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第三章 非線形最小二乗法による単板積層材エレメント強度分布の推定

3.5 LVL の平使い方向の曲げ試験におけるエレメントの強度分布の推定

3.5.2 複合応力破壊

3.5.2.2 アルゴリズム

MORh の推定式である(3.22)式または(3.24)式の右辺は、N、B 及び T を除くと、各エレ メントのEh、Fh及びFtで構成されている。そこで、Eh、Fh及びFtによる強度分布を推

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定するアルゴリズムについて、次のとおり導入を試みた。

まず、これまで推定してきた強度と同様に、Fh 分布を正規分布、対数正規分布または 2P ワイブル分布と仮定すると、Fh分布のパラメータは 2 次元ベクトル(Pf1, Pf2)で表される。

ただし、Fh分布として正規分布または対数正規分布を仮定する場合、Pf1は平均値、Pf2は 標準偏差を表し、正規分布を仮定する場合、Pf1Pf2の単位は N/㎜ 2となる。また、Fh 分布として 2P ワイブル分布を仮定する場合、Pf1は尺度パラメータ、Pf2は形状パラメータ を表し、Pf1の単位は N/㎜2である。

ここで、EhとFhの関係は相関係数R.E-F、EhとFtの関係は相関係数R.E-T、FhとFtの 関係は相関係数R.F-Tで表す。したがって、平使い方向の曲げにおいて複合応力破壊を仮定 する場合の強度分布は、9 次元ベクトル(Pe1, Pe2, Pf1, Pf2, Pt1, Pt2, R.E-F, R.E-T, R.F-T)で表され る。ただし、(Pe1, Pe2)はこれまでと同様に3.3の推定値を用いることができることから、

未知パラメータは 7 次元ベクトル(Pf1, Pf2, Pt1, Pt2, R.E-F, R.E-T, R.F-T)となるが、この 7 個のパ ラメータをMORhの実験値のみで収束させるのは不可能である。そこで、3.4のFt分布の 推定値を用いて(Pt1, Pt2, R.E-T)を固定することにより、エレメントの強度分布のパラメータ のなかで、(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)で表される 4 個のパラメータを推定対象として求める。なお、

Ftに積層効果が存在する場合、上述の仮定は成立しない可能性があることから、Ftにおけ る積層効果の有無の検証は、3.5.1.3でも述べたとおり第五章で行うこととする。

次に、積層数NのMORhの実験値は昇順に並べ替え、これまでと同様に昇順番号sを用

いてEX(N, s) (s=1,…,L(N))と表す。一方、積層数NのMORhの推定値も、複合応力一次形

式の場合は(3.22)式、複合応力二次形式の場合は(3.24)式によりL(N)個の値を求めて昇順に 並び替え、sを用いてCAL(N, s) (s=1,…,L(N))と表す。ここで、CAL (N, s)の計算に用いる各エ レメントのEh、Fh及びFtの値は、(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)に初期値を与えて次のとおり求める。

まず、0 以上 1 未満の独立一様乱数 3 個を発生させて、それぞれ逆関数法 35)を用いて 3 個の独立標準正規乱数(e1,e2,e3)に変換する。更に、独立標準正規乱数ベクトル(e1,e2,e3)Tか ら有相関標準正規乱数ベクトル(r1,r2,r3)Tへの変換 35)は、コレスキー分解行列を用いて次 式のとおり行う。ただし、R.E-Tは3.4の推定値で固定した値であり、R.E-FR.F-Tは初期値 として与えた値であるが、何れも 0 以上 1 未満の値である。

( 𝑟1 𝑟2 𝑟3) =

(

1 0 0

𝑅.𝐸−𝐹 √1 − 𝑅.𝐸−𝐹2 0

𝑅.𝐸−𝑇 𝑅.𝐹−𝑇− 𝑅.𝐸−𝐹𝑅.𝐸−𝑇

√1 − 𝑅.𝐸−𝐹2 1 − 𝑅.𝐸−𝑇2−(𝑅.𝐹−𝑇− 𝑅.𝐸−𝐹𝑅.𝐸−𝑇)2 1 − 𝑅.𝐸−𝐹2 )

( 𝑒1 𝑒2 𝑒3)

(3.25) ここで、r1は3.3で推定した(Pe1, Pe2)に従うよう変換49,50)してEhの値とし、r2は(Pf1, Pf2) の初期値に従うよう変換49,50)してFhの値とし、r3は3.4の推定値を用いて固定した(Pt1, Pt2) に従うよう変換49,50)してFtの値とする。

以上より、Ehはe1を、Fhはe1e2を、Ftはe1、e2及びe3を用いることが分かる(ただ し、e1Eh、Fh及びFtで、e2FhFtでそれぞれ共通である)。このことから、CAL(N,

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s)の計算に用いるN個のEh、Fh及びFtをそれぞれN次元ベクトル 、 及び と表す と、 はN個のe1、 はN個ずつのe1e2、 はN個ずつのe1、e2及びe3を用いるこ とが分かる。したがって、N個のe1e2またはe3を要素とするN次元ベクトルを 、 ま たは と表すと、CAL (N, s)のパラメータは(3×N+9)次元ベクトル( , , , Pe1, Pe2, Pf1, Pf2, Pt1, Pt2, R.E-F, R.E-T, R.F-T)と表される。ただし、(Pe1, Pe2)は3.3の推定値を用いて、(Pt1, Pt2, R.E-T)は3.4の推定値を用いてそれぞれ固定するので、CAL (N, s)の実際のパラメータは(3×

