第六章 NLM の有効性の検討
6.5 NLM の有効性
6.5.2 平使い方向の曲げ強度
110
効であると考えられる。また、NLMはエレメントのヤング係数と積層効果の影響を受けた 強度との相関係数を推定していることなるので、第四章で示した 1ply の実験値におけるヤ ング係数と強度の相関係数と単純に比較することはできない。ただし、図 6.5のとおり実 験値E-F分布と推定値E-F分布が重なり合っていたことから、相関係数を含めNLMは有 効であると考えられる。
111
それぞれkの範囲と全体のデータの中でk<1 が出現した割合を求め表 6.3に示した。同表 より、何れの分布の組み合わせもk<1 が出現した割合は低く、特に実験値のEhとFtがN とN、Nと2PW、LNとN、LNと2PW及2PWと2PWの 5 通りの組合せについては、何
れもk<1 の割合が 1%未満と非常に低くなった。更に、この 5 通りの場合の kの最小値の
範囲は 0.85~0.95 となり、文献 38)に示すkの最小値 0.95 と比べて差が少ないと考えら れた。一方、実験値のEhとFtがNとLN、LNとLN、2PWとN及び2PWとLNの場合 の 4 通りの組合せについては、k の最小値の範囲は 0.71~0.85 となり、文献 38)の 0.95 から差が生じていた。以上より、上述の 5 通りの分布の組み合わせによる実験値E-F分布 を比較に用いることとした。
一方、推定値 E-F 分布については、計算に用いる Eh と Ft による強度分布の推定値が 3.5.1.3の(a)に示すとおり、3×3=9 通りの分布の組み合わせとなった。したがって、5 通 りとなる実験値 E-F分布と推定値 E-F 分布は 5×9=45 通りの分布の組み合わせとなるが、
6.5.1と同様に実験値E分布と推定値E分布の分布形が同一な 15 通りの組合せについて、
実験値F分布と推定値F分布との比較を行った。そのなかで、実験値のEhとFt がNと
Ft 最小値 最大値
N 0.90 4.85 0.5%
N 0.88 4.84 0.8%
N 0.90 6.75 0.4%
LN 0.78 2.62 2.0%
LN 0.75 2.81 1.7%
LN 0.76 2.43 1.9%
2PW 0.90 5.40 0.6%
2PW 0.90 4.58 0.7%
2PW 0.92 5.45 0.3%
N 0.91 4.69 0.8%
N 0.93 5.85 0.6%
N 0.91 4.91 0.3%
LN 0.72 2.44 1.9%
LN 0.76 3.28 1.8%
LN 0.78 2.81 2.2%
2PW 0.94 5.45 0.7%
2PW 0.95 5.39 0.4%
2PW 0.89 6.48 0.5%
N 0.76 5.13 1.0%
N 0.85 6.19 0.9%
N 0.82 5.50 1.2%
LN 0.78 2.72 2.6%
LN 0.71 2.49 2.8%
LN 0.77 2.61 2.2%
2PW 0.85 3.86 0.6%
2PW 0.85 5.60 0.6%
2PW 0.88 4.23 0.9%
注:
kの範囲
k<1の割合 実験値の分布形
表6.3 実 験 値 強 度 分 布におけるkの範囲及び1未満の値の割合1
-最外縁応力破壊の場合-
LN LN LN LN LN N N N N N Fh
N N N N
LN LN LN LN 2PW
2PW 2PW
N. LN, 2PW, Eh, Ft, k, 実 験 値 強 度 分 布:表6.1を参照。実験値 の分布形:実験値高度分布を計算する際に用いる1plyのEhとFt の実験値を表す。
2PW 2PW 2PW 2PW 2PW
2PW
112 注:
図6.7 Ftにおける実験値F分布と推定値F分布の比較1
Eh, Ft, 実験値F分布, 推定値F分布:表6.1を参照。
-LVLの平使い方向の曲げ試験(最外縁応力破壊)-
20 40 60 80 100 120
5 8 11 14 17 20 23
F t
(N/mm2 )Eh
(kN/mm2) 積層効果非線形
:実験値F分布(データ数:4500)
:推定値F分布(データ数:4500)
注:
-LVLの平使い方向の曲げ試験(最外縁応力破壊)-
Ft, k,:FvをFtに読み換えて図6.6を参照。
