる体系が表 5.1で与える,ベーシッ クロジックの体系Bである.

このとき,ベーシックロジックでは,この体系Bを基礎とし,あとはシークエントの構 造についての制約を様々に調整することで,直観主義論理をはじめとする様々な論理体系 を扱うことができる.先のように,定義方程式を解くという形で与えられた規則が,その 結合子にとって最適なものと考え固定する.つまり,それらを基本となる推論規則と考え るのである.

では,このBを基礎の(ベースとなる)論理として,直観主義論理や古典論理はどの ように与えられるのだろうか.ベーシックロジックでは,Bを基礎とし,シークエント に対する制約を緩めていくことで,様々な論理体系を手にすることができるのであるが,

その制限の緩め方には二つの方向がある.一つは,構造規則を許すこと,もう一つはシー クエントの可視性の制限を緩めることである.一つ目については,ここでは交換規則は想 定済みなので,構造規則は弱化と縮約の二種類とし,シークエントの前件と後件にそれぞ れ適用する規則を考えることができる.このとき,例えば,任意の論理体系Xに対して,

シークエントの両辺への弱化の適用を認めたときには,XW と書き,同様に,縮約を認 めたときには,XCと書く.

二つ目に関しては,可視性を崩す,つまり,主式となる論理式以外にもシークエント中 に複数の論理式が出現することを許すのである.このとき,シークエントの前件への可視 化を認めたときは,先ほどのように任意の論理体系Xに対して,XLと,後件に認めた ときには,XRとそれぞれ書くことにする.これらの組み合わせは,以下のようにまとめ ることができる*5

*5ここでの体系の与え方は,(Sambin et al. 2000)でのものより,少し詳しい.(Sambin et al. 2000) では,弱化と縮約は,Sとして,一つの指標を用いて与えられているため,扱える体系は8種類だけであ る.しかし,本論では,弱化と縮約はそれぞれが重要であるとみなしており,また,その二つは別々に考 察された方が,より細かな分析を行うことが可能と考えられるため,弱化と縮約を分けることとした.

第5章 ベーシックロジックと線形論理 123

5.1 B (Sambin et al. 2000) (公理)

A ⊢A (Id) (構造規則)

Γ,Σ,Π,Γ

Γ,Π,Σ,Γ ∆ (LE) Γ∆,Π,Σ,∆

Γ∆,Σ,Π,∆ (RE) (演算規則)

B, A⊢

B⊗A⊢∆ (L) Γ⊢A, B

Γ⊢APB (RP)

B 1 A⊢2

BPA 1,2 (LP) Γ2 ⊢A Γ1 ⊢B

Γ2,Γ1 ⊢A⊗B (R)

1∆ (L1) Γ

Γ⊢ ⊥ (R)

⊥ ⊢ (L)

1 (R1)

B A⊢

B⊕A⊢∆ (L) Γ⊢A Γ ⊢B

Γ⊢A&B (R&)

B B&A⊢

A

B&A⊢∆ (L&) Γ⊢A Γ⊢A⊕B

Γ ⊢B

Γ⊢A⊕B (R)

0∆ (L0)

Γ⊢ ⊤ (R)

B⊢A

B ←A⊢ (L) A⊢B

⊢A →B (R)

⊢B A⊢

B →A⊢∆ (L) Γ⊢A B

Γ⊢A ←B (R)

D ⊢C B⊢A

D←A ⊢C ←B (U ) A ⊢B C ⊢D

B→C ⊢A →D (U )

第5章 ベーシックロジックと線形論理 124

B BL BR BLR

BC BLC BRC BLRC

BW BLW BRW BLRW

BCW BLCW BRCW BLRCW

このとき,直観主義論理はBLCW,古典論理はBLRCW,線形論理はBLRにそれ ぞれ対応する.さて,では,直観主義論理や古典論理以外の論理はベーシックロジックの 中でどのように扱えばいいだろうか.先にも述べたように,Bは構造についての制約に ついての考察が主なため,結合子についてのこれ以上の分析は出来ない.そのため,この ままでは,含意についてのより繊細な分析は出来ないということである.つまり,第1 で見たような直観主義論理より弱い論理についての考察は行えないということである*6 . その一方で,連言と選言については構造という観点からの分析が適していると考えられ る.ベーシックロジックでは,各論理体系の間の違いを,シークエントの環境(構造)に 課される条件の違いとして考え,その分析が行われる.この分析の基準は,様相同伴関係 の際に用いられた,必然性演算子を用いる場合とは異なる分析の指標である.

ベーシックロジックには,実は二つの側面がある.結合子の推論規則に対する正当化を 行うという側面と,新しい形式体系としての側面である.この第一の側面は,ゲンツェン のLJLKなどの他のシークエント計算の体系は持っていない.また,結合子の正当化 を行うという目的を達したことの副産物として,まさに,様々に存在する論理体系の基礎 となる論理体系Bを定めることができたのである.Bを用いることによって,私たちは,

何を基準に論理体系を特徴付け,比較の尺度とすべきかという問題に対する一つの答えを 手にすることができる.各論理体系は,一見すると,結合子,特に含意が持つ性質やその 規則にだけその違いが反映されているように見えるが,実はそう単純な話ではないとい うことがわかるのである.ベーシックロジックの特徴は,(i)論理結合子はメタの構造と して大事な部分を対象言語に固定したもの;(ii)各論理体系の違いはシークエントの環境

(構造)に課されている条件の違いとみなす,という二つに簡単にまとめることができる.

*6 この点については,BPLBの拡張として扱うことができないということが(Ardeshir and Vaezian 2012)で検討されている.しかし,(Ardeshir and Vaezian 2012)では,新しく論理体系Uを与え,

そのUを用いて,BPLBを共通の基盤のもとで扱うことが可能であることについての議論が行われ ている.また,(Kurokawa 2018)でも,nested sequentの文脈で,refrectionをより自然な形で解釈 することができ,そのことによって,サンビンらが扱っているよりも,より多くの論理体系(cf. 厳密含 意論理,部分直観主義論理,部分構造論理etc.)を一様な仕方で扱うことが可能であるということが述べ られている.

第5章 ベーシックロジックと線形論理 125 (i)の方向からは,連言と選言については,andに基づいて,かなり詳細にその性質につ いての分析を行うことができる.その一方で,含意については,その分析に限界があるよ うに思われる.この点については,(Ardeshir and Vaezian 2012)での議論を参考にする ことで,さらなる考察を行うことが可能であると考えられるが,その準備がないため,本 論ではその点については深く立ち入ることはしない.

(ii)の方向からは,様相同伴では比較することができなかった線形論理などが新たに,

直観主義論理や古典論理と比較可能になる.これは,必然性演算子とは異なる基盤とし て,「構造」を用いたことによる.ただし,現状のままの分析では線形論理はBPL以外 のFなどとは比較することが(著者が知る限り)できない.

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