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第 6 章 グライドセット部分転位の積層欠陥エネルギーの温度依存性

6.3. 結果と考察

6.3.1. 広い拡張幅の起源

文献[7]で述べられているレーザと材料の相互作用による考察では,ターゲットの第

1 原子層が蒸発することを,アブレーション現象と呼んでいる.その蒸気がレーザエネ

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ルギーを吸収し続けると,いっそう加熱されプラズマ化される.プラズマは膨張し,タ

ーゲット内と,閉じ込め媒体(水)の 2 つの衝撃波が生成される.

図 6.1 は,レーザピーニングされた Si の表面写真である.直径 400μm の領域がア

ブレーションされている.図 6.2 は,DFWB モードで撮影した断面 TEM 像であり,照

射面直下の典型的な微細構造を示している.顕微鏡写真には明確な境界 X-X 'を有する

2 つの領域がある. レーザピーニングされた表面の直下にある X-X 'より上の領域では,

多くの球状の空隙および垂直方向の転位が観察される.この層は前章で示した損傷層 I

でこの空隙は,レーザピーニングによる温度上昇の結果として形成される Si 蒸気の気

図6. 1 10GW/cm2でレーザピーニングされたSi表面の光顕像,衝撃で割れお

よびクラックが発生している.

100μm

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泡である.また垂直転位 B は液体 Si の凝固時に導入されたものである[6].これらの大

部分(A で示した)は拡張してるように見えないが,一部(B および B ')は広く拡張し

ていることがわかる.

本章では,境界 X-X 'より下で,前章で述べた損傷層Ⅱについて考察する.ここでは

特徴的なフリンジに伴う六角形の配置を有する転位ループが観察されるそれを図 6.3 に

対の矢印によって示した.これらの転位は,積層欠陥を伴って広く拡張した GD 転位と

して同定される.それらは,六角形状を伴い,〈110〉方位,すなわちパイエルス・ポテ

ンシャルの谷に沿っている.

図 6. 2 境界X–X′近傍のGD転位. X–X′の上の領域はレーザピーニング 中に溶融した部分(損傷層Ⅰ)[6].

X X’

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このようなフリンジ付随の GD 転位は,境界 X-X 'の直下(数μm 以内)でのみ観察

された.このさらに下には,図 6.4 に示すようにシャッフルセット(SP)転位が観察さ

図6. 4 X–X′より下の領域でよく見られるSP転位

図 6. 3 GD転位の拡大像.広く拡張したGD転位は矢印の 対で示した.

126

れた[8,9].言うまでもなく,観察された微細構造は,加熱後の冷却中の凝固過程で形成

されたものであるが,試料は水中でレーザピーニング処理されているため,急冷速度は

極めて速いと予想できる.したがって,冷却中の微細構造の変化は,もしあったとして

も,それほど影響しないと期待される.したがって,図 6.2 および図 6.3 に示した広く

図6. 5 レーザピーニング後のバルク状態で1300℃30分アニールされた

GD転位.薄片は[1 1 1]に対し垂直.(a) g = 1 1 1の条件で撮影.積層欠 陥は特徴的なフリンジコントラストを示す.S–S′で示す広く拡張した 分解転位は表面の影響による.(b) g = 2 0 2の条件で撮影.2つのショッ クレー部分転位が強く現れている.

(a)

(b)

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拡張した GD 転位は,非常に高い温度(融解温度の直下)でレーザピーニング中の非常

に強い歪により導入されたと結論するのが合理的であろう.

ここで興味深いのは,六角形の GD 転位の拡張幅Δが数 10nm と大きいことである.

今までに観察された GD 転位のΔの値は,先頭と追っかけのショックレー部分転位の

相関の無い移動を除いて,5〜10nm の範囲であった.この数十 nm の値は極めて大き

い.

次に試料のアニール効果について述べる.図 6.5(a)と(b)はレーザピーニングによっ

て導入された転位をバルク状態で 1350℃30 分アニールしたものの DFWB 像である.

図 6.5(b)では,ショックレーの部分転位の両者が対称的であり,図 6.5(a)では積層欠陥

の特徴的なフリンジコントラストを示している.図で明らかなようにアニーリング前と

比較して転位密度が大幅に低下している.これは,転位が完全にアニールされたことを

示している.さらに,拡張幅Δは,レーザピーニング直後よりも小さくなっていること

もわかる.これは,図 6.2 および 6.3 に示した異常に大きなΔ値が,ショックレーの部

分転位の先頭部分転位および追っかけ部分転位の無相関な動きに起因したものである

ことを示している.