N+4)次元ベクトル( , , , Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)となる。そこで、 、 及び の要素の値を 全て固定すると、これ以降のCAL(N, s)のパラメータは(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)となる。したがっ て、一様乱数の発生からこれまでの操作をN=8,9,11,…,17 の積層数毎にs=1,…,L(N)で繰 り返すと、EX(N, s)とCAL(N, s)の残差二乗和Sfのパラメータは(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)となる。し たがって、Sfの正規方程式にNLMの収束計算51)を適用することにより、(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T) の推定値が求められる。

以上をまとめると、EhFh及びFtの強度分布のパラメータ(Pe1, Pe2, Pf1, Pf2, Pt1, Pt2, R.E-F, R.E-T, R.F-T)のうち、(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)を推定するアルゴリズムは、次のとおりとなる。た だし、記号の意味はこれまで示してきたとおりである。

Eh分布、Fh分布及びFt分布のそれぞれについて、正規分布、対数正規分布または 2P ワイブル分布の何れかを仮定する。

② 推定対象となる(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)の初期値として、(PIf1, PIf2, RI.E-F, RI.F-T) (0<PIf2<Pf1, 0< RI.E-F<1, 0< RI.F-T<1)を与える。

③ MORh(積層数 N)の実験値を全て昇順に並び替え、それぞれ昇順番号 s (s=1,…,L(N)) を貼付してEX(N, s)と表す。

④ 0 以上 1 未満の独立一様乱数を 3 個発生させて、それぞれ逆関数法 35)により独立標準 正規乱数(e1, e2, e3)に変換する。

⑤ (e1, e2, e3)に(3.25)式を適用して、相関係数がRI.E-FR.E-T及びRI.F-Tの 3 次元有相関標準 正規乱数(r1, r2, r3)に変換35)する。ただし、R.E-Tは表 3.4に示す値のうち、①で仮定し た分布の組み合わせの値を用いて固定する。

⑥ ④~⑤の操作をN回繰り返し、それぞれN個のe1、e2e3r1、r2及びr3を求める。更 に、N個のe1を要素とするN次元ベクトルを と表し、以下同様にN個のe2を 、N 個のe3を 、N個のr1を 、N 個のr2を 及びN個のr3を と表す。

⑦ の各要素を分布が(Pe1, Pe2)に従う N 個の Eh に変換 49,50)し、これらを要素とする N 次元ベクトルを と表す。ただし、(Pe1, Pe2)は表 3.2に示す値のうち、①で仮定した 分布の値で固定する。

⑧ の各要素を分布が(PIf1, PIf2)に従うN個のFhに変換49,50)し、これらを要素とするN 次元ベクトルを と表す。

⑨ の各要素を分布が(Pt1, Pt2)に従うN個のFtに変換49,50)し、これらを要素とするN次 元ベクトルを と表す。ただし、(Pt1, Pt2)は表 3.4に示す値のうち、①で仮定した分 布の組み合わせの値を用いて固定する。

⑩ 積層数Nと の各要素を(3.3)式に代入し、MOEh(積層数N)の推定値を求める。

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⑪ 積層数 N、MOEh(積層数 N)の推定値、 、 及び の各要素を、クライテリアと

して複合応力一次形式を仮定する場合は(3.22)式、クライテリアとして複合応力二次形 式を仮定する場合は(3.24)式に代入し、MORh(積層数N)の推定値を求める。

⑫ ④~⑨を L(N)回繰り返し、求められた MORh(積層数 N)の推定値を全て昇順に並び替

え、昇順番号s (s=1,…,L(N))を貼付してCAL(N, s)と表す。

s=1,…,L(N)で、CAL(N, s)に用いている 、 及び の全ての要素の値を固定する。

N=8,9,11…,17 の積層数毎に、③~⑬を繰り返す。

⑮ 以下に示すEX(N, s)とCAL(N, s)の残差二乗和Sfが最小になるよう、PIf1PIf2RI.E-F及び RI.F-Tの値から動かしていき、Pf1、Pf2、R.E-F及びR.F-Tの収束値を求める51)

𝑆𝑓 =1

2∑ ∑𝐿(𝑁)(EX(𝑁,𝑠)− CAL(𝑁,𝑠))2

𝑆=1 9

𝑁=8 +1

2∑ ∑𝐿(𝑁)(EX(𝑁,𝑠) − CAL(𝑁,𝑠))2

𝑆=1 17

𝑁=11

⑯ (Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)の収束値が正規方程式の解として収束したか、(3.26)式を用いて確 認する51)

𝜕𝑆𝑓

𝜕𝑃𝑓1 ≅ 0 𝜕𝑆𝑓

𝜕𝑃𝑓2 ≅ 0 𝜕𝑆𝑓

𝜕𝑅.𝐸−𝐹 ≅ 0 𝜕𝑆𝑓

𝜕𝑅.𝐹−𝑇 ≅ 0 (3.26)

⑰ ②~⑯を繰り返して 20000 個の(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)を計算する。そのなかで、Sfが最小 となる(Pf1, Pf2, R.E-F, R.F-T)を推定値とする。