懸§
第3節 幼児の起床・就寝時刻の規則性と心身の健康状態との関連について
第1項 心身の健康状態尺度に関する基礎統計
本章の第1節で幼稚園、保育所間に幼児の起床・就寝時刻の規則性の差が確認され たので、設置間ごとに幼児の心身の健康状態尺度得点、その下位尺度得点を算出し、
差を確認するために対応のないt検定を行った。その結果を図3−3−1、図3−3−2
に示す。
幼稚園は保育所に比べ、幼児の心身の健康状態尺度、下位尺度の生活習慣因子と疲 労性因子に有意差が認められ、幼稚園の子どもは、保育所の子どもよりも心身の健康 状態が良好であり、生活習慣が良好であるため、疲労がない状態であることが推察さ れる。また、差は認められないものの、下位尺度の神経性因子を除く、全ての因子得 点が保育所と比べて幼稚園の方が高かった。このことから保育所児に比べ、幼稚園児 の健康状態の良好性が窺える。
55
50
45
40
Fb一3
30
3.27** 囹幼稚園
□保育所
図3−3ヨ
47.6
幼稚園 保育所 注1) 稀lPく0.01
注2) 得点が高いほど健康度は高い 幼稚園、保育所別の幼児の心身の健康状態尺度比較
16
14
12
10
8 6 4
り臼
0
4.71紳*
14.8 13.7 i2.0 11.5
情緒不安
9,2 9・5
図3一・争2
6.4 n g
園所稚育幼保瞬口
3,73***
7︑1
6.7
神経質 多動性 生活習慣 疲労性 注1) ***IP〈0.001
注2) 得点が高いほど健康度は高い 幼稚園、保育所別の幼児の心身の健康状態尺度の下位尺度別比較
第2項 起床・就寝時刻の規則性と心身の健康状態尺度との相互関連性
起床・就寝時刻の規則性と心身の健康状態との相互関連性を検討するために、ピアソ ンの積率相関係数を算出し、幼児の心身の健康状態尺度の下位尺度についても同じく 検討した。幼稚園、保育所問に差が確認されたので、設置間ごとに分析を行い、その 結果を表3−3−1に示す。また、起床・就寝時刻の規則性と心身の健康状態の相互関連 性について有意差が検出されたもののみを取り上げ、その相関図を図3−3−3に示す。
まず、幼稚園の相互関連性の結果を概観する。幼稚園の起床時刻の規則性について は、「幼児の心身の健康状態尺度jとの関連は認められなかった。下位尺度では「 生 活習1貫 因子」と有意な正の相互関連性が認められた。一方、就寝時刻の規則性につ いては、「幼児の心身の健康状態尺度」と有意な正の相互関連性が認められた。下位尺 度では「 情緒不安定 因子」、「 多動性 因子」、「 生活習慣 因子」と有意な正の相 互関連性が認められた。
次に、保育所の相互関連性を概観する。保育所の起床時刻の規則性については、「幼 児の心身の健康状態尺度」と有意な正の相互関連性が認められた。下位尺度では「 生 活習慣 因子」、「 疲労性 因子」と有意な正の相互関連性が認められた。一方、就寝 時刻の規則性については、「幼児の心身の健康状態尺度」との関連は認められなかった。
下位尺度では「 生活習慣 因子」と有意な正の相互関連性が認められた。
以上を概観すると、幼稚園、保育所ともに起床・就寝時刻の規則性は下位尺度である 生活習慣因子と関連する。規則的な起床一就寝のリズムは、生活のより良い循環を形 成させ、規則正しい生活習慣を作り出していることが推察される。また、幼稚園では 就寝時刻の規則性と、保育所では起床時刻の規則性と幼児の心身の健康状態尺度、そ の下位尺度との関連性が認められた。起床は通園があるので固定しやすいのに対し、
就寝は固定されにくい。こうした状況を踏まえれば、就寝の状況は睡眠時間に直接影 響しやすくなるということが仮定でき、それが健康状態にも反映することが考えられ る。実際に奥田ら18)は、幼児の心の健康状態と生活状況との因果関係についての検討
の中で、心の健康度を高めるには、早い就寝時刻が影響を及ぼすことを明らかにして いる。本研究においても、幼稚園は就寝時刻の規則性と健康状態が関連しており、結 果が対応していると考えられる。しかし、保育所では就寝ではなく、起床時刻の規則 性と相互に関連してくる。前章で述べたとおり、保育所は一日の生活に起床時刻の規 則性が大きく反映していることを述べたが、保育所児は生活の基点である起床が健康 状態を左右していることが想定される。
