延岡市の沿岸海域はダイビングスポットとしての歴史が長く、30年以上前から開発 されてきたポイントは40ヶ所を超えている。それらではハードコーラル(造礁サンゴ
)
やソフトコーラルなどが見られるが、本調査では南北浦海中公園地区に指定された6
地 区の状況をまとめた。●
1
号地(
延岡市島野浦野坂)
本地区には卓上ミドリイシ類の大群落が分布し、その価値が評価されて
1974
年に海 中公園地区(
南北浦海中公園地区1
号地)
に指定された。しかしその群落は1990
年までに 完全に消失(
福田他、1991)
して保全価値が無くなったが、1990
年にオオスリバチサンゴ 群落が発見されて(
占部、1994)
自然資質の価値が高まり、1993
年には海中公園区域が拡 張された。オオスリバチサンゴは本土暖海域の普通種であるが、
60
を超える大型群体が密集した 大群落は国内の他の海域からは知られていない。群体が大きく成長して均整のとれたロ ゼット状(
バラの花びらのような形)
を形成したことも珍しく、本群落は国内最大の群生 地として学術的な重要性が高いとともに、観光資源としても大きな価値を有していた。ところが
2000
年ごろから地元ダイバーにより、オオスリバチサンゴの斃死・破損・転倒が観察され始め
(
延岡市水産課、2007
ほか)
、発見から約20
年を経た現在ではオオ スリバチサンゴ群落は著しく悪化し、以下のように危機的な状況にあるとされる。・ 健全群体数は
10(20.8%)
と少なく、大部分の群体に異常が認められる。・ 半数の群体で転倒が認められる。
・ 転倒していない群体でも底部が裸出する浮き上がり現象が認められる。
・ 全体の約
2
割の群体で、群体周辺の脱落もしくは分解が認められる。・ 群体基部にガンガゼが多数蝟集しこれによる浸食を受けている可能性が持たれる。
・ 転倒していなくても立ち枯れ状態で斃死している群体が
20%
弱認められる。一方、オオスリバチサンゴ群落のやや沖側に希少種であるオオナガレハナサンゴの約
30
群体からなる群落が発見された。本群落はオオスリバチサンゴ群落に匹敵する重要な 価値がある(
野村・杉原、2009)
。また、オオスリバチサンゴの記録画像には、日向大島
(
日南海中公園)
と同様の病気(Turbinaria Ulcerative White Spot disease(
仮称))
が確認された(
山城・福田、2008)
との ことで、病気への警戒も求められている。最近の調査
(
宮崎県、2010)
によっても、危機的な状況が確認された。比較的大きなオ オスリバチサンゴが生息しているが、他はミドリイシ属が死滅して貧相でサンゴの被度 は5%
以下と低い。死滅したミドリイシ属の表面にはウニが多数生息していた。延岡市では
2010
年2
月にオオスリバチサンゴ群落を投錨被害から守るため、生息範 囲を海上からでも確認できるようウキ6
個を設置した。対策が功を奏し、残されたオオ スリバチサンゴ群落の状態が改善され、オオナガレハナサンゴ群落が健全に維持される ことが期待されている。4
●
2
号地(
博奕バエ)
海底は岩肌が露出しウニが大量に生息するほか、見るべきサンゴはほぼない
(
宮崎放送、2008)
とされた。最近の調査
(
宮崎県、2010)
でも、サンゴは僅かしか生息せず、被度は5%
で海底の岩 が目立った。ウニが見られ、オニヒトデも確認されている。●
3
号地(
作兵衛鼻東側の湾)
湾内にサンゴは少なく、ごろごろした岩場が目立つ
(
宮崎放送、2008)
とされた。最近の調査
(
宮崎県、2010)
によると、優先種はミドリイシ属と見られるが被度は5%
程度で岩が目立っており、平成
8
年(
海中公園センター、1997)
と同様に貧相であること が確認された。●
4
号地(
地の小島)
平成
16
年(2004
年)
の台風で大被害を受けたが、ダイバーによると復活傾向が見られるらしい。南側に少しエンタクミドリイシサンゴの群落がある
(
宮崎放送、2008)
とされ た。最近の調査
(
宮崎県、2010)
によると、地の小島の西側のサンゴの被度は25
~30%
で、回復傾向を裏付けているかもしれない。ミドリイシ属、コモンサンゴ属、イボサンゴ属、
トゲキクメイシ属が生息する。ウニが多数生息している。その沖
(
区域外)
の被度は60%
と高く、その
90%
がミドリイシ属と報告されている。●
5
号地(
熊野江側の海岸線)
本地区には海岸線に沿って南から北に
3
つの湾状の地形が連なり、一番南の湾は1993
年に海中公園地区に追加指定された。本地区にはかつてミドリイシ系サンゴの大規模な群落があり、県内有数の有名なダイ ビングスポットであった
(
パラダイスガーデンとの別名あり)
が、ほぼ消失した。その北 側には、ミドリイシサンゴが群生していたが、3
割~4
割ほどのサンゴが死んで骨格が 残り、黄色く変色し藻類が生えている(
宮崎放送、2008)
と報告された。最近の調査
(
宮崎県、2010)
で確認されたところによると、一番南の湾では広範囲でサ ンゴが死滅し、トゲキクメイシ属の被度は低い。岸から沖に伸びる島浦海底送水管の敷 設工事に伴うと思われるサンゴの破損もみられる。平成19
