第 4 章 システムの実装と評価
4.3 形状認識手法の評価
本節では、3.2節で述べたセンサのループの形状計測手法について、手法の精度を確かめ るために行った評価実験とその結果について述べる。
4.3.1 評価実験の手法
4.3.1節では、センサのループの形状計測手法の精度を確かめるために行った評価実験の
手法について述べる。評価実験を行った環境を図4.15に示す。
図4.15: 実験環境
図4.15に示されるように、デバイスを横から撮影することで一つのセンサのループの形 状を測定した。カメラはNikon D5000(画素数1290万ピクセル)を用い、撮影後にデバイス を中心とした縦横500ピクセルの範囲を取り出した。図4.16測定対象となるセンサのルー プがカメラの光軸と垂直となるように注意しながらデバイスを変形させた。
図4.16: センサのループの形状測定
測定によって得られたループの形状と、システムが認識したループの形状を比較し、適合 率を求める。二つのループの成す閉曲線によって囲まれる部分の面積が等しくなるように一 方を拡大あるいは縮小させた後、二つの閉曲線を重ね合わせたときの共通部分の面積を求め る。閉曲線によって囲まれる部分の面積に対する共通部分の面積の割合を適合率と定義する。
撮影結果と抽出した形状の例を図4.17に示す。
(a)
(b)
図4.17: 測定によって得られた形状(a) 撮影結果(b) 抽出した形状
図4.17 (b)の点は閉曲線上の等間隔な30点であり、これらの点の位置をピクセル単位で
調べて形状比較に利用する。撮影時にシステムが認識した形状を図4.18に示す。
図4.18: システムが認識した形状
図4.17 (b)の抽出したループの形状を図4.18の閉曲線の形状と比較する。図4.17から得
られた点の位置を図4.19のように図4.18の描かれる座標のスケールに対応させた。
図4.19: 撮影画像の座標とシステムが描く画像の座標の対応
各点の座標を求めた後、3.2節において述べたパラメトリック曲線を用いて図4.20のよう に各点を滑らかに繋ぐ閉曲線を描いた。
図 4.20: 再現された閉曲線
図4.21のように得られた閉曲線で囲まれる領域に格子点を描画した。同様に、図4.18に ついても格子点を描画した様子を図4.22に示す。
図 4.21: 格子点1 図4.22: 格子点2
図4.21の格子点の個数が図4.22の格子点の個数に等しくなるように図4.21の閉曲線を拡 大した後、図4.23のように重ね合わせて共通の格子点の個数を求める。一つの閉曲線によっ て囲まれる領域にある格子点の個数に対する、共通の格子点の個数の割合を適合率として算 出する。
図4.23: 形状の適合率
共通の格子点の個数をNc、一つの閉曲線によって囲まれる領域にある格子点の個数をNS
としたとき、適合率は式(4.3)のように算出する。
precision= Nc
Ns ×100 (4.3)
ループの10種類の形状に対して適合率を求めた結果を表4.2に示す。
表 4.2: 評価実験の結果
sample number 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
precision(%) 81.6 90.6 85.2 60.9 53.2 71.8 87.0 92.6 63.1 80.4