第 3 章 参考文献
4.3 微粒子を用いた微細構造の作製
4.3.1 微細構造の作製プロセス
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94 その表面形状は細胞にとって粗さではなくうねりとして影響すると考えられる.本研究の 主旨として,細胞に比べて小さい構造を対象としているため,空間波長は細胞の代表寸法 よりも小さいことが必要である.また,接着した細胞1個の底面に対して複数の微細な凹 凸が存在することが望ましいため,少なくとも細胞の代表寸法の1/10程度の空間波長が必 要である.ここで,Muhammadらの研究では,ポリスチレンディッシュのエンボス加工に よって,ピラー構造とウェル構造を作製し,ヒト角膜内皮細胞を培養している4-17).そして,
図4-8のように,ピラー構造のピッチ(=空間波長)を1μmとした時,ヒト角膜内皮細胞 がもっともよく増殖している.そこで,本研究において,微細構造の空間波長をλ=1μmと した.
図4-7 微細構造化PDMSの作製工程
(a) 微粒子の自己組織化 親水部
疎水部
微粒子
20 m
(b) Si基板へのエッチング Si基板
微粒子 CF4プラズマ
(c) PDMSによる形状転写 PDMS
PDMS PDMS PDMS
Si基板 PDMS
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図4-8 様々な表面でのヒト角膜内皮細胞の増殖率4-17)抜粋
4.3.2 微粒子列をマスクとした Si 基板のエッチング
本項では,微粒子列をマスクとしたSi基板のエッチングについて説明する.まず,2.3.4 項のとおり,ピラニア処理を施したSi基板にOTS-SAMで親水/疎水パターンを設ける.こ の基板をφ1μmのSiO2微粒子が分散した懸濁液から引き上げ,親水部に微粒子を整列させ る.次いで,図 4-8 に示す RIE 装置(コンパクトエッチャー FA-1K,Samco)を用いて,
CF4ガス供給量を20sccm,RF POWERを100W,そしてエッチング時間5~10分間の条件の もとエッチングを行う.Si 基板上に整列した微粒子がマスクの役割を果たし,エッチング 深さに勾配が生じる.最後に,基板上に残存している微粒子を超音波洗浄機で脱離させる.
なお,本研究では,特にエッチング時間を変えることで形状の制御を行っている.
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図4-8 コンパクトエッチャー(RIE装置)
図4-9は,上記の方法で微細構造化したSi基板のSEM像である.図4-9(a)はエッチング 時間が5分間のものを,(b)は7分間のものを示している.それぞれ,マスクとした微粒子 列と同じように,六方最密に配列した微細構造が確認できる.また,構造の頂点間の距離 はマスクとした微粒子の粒径と同じく1μmであり,培養する細胞の代表寸法に比べ小さい 値となっている.このような微細構造が,マスクとした微粒子列と同様,平面と交互に配 列している.図4-9(a)では微細構造はピラー様の構造であり,図4-9(b)ではテント状のピラ ー様の構造である.このようにして作製された微細構造は,非常に規則的に配列している.
第 1 章で述べたとおり,従来の研究では,細胞培養用の足場の微細構造化をプラズマ処理 等で行っている.従って,微細構造には規則性が無く,足場全体で一様な形状ではない.
これに対し,本研究で作製した規則配列している微細構造を用いることで,細胞への影響 を正確に知ることができると考えられる.なお,エッチング時間に伴って形状が変化する ことは,以下が原因として挙げられる.微粒子をマスクとしてSiウエハをエッチングした 場合,その時間経過に伴う形状は図4-10のように変化すると考えられる.すなわち,エッ チングは最初,微粒子間の空隙から開始され,エッチングによる微粒子の形状変化にとも なってエッチングの範囲が拡大していく.この際,Si ウエハに形成される微細構造には微 粒子の球形状に従った勾配が発生する.
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図4-9 微細構造化したSi基板のSEM像.(a)エッチング時間5分,(b)エッチング時間7分.
図4-10 微粒子をマスクとしたSiウエハの,時間経過に伴う形状変化
(a) エッチング時間 分5
(b) エッチング時間 分7
1 m
1 m
物理エッチング
Siウエハ
物理エッチング
微粒子
物理エッチング
化学エッチング
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4.3.3 微細構造の形状転写
本節では,PDMSによる形状転写について説明する.微細構造の幾何的特徴量のみに着目 すれば,細胞培養に適用する足場は,モールドとなる微細構造化したSi基板と,その反転 形状を転写したPDMSにすればよい.しかし,基板のヤング率が細胞の接着に影響を及ぼ すという研究結果もあり,比較の際には両者のヤング率等をなるべく統一することが望ま
しい4-18).更に,観察の際には透明材料であることが望ましい.そこで,本研究では,Si
基板をモールドとして作製したPDMSを新たなモールドとして用いて,再びPDMSのモー ルディングを行うことで,元々のSi基板の形状を持ったPDMSを作製する.
PDMS をモールドとして同じ材料である PDMSをモールディングする場合,モールドと なるPDMSに剥離剤を塗布することが必要である4-19).本論文では剥離剤としてOPTOOL
HD-1100(ダイキン工業,以下,オプツール)を用いた.オプツールの修飾方法を図 4-11
に,説明を以下に示す.
① モールドとするPDMSを,オプツールに1分間浸漬する.
② 温度70°C,湿度90%の環境で1時間静置し,反応させる.
③ PDMSをリンス剤OPTOOL HD-THに浸漬させ,リンス処理を行う.
④ 温度23°C,湿度65%の大気中で24時間静置する.
まず,剥離剤の効果を検証するため,ラインアンドスペース形状のモールドでPDMS を作 製した.更に,その表面に上記の手順でオプツール処理を施した.図4-12はこの方法で作 製した,ラインアンドスペース構造を持つPDMSのSEM像である.PDMSは,元のモール ドと同じ形状である幅50μm,間隔50μmのラインアンドスペース形状となっている.凸部 付近で顕著に見られる亀裂のような線は,SEM 観察時に行った Au のコーティングによっ て発生したものであると考えられる.
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図4-11 PDMSへのオプツール修飾工程
図4-12 オプツール修飾を施したPDMSモールドのSEM像