第4章 バースト層モデルの開発
4.4 バースト層の流速特性
4.4.3 平均流速
図-4.15 は,式(4.6)によって求められた各風速における真の吹送流uの平均流速の鉛直分布を 示したものである.平均流速の分布は,水面に近づくに従って流速が増加しており,風速に関わ らず波動成分や非定常な2次流などの低周波変動成分の影響がほとんど見られない水平流速場と なっている.このときの風波スペクトルのピーク周期が0.3秒程度であり,計測時間が32.8秒で あることから,主波の周期あるいは波長の180倍程度のスケールで平均されていることになる.
したがって,こうした大規模スケールで考える場合,変動成分はほぼ完全に平滑化され,吹送流 は鉛直分布を持つ平行流と扱えることがわかる.
図-4.16 は,ベキ則および対数則を適用して求めた回帰曲線と平均流速uの鉛直分布を各風速 Urについて比較したものである.Ur=6.7m/s の場合では,対数則とベキ則による回帰曲線はほ
4 6 8 10 12 14 16
0 0.1 0.2
Experiments 2001(hc= 8[cm]) 2002(hc=10[cm]) 2001(hc=19[cm]) 2001(hc=29[cm]) 2003(hc=10[cm])
UB=-1.21×10-2Ur
Ur [m/s]
-UB [m/s]
図-4.14 各下段水路高hcにおける風速Urと戻り流れUBの関係
98 第 4 章 バースト層モデルの開発
ぼ一致している.Ur=10.4m/sおよび12.0m/sの場合では,対数則による回帰曲線が水面に向か ってuの分布から離れていくのに対し,ベキ則による回帰曲線はuの分布によく一致しているこ とがわかる.これらの結果から,弱風時で白波砕波が発生しない状態の吹送流に対しては従来の 対数則を用いることが可能であるが,強風時の砕波を伴う吹送流に対しては対数則よりもベキ則 を用いた方が妥当であることが示された.
次に,平均流速u の鉛直分布の定式化を行なう.4.4.1節で述べたように,発達した風波による 水面変動のために,波谷面より上の速度場をオイラー的に連続計測することができず,平均水面 と波谷面の間が欠測領域になる.そこで,実験によって得られた波谷面以深の水平流速の鉛直分
0 0.1 0.2 0.3
100
101
Ur=6.7m/s All cases Average data
u[m/s]
-z[cm]
~ 0 0.1 ~ 0.2 0.3
100
101
u[m/s]
-z[cm]
Ur=10.4m/s All cases Average data
0 0.1 0.2 0.3
100
101
u[m/s]
-z[cm]
Ur=12.0m/s All cases Average data
~
図-4.15 各風速Urにおける平均流速uの鉛直分布
100 101
0.1 0.2 0.3
-z[cm]
u[m/s]
Ur=6.7[m/s]
Ur=10.4 Ur=12.0 Power law Log law
~
図-4.16 各風速Urにおける平均流速uの鉛直分布のベキ則および対数則による回帰式の比較
99
布に次式のベキ則を回帰させるとともに,その積分値が実験によって求めた吹送流の全流量に一 致するようにL1-βT-1の次元を持つα,無次元量βおよび長さの次元を持つγをそれぞれ決定し,
平均水面と波谷面の間の欠測領域を補った.
( )
u =α γ−z β (4.8)
また,得られたベキ則の支配定数α,β,γをを図-4.17に示すように風速Urの関数として回帰 させ,次式のように定式化した.
4 2 3 3
1.22 10 Ur 8.91 10 Ur 1.35 10
α=− × − + × − + × − (4.9)
5 2 2
7.93 10 Ur 1.10 10 Ur 0.16
β =− × − − × − − (4.10)
( ) 2.46 exp 14.54 Ur
γ= − × (4.11)
いずれの回帰式も両辺の次元は一致せず,単に数値のみの関係を与えるに過ぎないが,これによ って,風速Ur=6.7m/s~12.0m/s の範囲内であれば任意の風速条件から強風下吹送流の水平流速
u の鉛直分布が算出できる.
図-4.18は,モデル式(4.8)によって求めた水平流速の鉛直分布と実験値を比較したものである.
これよりモデル式は,全ての風速において実験値を適切に表していることがわかる.また,波谷
0 10 20
0 0.1 0.2
Ur[m/s]
α
0 10 20
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
Ur[m/s]
-β
0 10 20
0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004
Ur[m/s]
γ
図-4.17 ベキ則の支配定数α,β,γの定式化
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0
0.02
0.04
0.06
0.08
流速 u [m/s]
水深 [m]
モデル式 実験値 風速6.7m/s
風速10.4m/s 風速12.0m/s
図-4.18 モデル式(4.8)によって求めた水平流速uの鉛直分布と実験値の比較
100 第 4 章 バースト層モデルの開発
面以浅においてモデル式の流速は急増しているが,これによって吹送流の全流量が実験結果と一 致するようになる.