• 検索結果がありません。

皆に好まれるキャラクターにしよう

本事例は,小学校高学年から社会人教育まで視野に入れ開発された問題解決事例であり,

初等中等教育においては,算数・数学科の授業または総合的な学習の時間で扱うことを想 定している.キャラクターのかわいらしさに着目し,かわいらしさがどこから来るのかを 探究する.その後に,かわいらしさを示す要因の 1 つである“目の位置”に着目して最適 な位置を特定し,特定した位置をキャラクターに適用することにより解決を目指す.本教 材は算数・数学科の授業で扱うことを指向し,数学的定式化を行いやすいよう,左右対称 のキャラクターを用いる(例えば図3.2)こととする.

<問題の場面>

3.2.1 フェーズ 1:現象把握

皆に好まれるキャラクターとはどのようなキャラクターかを考える.自分たちにとって の好ましさではなく,「人・社会の満足」の視点から,自分より小さな子どもやお年寄り

図 3.2 問題のキャクター

○○市の特産品には,はちみつがあります.このおいしいはちみつを皆に知ってもら うため,図3.2のキャラクターを作りましたが,評判はよくありません.もっと皆に好 まれるためにはどのようにしたらよいでしょうか.

― 47 ―

にも好まれるキャラクターとはどのようなキャラクターかを調査し検討する.その結果,

かわいいキャラクターがみんなに好まれるキャラクターであることを確認する.つまり,

「キャラクターのかわいらしさが足りない」という問題を特定することができる.

3.2.2 フェーズ 2:因果探究

まず,キャラクターの可愛らしさを示す要因を探求するために,かわいいと思う蜂のキ ャラクターを描いてみる.さらに描かれたキャラクターには目・鼻・口のどのパーツを描 いたのか,加えてどのパーツから描き始めたのかを調査する.結果から,鼻や口のないキ ャラクターがある一方で目のないキャラクターはないこと,多くの人が目から描き始めて いることから,目が重要であることを確認する.

かわいいキャラクターの特徴を見出すために,海外の児童文学原作のイラストと日本の アニメーションのイラストを比較し,また,ファンシーキャラクターのグッズメーカーの かわいいキャラクターを複数集めて比較分析する.日本のファンシーキャラクターの場合,

例えば,おでこが広い,目の位置は中央より下,目の形は円か楕円,全体的に形は丸いな どの特徴が挙げられる.人気のファンシーキャラクターと図3.2のキャラクターとを見比べ ると,人気のファンシーキャラクターたちが持つ特徴とを比べると,「目の位置」が大き く違うことがわかる.そこで「目の位置」が問題であるという仮説を立て,かわいい目の 最適な位置を検証する.目の位置は,横の位置をHP,縦の位置をVPとする比を用いた指 標で表すことができる.例えば,横の位置HPは,顔全体の横の長さ と左目の中心から右 目の中心までの幅 を用いれば下記の様に定義することができる(図3.3参照)2

目と目の幅 に2を掛ける理由は,顔の中心を示す値が0.5よりも1の方がわかりやすい ためである.したがって, となる場合は,目の位置が中央より内側にあるいわゆる

2 添え字の はfaceの略字である

― 48 ―

より目の状態を示し, となる場合は,中央より外側にある状態を示す.同様に,縦 の位置についても顔全体の縦の長さ と頭上から目の中心までの長さ を用いれば,

と示すことができる.

これにより,かわいい蜂の目の位置を測ってそれぞれの比を取り,その結果をヒストグ ラムに表わしてかわいい目の位置を確かめる.ここでかわいらしさの理論であるベビース キーマを参照して結果の妥当性を検討する.ベビースキーマとは,ノーベル賞を受賞した 動物行動学者コンラット・ローレンツが発見したかわいらしさに関する概念である.ロー レンツは,人間や動物の赤ちゃんが持つ身体的特徴,

(1)相対的に大きな顔

(2)過大な頭蓋重量

(3)下方に位置する大きな目

(4)短くて太い手足

(5)ふっくら膨らんだ額や頬 など

図 3.3 目の位置の測定方法と目の位置の定量化

横位置(HP);

縦位置(VP);

X X

f

Y

Y

f

VP<1: 中央より上 VP=1: 中央

VP>1: 中央より下 HP<1: 中央より内側 HP=1: 中央

HP>1: 中央より外側

― 49 ―

をもつものを人間は本能的に可愛いと思うと説明している[17].

小学生では,上記に紹介したような目の位置のみを取り上げて最適値を見出す活動が考 えられる.この場合は,平均値(小5)や柱状グラフ(小6)の内容を用いて分析すること が可能である.中学生や高校生では実験計画法を用いて分析を行うことが可能となり,例 えば二元配置による分析なども活用できる.なお,中等教育においては分散分析を用いる ことが難しいため,平均値のみを示すことにより交互作用の存在を把握する経験を与える ことなどにより,段階的な学習とすることが可能である.いずれの場合も,最後にベビー スキーマ[2]を参照して,結果の妥当性を検証する活動が考えられる.

3.2.3 フェーズ 3:対策実行

対策実行では,問題とした目の位置に対して改善を行う.例えば図3.4は,目の縦の位置 に関する指標VPを0.8から1.1に変更したときの例である.改善前後の好ましさを比較し,

効果を確かめる.最後にわかったこと,手順・方法・考え方などに着目して一連の問題解 決のアプローチを振り返る.

図 3.4 対策実行前後の目の縦位置の比較 改善前 改善後

目の位置:

縦位置(VP): 0.8 横位置(HP) : 1.0

目の位置:

縦位置(VP) : 1.1 横位置(HP) : 1.0

― 50 ―