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第2節  小学校社会科第6学年単元「世界の中の日本」授業モデルの開

       発

 実地研究における単元学習の流れについては第I章第1節で考察をしている。これを踏ま えると,実地研究で授業実践を行った単元め指導計画よりも,教科書による単元計画のほう がより学習者にとって学びやすいことが予想できる。学習者の視点の推移はもっとも身近な 事象に目を向けさ一せてから課題をとらえさせていくことにし,そこから徐々にマクロの視点 に推移させていく単元の指導計画のほうが,学習者にとってはより学びやすい理想的な学習 計画であると考える。

 これは,第■章第1節の冒頭の図によって示したように,小学校社会科の学習範囲の広が り方は身近な地域から市や県,国,世界へと演線的に広がっていくことを考慮して,学習者 の視点の推移も身近なものや身近なことから,日本の生活や文化と世界の国々のそれとのっ ながり方を検討するように向かわせ,その後世界各国が協力して取り組んでいる活動や組織 について調べさせ,最終的に世界全体のつながり方を概観し,国際社会としてどのように取

り組んでいくべきかを考えさせる順番で単元を構成すべきであると考える。

 一方,単元の導入において世界全体を概観させれば,帰納的に世界の関係を捉えていくこ とになる。単元の導入で世界全体を概観した時に学習者が持ちえた表面的,抽象的な認識が 単元の終末においてより本質的な知識や認識に迫り,具体的な認識となったか確認をする学 習活動を設定するほうが,単純に演繹的に学習活動を展開させるよりも効果が高いと考えら れる。導入の段階で単元の終末における到達イメージを学習者に持たせることで,学習者は

目標を明確に持ち,学習意欲を高められるはずである。

 これまで述べてきたことから100人材が世界全体を概観させるのに適していることから,

単元の導入において扱うことで学習効果を高めることができるといえるだろう。導入で扱う ことで,役割カードにより取得した疑似体験から世界各国の生活や文化に対する興味・関心 を高め,また世界各国が協力しあい,支えあう関係であることにも思考が及ぶことになる。

もし逆に100人材を単元の終末で活用すると,それまでに学習してきた国同士の関係や国際 機関の働き,世界の中における日本の役割などで得られた情報や知識と,100人付で得た情 報との関係性を新たに構築しなおし,学習した内容を一から見直すことになる。そうすると 単元の終末キレては,事象間の関係性を捉える観点の吟味や情報間のつながり方の検討を加 えるために相当の時間数が必要となってくる。もちろん学習活動としては非常に活発なもの となり,学習者は様々な観点から検討を加えるため多面的に捉える力を十分に養うことにな る。しかし,現実問題として小学校第6学年の3学期においては,時間割の通りの時間数の 確保すら難しい状況なのである。実際的な立場になれば,100人材を単元の導入において活 用することが望ましいといえる。

 こうした理由から本単元の構成としては,まず「100人材」の教材を活用して世界の現状 を概観させ,その中から興味を持った国の文化や生活などを中心に調べて日本とのつながり 方をとらえ,日本が世界各国に果たす役割から,国連やユネスコなどの世界平和に向けた組 織の働きなどを考えていくほうが自然である。

 まず視野を「世界」という広範囲に広げさせ,抽象性の高い統計データでもって世界を概 観させる。そしてこのマクロな視点で持って国際社会を捉えようとすることが本単元の目標

であることを学習者に捉えさせるのである。100人材の学習活動を通じて興味を持った国や 地域の生活や文化に?いて調べ学習をさせるという具体性を持たせることで,子どもの学習 に対する動機は高まると考えられる、

 このような考え方から,実地研究における単元の指導計画指導案に次のような修正を加え ることにした。第一に,100人材を活用する本時案は小単元「世界の平和と日本の役割」の 導入ではなく,単元「世界の中の日本」の導入として取り扱うことにする。これは,本時案 で与えたデータが,子ども白身が調べていく国の人々の生活のどういった部分からわかるの かを調べさせ,強い意欲を持って調べ学習に取り組ませるという意図がある。

 第二に,まとめの単元において,再度100人材で扱ったデータや図表を示し,国同士がど のようなつながり方をしているのか,どのような取り組みが必要なのかなど,詳しく調べて

