Cell Culture
3.3 微粒子列上での細胞の培養方法
3.3.1 作製した基板の前処理
液体培地は培養する細胞の栄養素を含んでおり,温暖湿潤な培養環境も相まって,菌類 等の意図していないものまでをも培養してしまう恐れがある(コンタミネーション).した がって,細胞培養前にはUVやアルコール等による基板の滅菌を行うことが必要である.図
3-2(a)は本研究で使用するクリーンベンチ(CT-900N-UV ,AS ONE)を示している.クリ
ーンベンチ内はHEPAフィルターを介した空気が送り込まれている.また,紫外線ランプ が備わっており,UVによる滅菌行うことができる.作製した基板は,図3-2(b)のように,
液体培地への浸漬前に,一晩のUV滅菌を行った.
図3-2 クリーンベンチとUV滅菌工程
本研究では,微粒子をラインアンドスペース状に整列させるため,疎水性のOTS-SAMを 利用している.一方で,基板の濡れ性は細胞の接着位置に影響を及ぼすことがわかってい
るため3-6)-3-8),微粒子列の幾何形状が及ぼす影響のみに着目したい場合にはこれを除去する
工程が必要である.OTS-SAMは,増田らをはじめ,紫外線の照射による局所化がされてお り3-9),本論文においては細胞播種前のUV滅菌がこれと同等のはたらきをすると考えられ る.これに関しては,後述の実験でその影響を調査している.なお,基板の材料を一様に するためポリスチレンを被膜した基板においては,OTS自体が露出していることは無く,
細胞の接着に影響は無いと考えられる.
基板 ディッシュ
UV
(a) クリーンベンチ (b) UV 滅菌工程
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3.3.2 細胞の培養工程
本研究における,ディッシュ,基板,微細構造,そして細胞の位置関係を図3-3に示す.
細胞培養用ディッシュに,微細構造を設けた基板が静置されており,その上に細胞が存在 する.本章では微細構造として,第2章で紹介した微粒子列を用いている.基板の大きさ はおおよそ1cm×2cmであり,その端部1cm×1cmの領域内に微粒子が整列している.本研 究における播種とは,あらかじめ培養していた細胞を回収し,規定の濃度(5000cells/cm2) で微細構造に滴下することを指す.培養とは,図3-4で示すインキュベータ(APC-50D,
ASTEC)内で,温度37°C,湿度100%,気相5% CO2+Airの環境下で静置することを指す.
細胞の播種は,図3-5で示すように,ディッシュ内に基板を静置し,(滅菌をした後)マイ クロピペットにより液体培地を添加(2ml)し,同ピペットで細胞懸濁液を添加することで 行う.
図3-3 細胞培養系の位置関係
図3-4 細胞培養用インキュベータ
基板 ディッシュ
微細構造 細胞
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図3-5 細胞の播種方法
3.3.3 培養細胞の観察方法および接着数の評価方法
本研究では観察の簡易さから,接着した細胞は位相差顕微鏡で観察・評価する.しかし,
目視による観察では,例えば死細胞と生細胞の区別が難しいといった課題も存在する.そ こで,「接着している細胞」の基準を設定し,この基準のもとで評価を行うこととする.細 胞の生死や接着しているかどうかは,染色を行うことで調査が可能である.そこで,ガラ ス基板上に細胞を播種し,アクチンおよびビンキュリンを染色した.細胞の染色方法を以 下に示す.
① ディッシュから培地を除去し,37°C 湯浴で温めたリン酸緩衝液(以下,PBS)で 3 回ほど洗浄する.
② ディッシュに固定液を加える(室温,10分間).
③ PBSで洗浄し,ディッシュにPBST溶液を加える(室温,5分間).
④ PBSで洗浄し,Acti-stain溶液を200μl滴下する.(暗所・湿潤化,30分間)
⑤ PBSで3回洗浄し,抗ビンキュリン抗体溶液(hVIN-1)を滴下する.(1時間,イン キュベータ内)
⑥ PBSで3回洗浄する.
ここで,固定液とはパラホルムアルデヒド(pH 7.0)をPBSに加えて3.7%に調整したもの である.Acti-stain溶液とはリン酸緩衝液(PBS)500μlに14μMのActi-stain 555を3.5μl加 え,100nMとしたものである.PBST溶液とは,PBSにTween-20(0.05%)を加えたもので ある.抗ビンキュリン抗体溶液は,PBSで50倍に希釈することで調整した.
図3-6は以上の方法でアクチンおよびビンキュリンを染色したPC12細胞である.図 3-6(a)(b)が,それぞれ同一箇所を位相差顕微鏡および蛍光顕微鏡で観察した結果である.な お,アクチンは赤色,ビンキュリンは緑色に染色されている.ビンキュリンの存在は細胞 の焦点接着斑を示している.つまり,ビンキュリンを確認できる細胞は,基板に接着して いると言える.図に示したように,位相差顕微鏡像で観察できる細胞の位置と,蛍光顕微
基板
ディッシュ 微細構造
(a) 基板のディッシュへの静置
マイクロピペット
(b) 液体培地の添加
細胞
(c) 細胞の播種
57 鏡像において観察できる細胞の位置は同一である.すなわち,接着している細胞の観察は 位相差顕微鏡で行うことができる.この結果をもとに,本研究では以下のように接着細胞 を観察する.細胞播種後,観察前に浮遊細胞を除去する.位相差像により,接着している 細胞を観察・撮影・評価を行う.
図3-6 スライドガラス表面に接着したPC12細胞.(a)位相差顕微鏡像,(b)蛍光顕微鏡像.
同一箇所を,光源の波長を変えて観察している.
本研究では,細胞の接着位置について,全接着細胞のうちの微細構造に接着している細 胞の割合を算出することで評価する.この評価指標を選択接着率とし,以下で定義する.
(3-1)
ここで,NmとNfは,それぞれ微細構造上および平面上に接着した細胞の数である.例えば,
図3-7でαを計測すると,α = 4×100 / 5 = 80%となる.
(a) PC12 の位相差顕微鏡像
(b) PC12 の蛍光顕微鏡像
50 m
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図3-7 選択接着率の算出基準