図6.8 実験値のFtとkとの関係1 0
1 2 3 4 5 6
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
k
Ft(N/mm2)
113
2PW、推定値のEhとFtがNとNの場合の組み合わせについて、実験値E-F分布と推定値
E-F分布を同一の散布図にプロットし、図 6.8として示した。
同図を見ると、実験値F分布と推定値F分布はお互い重なり合いほぼ一致していること が分かる。更に、上記を含めた 15 通りの分布の組み合わせで実験値F分布と推定値F分 布を比較、実験値F分布と推定値F分布がほぼ一致していた組み合わせは、次の 3 通りと なる。
1. 実験値のEhとFtがNとN、推定値のEhとFtがNとNの場合 2. 実験値のEhとFtがNと2PW、推定値のEhとFtがNとNの場合 3. 実験値のEhとFtがNと2PW、推定値のEhとFtがNとLNの場合
また、6.5.1と同様に、推定値F分布を構成するFtとkの関係を散布図に表し、図 6.9と して示した。同図より、Ft と k との関係は図 6.6 と同様であるが、Ft が大きくなると 1 未満の k が出現していることが分かる。しかし、k<1 となるデータ数はわずかであり,そ の範囲も非常に狭いことが分かる。
上述したとおり、NLMによる推定値のEhとFtがNとN、NとLNの場合は、実験値F 分布と推定値F分布がほぼ一致した。したがって、LVLの平使い方向の曲げの破壊クライ テリアを最外縁応力破壊と仮定した場合、Ft分布の推定に対し NLMは有効であると考え られる。また、6.5.1と同様に、EhとFtの相関係数の推定に対しても、NLMは有効であ ると考えられる。
(b) 破壊クライテリアを最外層応力破壊と仮定する場合
実験値E-F分布の計算には6.5.2の(a)と同じEhと Ftの実験値を用いるので、3×3=9 通りの分布の組み合わせで6.5.1と同様にkと実験値E-F分布を求めた。それぞれの組合 せ毎にk の範囲を見ると、何れもk の最小値が 1 を下回っていた。そこで、9 通りとなる 分布の組み合わせ毎に、6.5.2と同様にk<1 が出現した割合とkを求めて表 6.4に示した。
同表より、何れの分布の組み合わせでもk<1 が出現した割合は、最外縁応力破壊の場合 より高く 2.3%〜6.7%となった。そのなかで、実験値のEhとFtがNとN、Nと2PW、LN とN及び2PWと2PW の場合の4通りの組合せについては、k<1 の割合は 3%程度と比較 的低い水準に留まった。この 4 通り場合の k の最小値の範囲は 0.81~0.87 となり、文献 38)の最小値 0.95 と比べて少し差が生じているが、最外縁応力破壊でのkの最小値の範囲 0.85~0.95 と比べると、極端な差はないものと考えられる。次に、実験値の Eh と Ft が LNと2PWの場合は、k<1 の割合は少し高くなり 4%を超えるものも生じたが、kの最小値 の範囲は 0.84~0.87 となり、上述の最外縁応力破壊の範囲に対し差は少なかった。最後に、
実験値のEhとFtがNとLN、LNとLN、2PWとN及び2PWとLNの 4 通りの組合せに ついては、k<1 となる割合が 6%を超え、k の最小値の範囲も 0.59~0.78 と明らかに低い 値を示した。以上より、比較に用いる実験値 E-F 分布の分布の組み合わせは 6.5.2 の(a) と同様に、実験値のEhとFtがNとN、Nと2PW、LNとN、LNと2PW及び2PWと2PW の場合の 5 通りとした。
一方、推定値 E-F分布も計算に用いるEh と Ft の推定値は、3.5.1.3 の(b)に示すとお り 3×3=9 通りの分布の組み合わせとなった。したがって、5×9=45 通りとなる実験値E-F
114
分布と推定値E-F分布の組み合わせのなかで、6.5.2の(a)と同様に実験値E分布と推定値 E分布の分布形が同一な 15 通りの組合せについて、実験値F 分布と推定値F分布との比 較を行った。そのなかで、実験値のEhとFt がNとN、推定値のEhとFtがNとNの場合 の組み合わせについて、実験値 E-F 分布と推定値 E-F 分布を同一の散布図にプロットし、
図 6.9として示した。
