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ニュー・ベイシス会計からフレッシュ・スタート法を適用する見解の課題

4. ニュー・ベイシス会計

4.3. ニュー・ベイシス会計からフレッシュ・スタート法を適用する見解の課題

公正価値で評価した方が望ましい人々が存在して、かつ第三者が客観的な見積りが行わ れていることという前提に従うと、ニュー・ベイシス会計と整合した企業結合会計におけ るフレッシュ・スタート法が考えられるだろう。ニュー・ベイシスは公正価値で評価した 方が役に立つ場面があるから、公正価値で評価しなおす会計処理にフレッシュ・スタート もしくはステップ・アップを採用するにすぎないのである。

となっていないのである。つまりニュー・ベイシス会計は、支配の変更が起こる事象を特 定事象として、その場合にフレッシュ・スタート法(orステップ・アップ法)を適用する。

ニュー・ベイシス会計の側面を企業結合会計に取り入れるのであれば、おそらく企業結 合取引が第三者による評価の対象となる取引であり、客観的な測定があるという事実が重 要視される。その観点においては、企業結合に取得企業が存在するかしないかは、企業結 合取引の会計処理方法を考える上で問題とならない。

よって、このような場合には、フレッシュ・スタート法をすべての企業結合に適用する 見解に一定の合理性があると考えられる。ただし、このような見解は、従来の企業結合で 重視してきた概念を切り離した全く新しい考え方のもとで、企業結合取引を考えることと なる。具体的には、本論文の第 3章で扱った持分と支配の概念を重視して企業結合の経済 的実態を分類する見解や企業結合の大半を「取得」とする従来の見解と一致しないと考え となるので問題がある。

第 4 章では、「実質的な変更」をキーワードとしている。企業結合のフレッシュ・スタ ート法とニュー・ベイシス会計のフレッシュ・スタートは、新実体が創設され新しい会計 の基礎が認識されるような変更が事業体に生じているために全ての資産・負債を公正価値 で再評価するという点が共通である。そして、ニュー・ベイシス会計の事例は、企業結合 会計の「実質的な変更」のように、持分の大幅な変更や支配の喪失という概念から導かれ る将来収益力の変化やリストラクチャリングという曖昧な定義と比較すれば、具体的な事 例が多い。よって、ニュー・ベイシス会計の事例を検討することで企業結合会計の「実質 的な変更」をより明確に定義付けることが出来ると考えた。

しかし、ニュー・ベイシス会計の特定事象が従来の会計の枠を超えているケースが多い。

思うに、ニュー・ベイシス会計に重視されることは「実質的な変更」があることだけでは なく、第三者による客観的な測定が存在することも同様に重要である。そのため、企業結 合の「実質的な変更」の定義にニュー・ベイシス会計を活用すると、一部は整合する。と ころが、ニュー・ベイシス会計で主に第三者による客観的な測定が重視されている場合に は、第3章で従来の概念から導出した経済的実態が有しているとされる「実質的な変更」

と整合しないことがある。

このような場合には、具体的には第三者による客観的な測定が重視されている場合に、

従来の会計の基本概念をどのように解釈すれば、従来の枠を超えた会計処理が可能である

かを明らかにしなければ「実質的な変更」の定義としてニュー・ベイシス会計を適用する ことはできない。その検討は、企業結合以外のより一般的な議論に依存するために企業結 合会計の議論のみで「ニュー・ベイシス会計」について結論づけることは難しいのである。

この考え方を導入するには、他の会計基準を含んだ議論が必要となるだろう。

5.フレッシュ・スタート法の会計処理 

  前章までの記述で、先行文献におけるフレッシュ・スタート法の取り扱い、企業結合会 計におけるフレッシュ・スタート法の論拠、類似する会計処理の論拠とその問題点が明ら かになった。企業結合におけるフレッシュ・スタートの会計処理をする前提は、2 つの考 えがあると推察される。 

第一に、第3章で記述したような、持分または支配の概念から導出される特定の状況に 適用する会計処理である。それは、いずれの企業も資産の支配を単独で取得したとは言え ないため支配が継続していない場合、いずれの株主のリスクも大幅に変更していて、持分 が継続していない場合に該当する。 

第二に、第 4章で記述したニュー・ベイシス会計は、第三者による企業価値評価の行わ れるかつ重要な特定事象にフレッシュ・スタートを認める取引である。本論文でいえば、

企業結合会計は、第三者による企業価値評価の行われる重要な取引であるため、フレッシ ュ・スタートを認めると考える。このような第三者の測定に一定の信頼性があるとする場 合に、株主の投資の回収計算の考えから乖離または、企業の資産の経済的便益の使用また は処分の観点も重要視されない。ここでは、企業結合会計の影響が重大であり、企業結合 取引において、第三者による企業価値評価が行われるであろうことに着目して、その見積 もりを開示することに一定の意味を見出す観点から、フレッシュ・スタートの会計処理が 行われると推察できるのである。 

このようにフレッシュ・スタートの会計処理を行うとした場合に、2つの考えは大きく 異なる。しかし、既存の会計測定の意味が希薄化するために、資産・負債の公正価値評価 自体は共通の認識である。また、新しい事業体がスタートすると考えることも同一である。 

第5章では、視点を変えて、この共通の認識に加えて企業結合会計におけるフレッシュ・

スタート法で明らかにすべき会計処理上の問題について取り扱う。フレッシュ・スタート 方における公正価値プーリングと相互パーチェスの問題と付随するのれん、利益剰余金な どについて具体的に明らかにする。