4.4.1 高橋(1991)のと比較
高橋(1991) [20]による従来研究によれば,問題の分類は,目的とする出力に対し,いわば 管理する目標と要因(枠組み)からなる2次元的な展開を行い,出力とのギャップにより,
維持・改善・開発の3タイプに分けるものである(図4.3左).すなわち,目的とする出力 に対する目標を量的に捉えた分類であり,目的と目標が同一であると考えられる.一方で,
本研究による問題の分類は,先述べたように,要因軸,目標軸,「人・社会の満足」とし て捉えられる目的軸の3 軸からなる 3次元的な展開を行い,目的設定レベルによって分け るものである.すなわち,捉えた問題現象に対し,目的「人・社会の満足」の追求という 次元を加え,問題解決活動に質的な意味を与えるものである.
図 4.3 高橋 (1991)[20] と本研究との違い
問題解決の具体的な目的設定を行う際,高橋 [20]の問題の分類に基づいて,目的の視点 を持たず,高度な目標を立てた場合に起こり得る例を説明する.すなわち,「人・社会の
高橋(1991)[20]の問題の分類 本稿における目的設定のレベル
目標 軸
要因軸 要因
目標
創造された 新たな要因
維持
現在の 目標 変更された
目標 新たな
目標
改善
既存の 要因
開発
Y Z
X X Y
本研究 レベル3 高橋[20]
特定の目的
― 88 ―
満足」を考慮せず,管理しようとする項目(要因)を増やすこと,あるいはより高度な目 標を達成するための技術開発を行う場合である.この場合の品質は,顧客満足に繋がらな い可能性が高い.このような状態に陥らないためにも,図4.2が示すように,「人・社会の 満足」の視点から問題解決の目的を考え,その上で具体的な目標を考えなければならない.
参考文献
[1] Pascal, B(1982):PENSEES, 1669,前田陽一(編)『世界の名著24 パスカル』中央
公論社.
[2] 清野辰彦(2005):“数学的モデル化における「仮定の意識化」の役割”,数学教育,
pp.2-12
[3] アストム(2007):“みんなに喜ばれる事務用品の管理",『QCサークル』2月号,日 科技連出版,pp.32-35
[4] トヨタ生活協同組合 NEW アウトマウンテンサークル(2008):“新外山食堂におけ るうどんのあっつあっつ提供",『QCサークル』9月号,日科技連出版,pp.30-33
[5] 和泉愛児園 いいじゃん!!和泉サークル(2008):“進んでおもちゃを片づけよう",
『QCサークル』6月号,日科技連出版,pp.34-37
[6] 至誠あずま保育園 チェリーアンドピーチサークル(2009):“持ち物の入れ間違いを なくそう",『QCサークル』4月号,日科技連出版,pp.30-33
[7] トヨタ自動車(株) 源さんサークル(2009):“私たちが身近にできる,地球にやさ しい職場づくり",『QCサークル』9月号,日科技連出版,pp.42-45
[8] 日 本 品 質 管 理 学 会 TQE 特 別 委 員 会 HP グ ラ フ コ ン ク ー ル の サ ン プ ル http://www-suzuki.inf.uec.ac.jp/tqe/blog/index.html?p=15
― 89 ―
[9] トヨタ自動車北海道(株) ダントツサークル(2012):“女性に優しい作業環境づく り",『QCサークル』4月号,日科技連出版,pp.38-41
[10] 愛知製鋼(株) カキツバタサークル(2014):“女子力の結集でイライラからニコ ニコへ!",『QCサークル』3月号,日科技連出版,pp.36-39
[11] ぺんてる(株) ハイパーイレイザーズサークル(2014):“消しゴム不良廃棄量の低 減",『QCサークル』5月号,日科技連出版,pp.36-39
[12] アクシアル リテイリング(株) 107-03 サークル(2014):“9 時生魚売場のスタン ダードレベル実現",『QCサークル』6月号,日科技連出版,pp.38-41
[13] 海老名総合病院 シールはもういらない!サークル(2014):“手術室におけるナース の記録業務削減",『QCサークル』6月号,日科技連出版,pp.34-37
[14] 養護老人ホーム希望ヶ丘ホーム ひまわりサークル(2015):“早起きやーめた!!",
『QCサークル』1月号,日科技連出版,pp.32-35
[15] アクシアル リテイリング(株)つぶあんサークル(2015):“恵方巻販売本数10,000 本にチャレンジ!",『QCサークル』7月号,日科技連出版,pp.40-43
[16] 山下雅代・横川慎二・鈴木和幸(2017):“日常の問題場面を用いた教材開発への一 考察―問題解決事例の分析による目的設定の方法―”,教材学研究(日本教材学会 誌)Vol.28,pp.35-46.
[17] コンラート・ローレンツ(著),丘直道・日高敏孝(訳)(1989):『動物行動学Ⅱ』, 思索社.
[18] 石川馨(1989):『第三版 品質管理入門』,日科技連.
[19] 御子柴善之(2015):『自分で考える勇気 カント哲学入門』,岩波書店.
[20] 高橋武則(1991):“問題解決を構成する要素とその構造”,『品質』Vol.21,日本品 質管理学会.
― 90 ―
5 章 目的設定の方法の教育効果
本章では,4章において提案した普遍的な目的である「人・社会の満足」に向けた目的設 定の 3 つのレベルによる目的設定の経験を子どもに与え,その教育効果を検証することを 目指す.はじめに,「人・社会の満足」の充足へ向け,レベル 3 の本質追求においては,
多様な価値の検討が必要である.このための検討が初等中等教育段階の子どもでも可能と なるよう,目的設定のトリガーを検討する.次に,教育効果の検証のための授業計画を立 てる.計画時には,子どもが興味を持ち,主体的に授業に参加できる問題場面を用いる.
計画に基づいて授業を行い,その効果を評価する.