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第 4 章

4.1 序論

MHCクラスⅡ領域のゲノム構造は、動物種によって違いが認められ る。ヒトは第6番染色体にMHCクラスⅡ領域が存在し、13個のMHCクラス

Ⅱ遺伝子が同定された(Figure 1)。一方イヌは、第12番染色体にMHCクラ スⅡ領域が存在し、8個のMHCクラスⅡ遺伝子が同定された(Lindblad-Toh et al., 2005)。具体的には、ヒトのHLA-DRA, -DRB1および-DRB5が位置する領域

(MHC-DR領域)には、イヌでは2個のMHCクラスⅡ遺伝子(DLA-DRAおよ び-DRB1)が同定された。次に、ヒトにおいて、HLA-DQA1, -DQB1, -DQA2お よび-DQB2が位置する領域(MHC-DQ領域)には、イヌでは2個のMHCクラ スⅡ遺伝子(DLA-DQA1および-DQB1)が同定された。また、ヒトにおいて HLA-DOB, -DMB, -DMAおよび-DOAが位置する領域(MHC-DM/DO領域)に は、イヌでも同様に4個(DLA-DOB, -DMB, -DMAおよび-DOA)が同定され た。さらに、ヒトにおいてHLA-DPA1および-DPB1が位置する領域(MHC-DP 領域)には、イヌでは、欠失している。以上のように、ヒトとイヌを比較する とMHCクラスⅡ遺伝子の数と、MHCゲノム構造に違いが認められている。

ネコは第B2染色体にMHCクラスⅡ領域が存在し、そのゲノム配列 は、Yuhkiら(2008年)によって決定された。現在までに、ネコ1個体の2種 類のハプロタイプ(ハプロタイプ1とハプロタイプ2)が報告されている。こ れらのうち、ハプロタイプ1はMHCクラスⅡ領域全長の配列が公開された が、ハプロタイプ2は、MHC-DR領域のみの配列が公開された。

このネコとヒトのMHCクラスⅡ領域を比較すると、ヒトのMHC-DQ 領域に相当する領域は、ネコでは欠失していた。また、ネコのMHC-DP領域に 2個(FLA-DPAおよび-DPB)が同定されたが、どちらも偽遺伝子であった。そ

の一方で、ヒトのMHC-DR領域に相当する領域は、ネコでは拡大しており、ヒ トやイヌと比較して数多くのMHC-DR遺伝子が同定されている。具体的には、

ハプロタイプ1では7個の遺伝子(FLADRA1, DRA2, DRA3, DRB1, DRB2, -DRB3および-DRB4)、ハプロタイプ2では8個(FLADRA1, DRA2, DRA3, -DRB1, -DRB2, -DRB3, -DRB4および-DRB5)が同定された。このことからハプロ タイプ1とハプロタイプ2との間でMHC-DR遺伝子の数が異なっており、コピ ー数多型を有することが明らかにされた。また、ヒトのMHC-DM/DO領域に相 当する領域には、ネコでは4個の遺伝子(FLA-DOB, -DMB, -DMA および-DOA)が同定された。このように、ネコは、MHC-DRおよびMHC-DM/DO領 域に同定された遺伝子のみが機能的であった(Yuhki et al., 2008)。

ネコのMHC-DRおよびMHC-DM/DO領域には、機能的な遺伝子が同定 されている。このうち、MHC-DM/DO領域のMHCクラスⅡ遺伝子は、ヒトに おいて多型が乏しいことから、ネコのMHC-DM/DO領域のMHCクラスⅡ遺伝 子も多型は期待されなかった。また、ネコのMHC-DM/DO領域に同定された4 個の遺伝子は研究の対象となっていない。その一方で、ネコのMHC-DR領域の MHCクラスⅡ遺伝子のうち、1個のFLA-DRA遺伝子(FLA-DRA1)および4 個のFLA-DRB遺伝子群(FLA-DRB1, FLA-DRB3, FLA-DRB4および

FLA-DRB5)の転写産物が同定された。さらに、これらの遺伝子のうち、4個の

現在までに報告されたFLA-DRBアレルは、149 個体の多型解析から 70種類のみであり、他の動物種と比較して、多型情報が極めて乏しい

(Kuwahara et al., 2000;Kuwahara et al., 2001;Kennedy et al., 2002;Kennedy et al., 2003a)。また、これらの塩基配列のほとんどは、サブクローニング法によって 塩基配列決定が行われてきた。しかし、サブクローニング法による塩基配列決 定は、必要な時間および費用が膨大であるため、数多くの個体の多型解析には 適していなかった。本章にて、FLA-DRB遺伝子群における多型解析法を開発 するためには、4個(FLA-DRB1, FLA-DRB3, FLA-DRB4およびFLA-DRB5)す

べてのFLA-DRB遺伝子における対立遺伝子(アレル)を同定する必要があっ

た。そこで、第3章と同様にアンプリコンシークエンス法が、FLA-DRB遺伝 子の多型解析法に適していると考えられた。そこで本章では、NGSを用いたア ンプリコンシークエンシング法によるFLA-DRB遺伝子群を対象とした多型解 析法の開発を試みた。また、開発した多型解析法の正確性を明らかにするため に、第3章同様、血縁関係の明確な個体を実験に供した。同定されたアレルの 分子系統解析により、各FLA-DRB遺伝子へ分類した。さらに、血縁関係に基 づいたハプロタイプの推定を行った。

ドキュメント内 ネコ MHC 遺伝子の多型性に関する研究 (ページ 79-82)

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