• 検索結果がありません。

得られた結果とシミュレーションとの比較

ドキュメント内 master thesis ttanaka (ページ 83-92)

DSSD CdTe pixels

7.2 得られた結果とシミュレーションとの比較

実験の結果を図7.4に示す。横軸にCdTe検出器でのエネルギーデポジット(E2)、縦軸にDSSD でのエネルギーデポジット(E1)をプロットした。この2次元プロットの図中の赤い直線で囲まれ た領域のイベント、具体的には、40 keV< E1 <80 keV かつ150 keV< E1+E2 <180 keV 領域にイベントが多くなっているおり、これらがDSSDでコンプトン散乱されCdTeで光電吸収 されたイベントだと考えられる。したがって、偏光情報を得るには、これらのイベントについて、

CdTe検出器上での方位角分布を調べれば良い。その結果が、図7.5である。検出器の幾何学的な 配置による効果を消すため、モンテカルロシミュレーション

1

上で無偏光を入射させた時のφ 布(図7.6)で補正してある。偏光によって、φ= 90およびφ= 270でカウント数が多くなっ ている様子がはっきりとわかる。

この分布を、2.8式を積分することで得られる、

N(φ) =p0+p1cos2(φ+p2) (7.1) でフィットし、モジュレーションファクターを求めた。2.9式を用いると、

Q= N(φ= 90)−N(φ= 0)

N(φ= 90) +N(φ= 0) = p1

2p0+p1 = 43±3 % (7.2) をとなった。図7.7はモンテカルロシミュレーションによって得られた同様の分布で、この分布 から計算したモジュレーションファクターはQ= 41±3 %となり、実験データとシミュレーショ ンがよく一致した。

この実験の結果、SiCdTeを用いたコンプトン望遠鏡のガンマ線偏光計としての基礎性能が 確認できた。今後は、実際の天体からの偏光観測を視野に、検出器の多層化、大型化などを進め ることになる。

E2 [keV]

60 80 100 120 140 160 180 200 220

E1 [keV]

0 20 40 60 80 100 120 140 160

7.4: 偏光測定でのエネルギーデポジットの2次元プロット

注1Geant4には偏光の扱い関して若干のバグが残っているため、本章でのシミュレーションの結果はEGS4によるも

のである。シミュレーションはSLACの田島宏康氏による。

7.2. 得られた結果とシミュレーションとの比較 75

) [degree]

φ Azimuthal scatter angle (

0 50 100 150 200 250 300 350

Counts

0 20 40 60 80 100 120

7.5: 実験で得られたコンプトンイベントの方位角(φ)分布。カウント数は、シミュレーショ ン上で無偏光を入射させた時の分布(図7.6)で補正してある。

) [degree]

φ Azimuthal scatter angle (

0 90 180 270 360

Counts

0 20 40 60 80 100 120

7.6: モンテカルロシミュレーション上で無偏光を入射させて得られたφ分布

) [degree]

φ Azimuthal scatter angle (

0 90 180 270 360

Counts

0 50 100 150 200 250 300 350

7.7: シミュレーションで得られたφ分布

77

第 8 まとめ

半導体多層コンプトン望遠鏡の構成要素となるCdTeピクセル検出器の開発と、そのピクセル 検出器とシリコンストリップ検出器を組み合わせたコンプトン望遠鏡の試作を製作し、その実証 実験を行った。

ピクセルサイズ2 mm角の8×8 CdTeピクセル検出器をアナログLSI VA32TAを用いて読 み出し、全チャンネルの読み出しに成功するとともに、0Cにおいて1.6 keV @ 59.54 keV という優れたエネルギー分解能を達成した。また、この検出器が撮像素子としても、高い 一様性を持つなど、優れた性能を持つことを示した。

• SiCdTeを用いたコンプトン望遠鏡を製作し、コンプトン運動学を用いた入射ガンマ線 のスペクトル取得と撮像に成功し、エネルギー分解能として∆E= 5.0 keV、角度分解能と して∆θ= 9.8(いずれも122 keVでの値)を達成した。

