第4章 バースト層モデルの開発
4.7 実験結果の再現計算
118 第 4 章 バースト層モデルの開発
このことから,砕波応力項Db を用いて適切に数値計算を行うためには,鉛直解像度を 0.002cm 程度にする必要があることがわかる.これらに対して,平均化砕波応力項Db を用いた数値計算で は,鉛直解像度2cmであっても式(4.8)と数値計算の値が良く一致しており,その有効性がよくわ かる結果となっている.
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程式を解く必要がなく複雑な格子でも容易に計算することができるSOLA法(HSMAC法;highly simplified MAC method)を用いることにした.これらの数値計算の手順を図-4.37に示す.
数値風洞水槽は,実験で用いた二重床風洞水槽に合わせて,計算領域を図-4.38 のように設定 し,計算条件を表-4.8とした.そして,初期条件を静水状態として定常状態になるまで計算を行 い,実験の測点W03と同じ位置での水平流速u を実験値と比較した.
Navier - Stokes方程式
流速を計算
連続式D
モデル
を計算
渦動粘性係数 D=0
Yes
SOLA法
・⊿pを計算
・u,wを修正
No
, k ε k−ε
図-4.37 数値風洞水槽モデルの解析手法
W03
15m 0.49m
Wind
8.1m 0.1m
W03
15m 0.49m
Wind
8.1m 0.1m
図-4.38 数値風洞水槽モデルの計算領域
表-4.8 数値風洞水槽モデルの計算条件
初期条件 静水状態
タイムステップ ∆t = 0.001秒 格子数 水平:50,鉛直:24
解像度 水平:∆x = 0.3 m,鉛直:∆z = 0.025 m 境界条件 側面:摩擦無し,底面:壁法則
120 第 4 章 バースト層モデルの開発
0 0.1
-0.3 -0.2 -0.1 0
風速6.7m/s 実験値
計算値 Db無し
z [m]
流速[m/s]
図-4.39 風速6.7m/sにおける水平流速uの計算値と実験値の鉛直分布の比較
0 0.1
-0.3 -0.2 -0.1 0
風速10.4m/s 実験値
計算値 Db有り 計算値 Db無し
z [m]
流速[m/s]
図-4.40 風速10.4m/sにおける水平流速u の計算値と実験値の鉛直分布の比較
0 0.1
-0.3 -0.2 -0.1 0
風速12.0m/s
実験値 計算値 Db有り 計算値 Db無し
z [m]
流速[m/s]
図-4.41 風速12.0m/sにおける水平流速u の計算値と実験値の鉛直分布の比較
121 図-4.39は,非砕波時である風速6.7m/sにおける水平流速u の数値計算結果と実験値の鉛直分 布を比較したものである.ただし,この場合は非砕波時であるので砕波応力項は用いていない.
この図から,非砕波時であれば砕波応力項を用いない従来の計算方法であっても,実験結果を精 度良く再現できることがわかる.このことから,本研究で開発した数値風洞水槽は妥当なもので あると判断できる.
図-4.40 は,砕波時である風速 10.4m/s における水平流速u の数値計算結果と実験値の鉛直分 布を比較したものである.ここでは,比較のために砕波応力項を用いた場合(Db有り)と砕波応力 項を用いない場合(Db無し)の計算結果を示している.これより,Db 無しの従来の計算では,強風 下吹送流の特徴である平均水面直下の急峻な鉛直分布を持つバースト層(水深 5.5cm 程度)を再現 できないだけでなく,下層での分布に対しても再現が不十分なことがわかる.また,上層で過小 評価,下層で過大評価となっていることもわかる.これに対して,Db有りの計算では,ベキ則に 従う急峻な鉛直分布を持つバースト層のみならず,下層まで実測分布を適切に再現していること がわかる.これは,前述したように砕波応力が極く表層では非常に強い駆動力となり,逆にそれ 以深では抵抗力として作用するためである.
図-4.41 は,砕波時である風速 12.0m/s における水平流速u の数値計算結果と実験値の鉛直分 布を比較したものである.この図からも,Db無しの従来の計算では,バースト層(水深7.5cm程 度)内のベキ則に従う水平流速を表せず,下層でも流速が過大評価となることがわかる.そして,
Dbを用いることでベキ則に従う急峻な水平流速を計算することができ,さらにはバースト層以深 の流速の計算精度も改善されることが明らかとなった.以上の結果より,本研究で行った砕波応 力項を含めたモデル化が適切であると判断できる.