年夏に送水管布設替ルート の調査が実施されたが報告書(
日水コン、2008)
にはサンゴの記述はなく、既に多くが死 滅していたものと想像される。中央の湾でもほとんどのサンゴが死滅し、ウニが多数生息している。
一番北側、むら瀬よりの湾だけに健全なミドイシ属がみられ、被度も
60
~70%
と高い。●
6
号地(
浦城沖ノ七つ島周辺)
トゲトサカが少々瀬の周りに見えるのみで、海底には目立ったサンゴは見えない。テ ーブルサンゴはあった形跡もない
(
宮崎放送、2008)
とされた。最近の調査
(
宮崎県、2010)
でも、南よりの海底には砂地が拡がりサンゴは全くみられ なかった。湾の北よりの海底には岩が拡がりサンゴが生息可能にみえるが被度は5%
以 下と低く、平成8
年(
海中公園センター、1997)
と同様に貧相だった。5
● 島浦町野坂
(1
号地)
および宇治漁港入り口(
区域外)
高橋勝栄氏
(
延岡マリンサービス)
が、野坂のオオスリバチサンゴ群落と宇治漁港入り 口のテーブルサンゴ、エダサンゴの群生に白化現象や外的損傷がないかモニタリングを 続けた。2010
年1
~3
月の間、両地区に異常はみられなかった。4 4
4 4) ) ) )確認種 確認種 確認種 確認種リスト リスト リスト リスト
宮崎県サンゴ群集調査報告書
(
海中公園センター、1997)
と宮崎海中公園地区サンゴ現況 把握調査報告書(
野村・杉原、2009)
より、出現種をまとめた。1
号地(
延岡市島野浦野坂)
以外は、1997
年以降の確認が十分でないため、当時の状況をそのまま記載した。●
1
号地(
延岡市島野浦野坂)
出典:宮崎海中公園地区サンゴ現況把握調査報告書
(
野村・杉原、2009)
POCILLOPORIDAE
ハナヤサイサンゴ科
Pociilopora damicornis
ハナヤサイサンゴACROPORIDAE
ミドリイシ科Acropora hyacinthus
クシハダミドリイシAcropora japonica
ニホンミドリイシAcropora solitaryensis
エンタクミドリイシMontipora hispida
トゲコモンサンゴMontipora mollis
モリスコモンサンゴMontipora venosa
コモンサンゴPORITIDAE
ハマサンゴ科Goniopora lobata
ハナガササンゴPorites lutea
コブハマサンゴSIDERASTREIDAE
ヤスリサンゴ科Psammocora contigua
ヤッコアミメサンゴPsammocora profundacella
アミメサンゴPsammocora superficialis
ベルベットサンゴMUSSIDAE
オオトゲサンゴ科Acanthastrea echinata
ヒメオオトゲキクメイシAcanthastrea hillae
オオトゲキクメイシMicromussa amakusensis
アマクサオオトゲキクメイシSymphyllia valenciennesii
ハナガタサンゴMERULINIDAE
サザナミサンゴ科Hydnophora exesa
イボサンゴFAVIIDAE
キクメイシ科Cyphastrea chalcidicum
コトゲキクメイシ6
Cyphastrea microphthalma
トゲキクメイシCyphastrea serailia
フカトゲキクメイシFavia favus
スボミキクメイシFavia rotumana
ツツマキクメイシFavia rotundata veron
アツキクメイシFavia speciosa
キクメイシFavites abdita
カメノコキクメイシFavites chinensis
シナキクメイシFavites flexuosa
オオカメノコキクメイシFavites pentagona
ゴカクキクメイシFavites russelli
シモフリカメノコキクメイシGoniastrea aspera
パリカメノコキクメイシGoniastrea australensis
ウネカメノコキクメイシGoniastrea deformis
ミダレカメノコキクメイシLeeptastrea pruinosa
トゲルリサンゴMontastrea valenciennesi
タカクキクメイシOulastrea crispate
キクメイシモドキOulophyllia crispa
オオナガレサンゴPlatygyra contorta
チヂミノウサンゴPlesiastrea versipora
コマルキクメイシEUPHYLLIDAE
ナガレハナサンゴ科Catalaphyllia jardinei
オオナガレハナサンゴDENDROPHYLLIDAE
キサンゴ科Turbinaria mesenterina
スリバチサンゴTurbinaria peltata
オオスリバチサンゴ●
2
~6
号地出典:宮崎県サンゴ群集調査報告書
(1997
年3
月)
に記載された確認種
1
号2
号3
号4
号5
号6
号POCILLOPORIDAE
ハナヤサイサンゴ科
Pocillopora damicornis
ハナヤサイサンゴ+
+
+
+
ACROPORIDAE
ミドリイシ科