• コンプトン望遠鏡で得られた角度分解能を検証するため、モンテカルロシミュレーションを 行い、実験によって得られた角度分解能とほぼ一致する結果を得た。また、シミュレーショ ンの結果により、コンプトン散乱におけるドップラーシフトの効果が角度分解能に大きく影 響することを示した。

開発したCdTe撮像素子とコンプトン望遠鏡を大気球に搭載し、実際に観測を行い、検出器 システムを全て、ほぼ正常に動作させることに成功した。

• SPring-8の偏光ガンマ線ビームを用いて、コンプトン望遠鏡の偏光検出実験を行った。偏

光検出に成功するとともに、シミュレーションとほぼ一致するモジュレーションファクター を得た。

79

謝辞

本論文の作成にあたっては、たくさんの方々にお世話になりました。私が、本論文で行った実 験の多くは、ここ数年、研究室が行ってきた基礎開発あったからこそできたものであり、高橋先 生や先輩の皆様に感謝したいと思います。

指導教官である高橋先生には、多くのことを指導していただき、実験の進め方や研究での考え 方など、いろいろと学ばせていただきました。三谷さんとは、SPring-8での実験や気球実験など、

一緒に作業をすることが多かったですが、実験上の基本的なことを教えていただいたり、コンプ トン望遠鏡についての議論に乗ってくださったりと、本当にお世話になりました。助手の中澤さ んには、実験データの解釈や論文のまとめ方などで多くの助言をいただきました。同じく助手の 高島さんには、特にDSSDの製作や、その評価の際にいろいろと助言を頂きました。コーデッド マスクについては佐藤さんに大変お世話になりました。同期の井上君には、公私問わず、いろい ろと相談に乗ってもらい、感謝しています。

その他、SLACの田島先生、大阪大学の能町先生、三菱重工業の黒田さん、大西さん、東大の 牧島研をはじめとするHXDチームの皆様など名前を挙げたら切りがないほど多くの方々のご支 援があって、この論文が成り立っていると思います。皆様、本当にありがとうございました。

81

参考文献

[1T. Kamae et al. “Astro-E hard X-ray detector”, Proc. SPIE, 2806, 314, 1996

[2T. Takahashi et al. “Development of the hard X-ray detector for the ASTRO-e mission”, Astron. Astrophys. suppl., 120, 645, 1996

[3K. Nakazawa et al. “Fabrication of the ASTRO-E Hard X-ray Detector”, Proc. SPIE, 3765, 645, 1999

[4M. Tashiro et al. “Performance of the ASTRO-E Hard X-ray Detector”, IEEE Trans.

Nucl. Sci., 49, 4 1893, 2002

[5] 「ASTRO-EX線検出器への道(1), (2), (3), internal report, 2001

[6M. Kokubun et al. “Improvement of the ASTRO-E2 Hard X-ray Detector (HXD-II)” , IEEE Trans. Nucl. Sci., submitted

[7M. Kokubun et al. “Activation of the ASTRO-E Hard X-ray Detector in Low Earth Orbit”, IEEE Trans. Nucl. Sci., 46, 3, 371, 1999

[8M. M. Murakami et al. “Activation Properties of Schottky CdTe Diodes Irradiated by 150 MeV Protons”, IEEE Trans. Nucl. Sci., 50, 4, 1013, 2003

[9T. Takahashi et al. “Hard X-ray and Gamma-Ray Detectors for the NEXT mission”, New Astronomy Reviews, 2004, in press

[10T. Takahashi et al. “High resolution CdTe detectors for the next generation multi-Compton gamma-ray telescope”, Proc. SPIE, 4851, 1228, 2003

[11] 「NeXT計画提案書」,次期X線天文衛星ワーキンググループ, 2003

[12V. Sch¨onfelder, “Lessons learnt from COMPTEL for Future Telescopes” , New Astronomy Reviews, 2004, in press