前項で、幼稚園児は保育所児に比べ健康状態が良好であることを明らかにした。健 康状態が起床よりも就寝に反映されるという知見を考慮すると、幼稚園児はそういっ た知見と対応した結果であった。さらに本研究において、保育所児に比べ健康状態も 良好であった。一方、保育所児はそういった知見と対応せず、起床を基点とした生活 が健康状態に反映し、幼稚園児に比べ健康状態が良好でないという結果であった。以 上のことから、幼稚園の生活状況は保育所の生活状況とは異なるという状況が推察さ
れる。
また、保育所児がより良好な健康状態になるには、幼稚園児と同様の生活スタイル になることが望まれる。しかし、前節において、設置間で子どもの生活状況は相違し、
その要因は親の就労状況であることを明らかにした。幼稚園の就労は父親のみで、保 育所では両親共働きという状況にあり、両親の就労という設置間の異質的な特徴が窺 えた。子どもの生活状況の改善は両親の就労という設置間の異質的な特徴をふまえる ことが望まれる。特に子育て支援という文脈で、実践的に生活改善を行うならば、設 置問の特徴をふまえ、幼稚園、保育所各々の生活状況に適した実践を展開する必要性 がある。さらに言えば、幼稚園では母親の生活状況が子どもの生活状況のみならず父 親の生活状況をも規定しているならば、「母」への支援を重視することが幼稚園では重 要になる。一方、保育所では父親、母親双方の生活状況が子どもの生活状況に反映す るならば、父母が双方が協力し合い子育てを行える環境を支援していく必要がある。
表3−3−1 幼稚園・保育所別、起床・就寝時刻の規則性と健康尺度の相関マトリックス
【幼稚園 規則性
健康尺度
下位尺度 起床時刻
規則性
就寝時刻 規則性
情緒
安定 神経質 多動性 生活習慣 疲労性 規則性 起床時刻
規則性
0.1632
**
316
0.1336
* 313
就寝時刻 規則性
0.2357
***
374
0.1911
***
308
0.1219
* 313 0.王4夏0
* 315 0.1504
**
313 健康尺度
0.1390
**
352
0.7896
***
308
0.6102
***
308
0.6077
***
308
0.5573
***
308
0.5087
***
308
下位尺度
情緒 安定
0.7987
***
352
0.4200
***
311
0.4597
***
313
0.玉651
**
311
0.3147
***
312 神経質
0.5496
***
352
0.4609
***
362
0.1986
***
313
0.2316
***
312 多動性
0.5690
***
352
0.3877
***
365
0,韮848
***
366
0.1699
**
313
0.2002
***
314 生活習慣
0.1440
**
366
0.1526
**
366
0.5365
***
352
0.1405
.007594 360
0.1230
* 364
0.1896
***
312 疲労性
0.1056
* 372 0.6255
***
352
0.4244
***
366
0.2893
***
367
0.2961
***
370
0.2132
***
365
注)*:P〈0.05 **:P〈0.01 ***:P〈0.001
幼稚園 心身の健康状態が
良好である
■ ノ ノ ! ノ , ! ノ ■ ノ! ノ
保育所
ノ
起床時刻の 則性がある 起床時刻の
則性がある 、 《下位尺度》
、、
、 、
、 、
、 ,
!
、
ノ おおらかである −
) 、
,
就寝時刻の 一
則性がある 一
、 良い生活習慣
就寝時刻の 則性がある
ノ
ノノ
疲労がない
注〉 ⇔は*緋;Pく0.001←一ゆは**;Pく0.OL ←一,は*二kO.05
図3 3−3幼稚園の起床・就寝時刻の規則性と生活状況との相互関連性