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わかったことや未解決の疑問などを学習者1司土で整理する時間を設定する。これは単元の導 入で持ちえた到達イメージにどこまで近づくことができたのかを,学習者自身が振り返る時 間であり,認識の変容を実感させる活動場面であ亭。

 第三に,100人村を活用した本時案では本時のめあてを「世界の貧困問題を知り,解決策 を考えよう」として,学習活動では地域ごとの面積,二酸化炭素排出量は取り扱わず,地域 ごとに分かれてその地域の生活背景を考えるための,富の分配と食料問題の二二点に絞ってい る。世界の経済格差や食料問題,援助について考えさせる活動を主要なねらいにしている。

また,学習者が自ら疑問を持ち,予想を立てる学習活動となるように,学習活動の展開に変 更を加えている。

 以上の三点の修正を加えた単元指導計画が次の表6「本研究で開発した指導計画」である。

       表10本研究で開発した指導計画

単元名 時数 内容

導入 世界の現状を知ろ 世界の貧困問題や多様性を地域別にとらえ,国際杜

1

う。※本時 会のあり方を考える。

展開 小単元「日本と関係 世界各国の文化や生活の多様性を知る。

5

の深い国々」 日本とそれぞれの国とのつながり方を捉える。

小単元「世界の平和 1ヨ本の国際交流や国際協力について知る。

4

と日本の役割」 国際機関の目的と活動内容を考える。

まと 国際社会のあり方 単元全体の学びを整理し,国際社会のあり方を再考 2

を考えよう。 する。

この単元の指導計画における学習者の視点の推移は,次の図6「本研究で開発した単元指導 計画における学習者の視点の推移」で示している。本研究で開発した単元計画における学習 者の視点の推移は,教科書に沿った指導計画における学習者の視点の推移とほぼ同じである が,単元の終末における視点は世界全体にとどめることにしている。これは,第1工章におい て述べたように,本単元の学習目標で最も重視すべきことは,国際社会の捉える視点を鍛え ることである。単元の終末において学習者が実際に行動できることは何かを話しあい,募金 活動やグリーンラベルの収集など行うことで,社会とのつながりを具現化することになる。

確かにこの活動を行えば,知識と体験を結びつけることができるかもしれない。しかし,実 社会においては,たった一人の行動が世界平和に結びつき,簡単に社会に変化を起こすこと ができるものではないのである。現実に起きている森林伐採による環境問題や戦争被害によ る難民問題,エネルギー間題など,様々な地球規模で取り組むべき問題は,互いに複雑に絡 み合っており,たった一人の人間が解決策を見出すことは非常に困難なことなのである。そ れでも公正な社会を目指すには,国や国際社会がどうあるべきなのか,どう取り組むべきか

を十分に考えることで,より高度な社会認識力が育まれると考えられる。同時に,中学校以 降の専門的な知識や技能を修得する意欲にもつながっていくと考える。

導入 展開 まとめ

(1時間) (9時間) (2時間)

国什 卜⑤

全 界

国⇔

身近な海外のものやこと

単元を通じて学んできたことを整理し,国際社会として どう取り組むべきかを考える。

二=‡ 矢印は学習者の視野の広がりを表している。

     図6本研究で開発した単元指導計画における学習者の視点の推移

 最後に小学校社会科第6学年「世界の中の日本」において,開発教育の教材「新・ワーク ショップ版世界がもし100人の村だったら」を活用した授業モデルの提案を行い,考察を加 えて,本研究の締めくくりとする。授業モデルの本時案は本章の末尾に資料2「本研究にお いて開発した授業モデル」として示している。

  開発した授業モデルにおいて検討できていない点として,例えば100人材の学習活動を 各時間にバラバラに配置して活用する場合や,導入の学習時間数を2時間続きで設定するな

ど,単元のどの場面でどういった開発教育の学習活動を活用していくのが妥当であるのか検 討しつくしていない。また,本研究においては本時のみの授業モデルの提示にとどまってお一

り,単元の全時間の授業モデルを開発していくことが望ましいことは当然のことである。そ うして,単元全体としての学習活動の一貫性や学習効果について実践を通じて修正を加えて いくことが今後必要なことである。

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