同図を見ると、実験値F分布と推定値F分布はお互い重なり合いほぼ一致していること が分かる。更に、上記を含めた 15 通りの分布の組み合わせで実験値F分布と推定値F分 布を比較した結果、実験値F分布と推定値F分布がほぼ一致していた組み合わせは、次の 7 通りとなる。
1. 実験値のEhとFtがNとN、推定値のEhとFtがNとNの場合 2. 実験値のEhとFtがNとN、推定値のEhとFtがNとLNの場合 3. 実験値のEhとFtがNと2PW、推定値のEhとFtがNとNの場合 4. 実験値のEhとFtがNと2PW、推定値のEhとFtがNとLNの場合 5. 実験値のEhとFtがLNとN、推定値のEhとFtがLNとLNの場合
Ft 最小値 最大値
N 0.90 4.85 0.5%
N 0.88 4.84 0.8%
N 0.90 6.75 0.4%
LN 0.78 2.62 2.0%
LN 0.75 2.81 1.7%
LN 0.76 2.43 1.9%
2PW 0.90 5.40 0.6%
2PW 0.90 4.58 0.7%
2PW 0.92 5.45 0.3%
N 0.91 4.69 0.8%
N 0.93 5.85 0.6%
N 0.91 4.91 0.3%
LN 0.72 2.44 1.9%
LN 0.76 3.28 1.8%
LN 0.78 2.81 2.2%
2PW 0.94 5.45 0.7%
2PW 0.95 5.39 0.4%
2PW 0.89 6.48 0.5%
N 0.76 5.13 1.0%
N 0.85 6.19 0.9%
N 0.82 5.50 1.2%
LN 0.78 2.72 2.6%
LN 0.71 2.49 2.8%
LN 0.77 2.61 2.2%
2PW 0.85 3.86 0.6%
2PW 0.85 5.60 0.6%
2PW 0.88 4.23 0.9%
注:
kの範囲
k<1の割合 実験値の分布形
表6.4 実 験 値 強 度 分 布におけるkの範囲及び1未満の値の割合2
-最外層応力破壊の場合-
LN LN LN LN LN N N N N N Fh
N N N N
LN LN LN LN 2PW
2PW 2PW
N. LN, 2PW, Eh, Ft, k, 実 験 値 強 度 分 布:表6.1を参照。実験値 の分布形:表6.3を参照。
2PW 2PW 2PW 2PW 2PW
2PW
115 6.
注:
図6.9 Ftにおける実験値F分布と推定値F分布の比較2
Eh, Ft, 実験値F分布, 推定値F分布:表6.1を参照。
-LVLの平使い方向の曲げ試験(最外層応力破壊)-
20 40 60 80 100 120
5 8 11 14 17 20 23
F t
(N/mm2 )Eh
(kN/mm2) 積層効果非線形
:実験値F分布(データ数:4500)
:推定値F分布(データ数:4500)
注:
-LVLの平使い方向の曲げ試験(最外層応力破壊)-
Ft, k,:FvをFtに読み換えて図6.6を参照。
図6.10 実験値のFtとkとの関係2 0
1 2 3 4 5
0 20 40 60 80 100
k
Ft(N/mm2)
116
7. 実験値のEhとFtがLNと2PW、推定値のEhとFtがLNとNの場合 8. 実験値のEhとFtがLNと2PW、推定値のEhとFtがLNとLNの場合
以上の組み合わせにおけるkの最小値の範囲は 0.83~0.87 となり、結果的に最外縁応力破 壊のkの最小値の範囲と差が少なかったことを記す。
また、これまでと同様に、Ft と k の関係を散布図に表し、図 6.10 として示した。同図 より、Ft と k との関係は図 6.6 と同様であるが、k<1 となるデータ数の範囲が、図 6.8 よりも大きいことが分かる。しかし、Ftとkの分布全体と比べると、その範囲は狭く、ま
たk=1 の近傍に沿っていることが分かる。
上述したとおり、NLMによる推定値の Ehと FtがN とN、N とLN、LNと N及び LN とLNの場合は、実験値F分布と推定値F分布がほぼ一致した。したがって、LVLの平使 い方向の曲げの破壊クライテリアを最外層応力破壊と仮定した場合、Ft分布の推定に対し NLMは有効であると考えられる。また、6.5.2の(a)と同様に、EhとFtの相関係数の推定 に対しても、NLMは有効であると考えられる。