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2. 企業結合会計のフレッシュ・スタート法をめぐる議論

2.3. 小括

  前項まで、「支配」と「持分」の概念から先行文献について分類した。ここで、上記の先 行文献をフレッシュ・スタート法と関連ある情報の中で重要と考えられるものをピックア ップして、年代順にまとめている。

図表 2フレッシュ・スタート法の文献の概略31

年 名称 のれんの認識 会計処理

ARS5,10 1963,68 公正価値プーリング法 非計上 使い分け

APBO16(ED) 1970 新実体・相互パーチェス 言及なし 非採用

SECTION1580 1974 新実体法 言及なし 非採用

IAS22(ED) 1981 新実体法 言及なし 使い分け

G4+1のP・P 1998 フレッシュ・スタート法 計上 非採用

SFAS141 2001 フレッシュ・スタート法 言及なし 非採用

論点整理(日本) 2001 フレッシュ・スタート法 両者 非採用

IFRS3(ED2002) 2002 フレッシュ・スタート法 言及なし 非採用

このように、「取得」ではない、かつ持分プーリング法も適さないような新実体を認識す る会計処理は 40 年以上も議論の場に登場している32ものの主要国の会計基準に採用され ることはなかった。そして、その会計処理も資産と負債の公正価値による評価という点に ついては共通している。しかし、のれんをはじめとするそれ以外の会計処理については個 別に先行文献の中で検討されている部分もあるものの、検討の余地が残されたままとなっ ている。

「取得」に該当しない企業結合は、新実体を創設するような企業結合に該当するので、

フレッシュ・スタート法を適用するほうが妥当であるまたはその可能性を示唆する文献は 多い。しかし、「取得」のように経済的実態を明確に定義してかつ識別基準を明確にしてフ レッシュ・スタート法を定義している文献はなかったように思える33

企業結合の本質を「取得」と捉えることが、前提となる文献が非常に多い。確かに企業

31 会計処理とは、フレッシュ・スタート法を採用するか否か、また採用する場合に他の会計処 理と使い分けるか否かについて記載している。論点整理のように、直接の基準となっていない 文献もその意図もしくはその後の成果物としての基準の内容から判断している。

32 先行文献として取り上げなかった文献のなかにもフレッシュ・スタート法を想起させる記述 は存在する。例えばFASB(1976)では、APBO16を踏まえて、企業結合の結果として新しい会 計の基礎を結合当事企業に認識するか否かで分類して考察している。第3の案は、全ての企業 に新しい会計の基礎を認識するもので、歴史的原価の意味から否定的であり、直接にフレッシ ュ・スタート法とは述べていないものの新しい会計測定を開始する新実体を認識している (para.69,73)。

33 もちろん取り扱った先行文献が、研究書、公開草案、ポジション・ペーパーの位置づけであ ったため具体的な識別基準を明示していない可能性もある。

結合の大半は企業間の交換取引であると考えられてきたことも事実である。パーチェス法、

持分プーリング法、公正価値プーリング法の各会計処理方法を適用する以前の経済的実態 である「取得」、「持分の結合」、新実体が創設されるような取引などを説明する際に「支配」、

「持分」と多用された概念と用語を明確にして説明がなされているかといえば必ずしもそ うではない。

次章以降では、先行文献に散見されたという事実からも明らかであるような企業結合に おいても重要な概念であると推察される「支配」と「持分」の概念について、整理する。

そのことで先行文献においては、つながりの見えにくかった概念から導出される経済的実 態について明らかにして、フレッシュ・スタート法の適用できる余地を探る。