第 4 章 Si 基板上窒化物ヘテロ構造の転位の生成と消滅
4.7. 傾斜成長基板上 GaN における積層欠陥の TEM 観察
GaN は通常(0001)面成長したものが用いられるが,ヘテロ接合に大きなピエ
ゾ電界が発生するため発光デバイスではその効率向上のさまたげになっている.これを
図 4.8 (1-101)GaNの断面走査電子顕微鏡像(ファセッ
トの周期は2μm,黄色矢印はGaNの成長方向を示す)
(001)Si
<0001>GaN
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回避する方法として半極性あるいは非極性面を利用することが提案されてきた.それに
必要な GaN バルク結晶の入手が困難であるためサファイヤや Si 基板に表面加工を施
す手法が採用されている[35].
図4.8は(001)傾斜 Si 基板上に異方性エッチングにより形成された(111)ファセッ
ト面上に AlN 緩衝層を介して C 軸配向した(1-101)GaN 膜が形成されたものであ
る.この方法の最大の欠点は隣り合う結晶が合体する場所に積層欠陥が導入されること
である.このことはマイクロメートルサイズのデバイス作製には大きな支障とならない
が,ミリメートルオーダーのデバイスではその性能を損なう大きな要因となる.合体領
域における欠陥の振る舞いを明らかにするため,本節では(1-101)GaN におけるストライ
プの合体と積層欠陥の生成ならびに伝搬状況を高分解 TEM 像により観察・評価する[36].
図 4.9 に,合体部分上部(成長層の表面近く)の断面 TEM 像を示した.この像には,
細い直線状の暗線で現れる a 面の積層欠陥(basal-plane stacking fault, BSF)とやや太く 図 4.9 図4.8の合体部の上部の断面TEM像
(左はSTEMモードDF像.右は部分拡大したTEM-BF像.)
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途中で屈曲する暗線で現れる TD の 2 種類がある.一般に貫通転位は GaN 結晶内で
(0001)軸(C 軸)方向に伝搬するものであるが,この試料のように(1-101)半極性ファセ
ット面を伴いながら成長させるときには,このファセット面と遭遇した貫通転位は表面
に垂直な方向に力を受け,C 軸に垂直な方向に曲げられる.この屈曲現象により,この貫
通転位は試料表面に到達する機会が失われ,結果として,試料表面における貫通転位密
度が低減する.この機構は,AlN を成長核として利用する本手法に特有の現象である.
半極性あるいは無極性 GaN に見られる積層欠陥は,一般的に,消えることは無く試料
表面まで到達すると報告されている [37,38]が,ここでの結果は異なる.そこで,高分解
TEM による格子像を評価することとした.図 4.10 は図4.9 中の三角形ボイド部の直
上部分を拡大したものである.ここでの結晶表面は,左側から成長してきた(0001)面と 図 4. 10 合体部上部の高分解能像
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右側から成長してきた(000-1)面とからなりそれが合体している.この積層欠陥には細い
線とやや太い線の 2 種類があることが分かる.積層欠陥には単層(I1),複層(I2)の2種
類に加えて,多層(E タイプ)の積層欠陥が平行して導入されており,これらが生成,消滅
する様子が見える.すなわち,複数の多層欠陥が相互作用しながら,その層数を変化させ
るとともに,多層欠陥が複層欠陥にさらに単層欠陥へと変異することが見て取れ,試料
表面に現れる積層欠陥のほとんどが単層の積層欠陥(I1)に限定されることとなった.こ
のような積層欠陥の変異は,成長と共に,最もエネルギーの低い単層欠陥に移ったとも
のして理解できるが,結晶成長条件下では立方晶より六方晶の方が安定であることとも
関係していると考えられる[39].