[13J. M. Ryan, “Astrophysics Challenges of MeV-Astronomy Instrumentaion”, New Astron-omy Reviews, 2004, in press

[14Astronomy with Radioactivities IV and Filling the Sensitivity Gap in MeV Astronomy, http://www.mpe.mpg.de/gamma/science/workshop/seeon03.html

[15] 高橋忠幸,MeV/GeVガンマ線観測の過去・現在・将来」,高エネルギー宇宙物理連絡会 21世紀COEプログラム「宇宙の物質と起源:宇宙史の物理学的解読」研究会, 2003

[16V. Sch¨onfelder et al. “Instrument description and performance of the imaging gamma-ray telescope COMPTEL aboard NASA’s Compton Gamma Ray Observatory”, ApJ Suppl.

86, 657, 1993

[17H. Tajima et al. “Low Noise Double-Sided Silicon Strip Detector for Multiple-Compton Gamma-ray Telescope”, Proc. SPIE, 4851, 875, 2003

[18] 三谷烈史,「高分解能CdTeアレイ検出器の開発と宇宙観測用ガンマ線イメージャーへの応 用」,修士学位論文,東京大学, 2003

[19T. Kamae et al. “A New Method to Measure Energy, Direction, and Polarization of Gamma Rays”, Nucl. Instr. and Meth., A260, 254, 1987

[20J. D. Kurfess et al. “Consideration of the Next Compton Telescope Mission”, AIP Conf.

Proc. 510, 789, 2000

[21F. Lei, A. J. Dean, G. L. Hills. “Compton Polarimetry in Gamma-Ray Astronomy”, Space Science Reviews, 82, 309, 1997

[22G. F. Knoll (木村逸郎、阪井英次 ),「放射線計測ハンドブック(第3), 日刊工業新 聞社

[23] 高橋忠幸,中澤知洋,CdTe/CdZnTe半導体を用いたガンマ線検出器と宇宙観測への応用」, 日本物理学会誌, 59, 26, 2004

[24XCOM:Photon Cross Section Database,

http://physics.nist.govPhysRefData/Xcom/Text/XCOM.html

[25] 渡辺伸,「テルル化カドミウム(CdTe)半導体を用いた硬X線、ガンマ線撮像用ピクセル検 出器の開発」,修士学位論文,東京大学, 2001

[26T. Takahashi et al. “ High Resolution CdTe Detectorand Applications to Imaging De-vices”, IEEE Trans. Nucl. Sci., 48, 3, 287, 2001

[27T. Takahashi et al. “ High Resolution Schottky CdTe Diodes”, IEEE Trans.Nucl. Sci., 49, 3, 1297, 2002

[28K. Hecht, “Zum Mechanismus des lichtelekrischen Prim¨astomes in isolierenden Kristallen”, Zeits. Phys., 77, 235, 1932

[29T. Tanaka et al. “Recent achievements of the high resolution Schottky CdTe diode for γ-ray detectors”, New Astronomy Reviews, 2004, in press

[30K. Nakazawa et al. “Improvement of the CdTe Diode Detectors using a Guard-ring Elec-trode”, IEEE Trans. Nucl. Sci., submitted

[31] 小林謙仁, 「放射線計測VLSIの開発と衛星搭載用CdTeピクセル検出器への応用」,修士 学位論文,東京大学, 2003

[32] 中村秀仁,「二重ベーター崩壊測定のための多チャンネル読み出し回路開発」,修士学位論 文,大阪大学, 2003

[33VA32TA specifications, http://www.ideas.no/

[34H. Tajima et al. “Performance of a Low Noise Front-end ASIC for Si/CdTe Detectors in Compton Gamma-ray Telescope”, IEEE Trans. Nucl. Sci., submitted

[35M. Yokoyama et al. “Radiation hardness of VA1 with sub-micron process technology”, IEEE Trans. Nucl. Sci., 48, 440, 2001

ドキュメント内 master thesis ttanaka (ページ 83-92)

関連したドキュメント